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2014年2月10日 (月)

I Remember Gary~ゲイリー・ムーアのこと

今日のタイトル…「思い出」ったって別にGary Mooreとサシでイッパイやったワケでもなければ、親しく話したワケでもない。エラそうにすんません。

ただ、ここのところ命日(2月6日)だったり、フィギュア・スケートで「Parisienne Walkways」が使われたりで、ファンの間で盛り上がっていたようなので、マーブロも一枚噛ませていただこうという趣向だ。
まったく大した話題ではない上に既出の話しが主で恐縮だが、これをいい機会ととらえ、片鱗とはいえ、Marshallとして偉大なプレイヤーのことを記録し、後世のファンに「伝承」しておこうと思い立ったのだ。

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そもそもGary Mooreの名前が一般的になったのはいつの頃だろう。
私が彼の名を知ったのはこのColossum IIの『War Dance』がリリースされた時だった。1977年の作品だから日本で発売されたのは1978年になるのかな?
当時はまだ「ギャリー・ムーア」と表記されていた。しばらくすると表記が「ギャリー」じゃなくて「ゲイリー」になった。「ま、ゲイリーが正しいんだろうな…」と思った。

ところが、はるか時間が経ってマーシャルの連中と付き合うようになって知ったのは、イギリス人はGaryを「ゲイリー」ではなくて「ギャリー」、イヤ どちらかというと「ギヤリー」と発音するということだった
。Mooreは「ムーア」ではなくて「モーァ」。ほとんど「ア」は発音しない。もう少し正確にカタカナ表記をするならば、「ムォーア」と発音する。

ここで脱線。
マーブロで時々書いているけど、日本の英語教育はものすごい英米チャンポンか、アメリカ寄りなんだよね。
2、3日前にもテレビのクイズ・バラエティで、「英語でトイレのことを『toilet』とはいいません。『toilet』とは便器のことです」…とかやっていた。
アノね、イギリス人はゼンゼン言いますよ、トイレのことを「toilet」って。テレビの中での正解は「bath room」となっていた。
私も最初イギリスへ行ってトイレのありかを尋ねる時に「bath room」という言葉を使っていた。もちろんこれでバッチリ通じる。でも最近では何となくそれが恥ずかしくなってしまい、「toilet」という言葉を使うようにしている。「郷に入れば郷にしたがう」し、元々英語はイギリスの言葉だからね。
番組でも「アメリカでは…」と断りを入れてくれればいいのにね。

さて、Gary。このレコードでスッカリ好きになってしまった私はもっと他のプレイも聴きたくなってSkid Rowのレコードを探したが、当時は手に入らなかった。
その後、『Back on the Street』で狂喜。1979年にThin Lizzyに加入していとうれし。『Black Rose』はよー聴いた。
でもここで終わり。その後、ブルース系になるまでは、正直まったく聴かなかったな~。
でも好きなギタリストだった。

Cdそして2010年。21年ぶりにGaryが来日した。
これがその時のステージのもよう。会場は水道橋の(当時)JCBホール。
ベースのPete Reesという人もMarshallで、ご覧のようにVBA400とVBC810のスタックを2台使っていた。

10これがゲイリーのマーシャル(下の写真。正真正銘、市販の普通の1959SLPだ。言い換えれば楽器店で普通に手に入る1959SLPと同じ。改造も何もしていない。
ただし、電圧はイギリスと同じ230Vで使用している。

この時、ギターテクのGrahamが私に訊いてきた。「シゲ、ナゴ~ヤってところの電気の周波数は50Hzかい?それとも60Hz?」
「日本は西のエリアは60Hzなんだ。名古屋も60Hzだよ。」
するとGrahamはこう答えた。
「やっぱりね。すぐにわかった。ココ(東京)と音がゼンゼン違うんだよ!」
「どっちがいいの?」
「ここさ!50Hzじゃないとダメなんだ」
と教えてくれた。

先日blurのところでも登場したJeff Beckのギター・テクのSteveは昔、「60Hzで使用すると倍音が乏しくなる」と言っていた。
が、ゲイリーのギターテクの表現では「低域 (less bassy)が薄くなる」ということだった。

そして、キャビネットは、見た目は1960BXだが、スピーカーはVintage30 に交換されている。言い換えれば1960BXのビンテージルックス・バージョン。

20インプットはとにかく左上のトレブル・ブースト・チャンネルだけ。男だ!
セッティングは PRESENCEが2、MIDDLEが8程度、それ以外はLOUDNESS 1も含めてすべて 9あたり。
1959弾きのベテラン・ギタリストの方々ならおわかりでしょうが、普通はとてもこんなセッティングじゃ弾けないよね?

実はこの時、Garyが持ってきた1959SLPの調子が悪くなってしまい、修理をしたのだ。
修理後、JCBホールに戻しに行く前に、直っているかどうかを当然チェックした。せっかくなので実際のGaryのセッティングを自分のレス・ポールで鳴らしてみた。
ま、Garyと同じ音が出ると思うほど自惚れちゃござんせんが、死んだわ、耳。
狭い場所で弾いたせいもあったが、同じ音が出るどころか暴れまくっちゃってまったく弾けなかった!どこをどう弾いても瞬時にしてフィードバックよ!

