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2013年5月27日 (月)

フィル・ウェルズ・インタビュー~その3

モデル・ナンバーについて

S:今、モデル・ナンバーがたくさん出てきましたが、これらの番号の付け方を教えていただけますか? 当時、誰が番号を決めていたんですか? そして、どういう風に付けられたのでしょう?

P:一番最初、1962年頃はJTM45があり、その後、カタログ番号はローズ・モーリスによって付けられていました。 Pw_img_7778_2

S:ローズ・モーリスが?

P:はい。それからジムがアーティスト・ディストリビュートに関する契約を交わした後、モデル・ナンバーを考え出しました。それからカタログをまとめ始めました。私達には何ら関係ないところで彼らが勝手に始めたことなんです。
S:へぇ~。
P:特にJCM800は複雑です。シリーズが始まった時、出て来た時に順番で製品番号を付けました。それと4210みたいな番号は、4がコンボ、2は2チャンネル…みたいな。
…とか、2210は2が頭だからヘッド、2チャンネル、100W…。
(注:1981年にJCM800を発表した時にはローズ・モーリスはソール・エージェントではないため、JCM800のモデル・ナンバーはマーシャル自身によってつけられている。また、JCM800のモデル・ナンバーは1959と1960のように連番で無機的につけられたモデル[2203、2204や4210、4211、4212]と上のように桁に意味を持たせてロジカルにつけられたモデル・ナンバー[2205、2210]、さらにただヘッドのモデル・ナンバーをスライドさせているモノ[4103、4104(当然連番となる)]等が混在している。コンボはモデル・ナンバーから正体をロジカルに類推することは不可能)

S:(笑)

P:どうですか(笑)。そのうちみんな把握出来るようになりました。JCM900が出て来た時、4100…これは分かりやすいですね。4はリヴァーブを意味します。で、100Wの100。 4500はリヴァーブ搭載の50W。 2100はマスター・ボリュームのバージョンの100Wです。
例えば、4104なんていうモデルを作るのであれば(実在していない)リバーブ搭載で、100W、1×12”になります。4102はリバーブ搭載の100W、2×12”。

S:(笑)数字のクイズみたいですね。

P:はい。もちろん、DSLやTSLが出てからはそごくわかりやすくなりました。その頃には数字と一緒に記号を使えばいい事に気づきましたからね。番号だけの時よりもずっとハッキリしています。それでDSLがDual Super Lead、TSLはTriple Super Lead。JVMはJim Victoria Marshall。410はJVM 410。4チャンネルに100Wです。

S:では、1962なんて番号もローズ・モーリスが付けたのですか?

P:はい、そのあたりはすべてです。

S:えー? では1987や1959もですか?

P:はい。それでカタログを作りました。私達にはまったく関係ありませんでした。

S:では、「ユニットなんとか」も同じですか? Unit17、Unit 3…。

Pw_img_7805
P:はい。今は1959を100WとSuper Leadでくっつけていますが、数字を見ても何の事だか分からないものでした。かろうじて4100まできて何となく意味が分かる感じでした。でもハッキリしたものではありません。まあ、これを作った理由は間違えを防ぐためのもので、製品番号は何も意味していません。
BMWを例にすると、“318”というモデルがあったとします。するとこれは3シリーズだな、と分かる。そして、1800ccのエンジンが入っていると思うでしょう。でも、違う。3はシリーズではあるけど、エンジンは1900ccです。それで319にするとなんだか変なので、318にした…そういう感じで、私たち似たようなことをやっていました。誰かが思いついたんです。でも、DSLやTSLにした事で分かりやすくなりました。

S:しかし、型番を覚えているということはマニアの象徴でもあり、ロマンを持てることでもあります。

P:それはそうですね。
よくマーシャルのモデルを番号順にまとめたりしている人を見かけますが、それはまったく意味のないこと。シリーズで一緒にまとめておくことが大切なのです。
ためしに先頭の番号に戻ってみましょう。一番若い番号は1912です。でも2064なんていうモデルは1960年代の頃のものです。このように番号でならべてもただややこしくなるだけなんです。

1959の謎

S:ありがとうございます。実は個人的な質問があるのですが…。

P:どうぞ、構いませんよ。

S:ジミ・ヘンドリックスのシグネチュア・モデルなんですが…。

P:Super Leadですね。ハンドワイアードの。

S:Super 100。これは1959と呼んでいいのですか?

P:はい。

S:では、マスター・ヴォリュームなしの100モデルは1959という事ですか?

S:つまり、1959の定義は…。

P:入力が4つ。

S:そして100W?

P:はい。

S:一方、4インプットで50Wは…。

P:1987です。ですから、私達は番号のことなんか考えていませんでした。番号は全然意味がありません。これらが作られた時…ヘンドリックスのモデルですが…1つの回路基板しか使いませんでした。リードにもベースにも、PAにもオルガンにも、みんな全く同じ回路基板を使っていたのです。その上に乗せる部品が異なるだけでした。パワー段も同じ。フィードバックは要望によって少し異なりますが…。

S:コンデンサーや抵抗もそうですよね。

P:はい。

S:そして、JTM 45/100。これは初の100Wのマーシャルですが、これを1959と呼んでも良いのでしょうか?

P:はい。実際に1959と呼ばれていました。要するにそれが、1959が生まれた時なんです。パワー段は50Wのアウトプット・トランスがふたつ。メイン・トランスも実際には100Wでは80Wぐらいでした。それで、JTM 45/100が与えられたモデル名がでした。しかし、実際には最初の1959シリーズが作られた事になります。

S:なるほど。この型番には結構惑わされていました。歴史をこの目で見ていませんので、私なんかの感覚では、JTM45/100、Pw_img_7794
Super100等が1959とは異なる特別なカテゴリーに入るものだと思っていました。

P:JTM45/100は他と全く違う物だと言えます。これまでに作ったどの製品とも、またこれから先に作る製品とも異なる物です。理由はトランスが2つ付いているからなんですが、アルミ素材のシャーシを使った最後のモデルでもありました。アルミは強度があまり高くないことに気づいたんですね。
当時は100Wのアンプ用のアウトプット・トランスが簡単に手に入りませんでした。ですから、当時の技術を使ってトランスを作ったんです。つまり、2台のJTM45が同じ1つの箱の中に入っているモデルです。だからJTM45/100という名前がついたのです。

しかし、厳密に言えば最初に1959という型番が使われたモデルです。本当に厳密に言うなら、1965年、最初に100Wのアンプを製作した時…本物の100Wです…それ用のオリジナルのトランスを搭載しました。アウトプット用のトランスがひとつとメインのトランスがひとつです。それが初めて1959と呼ばれた時で、JTM45/100のことではありません。ですから、1964年の後半頃に最初のJTM45/100が出来て、1965年に最初の100Wモデルが出来て…。、両方とも1959と呼ばれています。誰に話しても、JTM45/100、それから1959、もしくは両方とも1959と呼ばれたりします。厳密には型番は1959です。リイシューした時にJTM45/100と呼んだのです。

S:やっと証明されました。ありがとうございます。

P:いえいえ。

S:さて、続けてもいいですか?

P:どうぞどうぞ。

この後、話題がガラリと変わるので、いつもより短いですが、キリのよいところで終了します