もうコ レぐらいの音量になると、出す音と同じくらい消してる音に気を遣わねばならないという感じ。「ギターの技術はミュートにあり」を実感したのであった…。
コレね、イギリスでやるともうとても弾けないよ。電圧が高い分、高域が張りだして来てよほどのテクニックがない限りムリ。少なくとも私なんぞは恥ずかしくて弾けん!

Img_0256b 足元のようす。予想以上にリバーブが深めにかけられていた。アレ、ショートディレイもかかっていたのかな?
使用していたのは現行の1959SLPなのでセンド&リターンが搭載されているが、エフェクターはギターとアンプの間につないでいた。古式ゆかしい使い方。

30この日のセットリスト。翌日の国際フォーラムも同じだった。1時間半のステージ。

40使用していたピックは市販のティアドロップ型のエキストラ・ヘビィという厚めのものだった。
Grahamに色々と見せてもらったが、「あんなんもあった、こんなんもあっ た」と案外ピックには神経質ではないようだった。
某メーカーのものが気に入っているのだが、柔らかいつくりになってしまったので現在使用中のエキストラ・ へビィのものに換えたとか…。
市販のピックじゃしょうがないので、Grahamにお願いして2007年のツアー時のピックを頂戴した。

50右手を見てると、ロングトーンで1弦をヒットする時なんか、ピッキングはアップばっかりだった。
そして、あのビブラート。チリメンじゃなくて振幅の大きなビブラート。好きだな~。

とにかく硬くて厚いピックがお好み。
弦はメインが0.10~0.52のセット。もっとプレーンに太いゲージを使っている先入観があったけど、そうでもなかったね。反対にボトムがへヴィだった。曲によっては0.09のセットも使用していたということだ。

60そ のGary、まぁ~音デカかったな。
下の写真を見て欲しい。少しマーシャルが下手側に振ってあるのがわかるだろうか?
JCBホールではミキ サー卓が真ん中じゃなくて少々上手側にセットされていた。これはGaryのギターの音が卓を直撃しないようにという配慮なのだ。
したがって下手の前の方のお客さんはもう完全に「マーシャル浴」だった。
ギターの音が大きいとよく「ギターの音しか聴こえない!」と大ゲサなことえを言うが、この時は本当にそうだった。
職権を濫用し、数曲でGary真ん前でMarshall音を聴いてみたけど、ウソ偽りなくドラムや 他の楽器の音が全く聴こえなかった。
耳から入った爆音が頭蓋骨を揺さぶって脳味噌を共振させてしまうのか、弾いている音以外の音が聴こえて来ちゃうんだから!
とにかくデカかった!ド ラムがアテぶりに見えたもんね。こんなにデカイ音、武道館で観たテッド・ニュージェント以来か?!(今にして思うとアレも大したことなかったのかもしれない)
でも、いい音だったナァ。
また、ギターのボリュームを絞った時のクリーン~クランチがたまらなくいいんだ~。
そして、ボリュームをアップしてのロング・トーン!ホント、Marshallの素晴らしさをトコトン教えてもらったような気になった。
Img_0269そしてそれから3カ月後、ロンドンでGaryを観た。
High Voltage というロックフェスティバルでGaryはブルースではなくハードロックを演っていた。
4月の来日時、「来年またハードロックのフォーマットで来日するかもしれない」という話しが漏れ聞こえていた。
このHigh Voltageの時は、それより少し先にGaryのハードロックを見せてもらった…ぐらいにしか考えていなかった。
この時もGrahamに会って「ヤア、ヤア」ということになり、「また東京で会えるかもしれないね!」なんて話していたのだが、この時は2人ともまさかあんなことになろうとは思っていなかった。
でも、これが私が見た最後のGaryの姿だった。

2011年2月6日、Robert William Gary Moore、スペインにて客死。

70さて、ここは生前のGaryが住んでいたイギリスはBrighton。
にぎやかなショッピングストリートを抜けたところにある楽器屋。
Garyは何か気になる楽器を見つけると、必ずここへ来て試したという。外壁に飾ってあるLes PaulはGary Mooreをイメージしているのかな?
(Brightonについては『名所めぐり』で後日取り上げる)

80そしてMarshallは、偉大なるMarshallプレイヤーにGaryに敬意と追悼の意を表し、このフルスタックを制作した。

90vプラークには「In fond memory of a dear friend GARY MOORE 1952 - 2011」と記されている。
Marshallは偉大なプレイヤーを失った。とりわけ、『50 YEARS OF LOUD LIVE』に出演できなかったことは今でも悔やまれる。
ウェンブリーのステージのGaryを思う存分撮りたかった…。

100「Gary Mooreの人気は本国と日本だけだ。アメリカじゃ誰も知らない」という話しを昔よく聴いた。ちょっと調べてみて驚いた。その話しが本当のようだったからだ。

本人名義のアルバムとしては『Still Got the Blues』が83位とトップ100に入っているだけで、他はすべて100位以下か圏外。
なんでアメリカ人にはウケなかったんだろう。アメリカ人にはこのギターのカッコよさがわからなかったんだろうな~。
ヨーロッパではやはり本国イギリスとスウェーデンで人気が高かったようだ。

そんな事とは関係なく、Garyのギターの音色は永遠に我々日本人の心に生き続けるであろう。
Still Got Gary!

120v

(機材写真:2010年4月28日 水道橋JCBホールにて撮影)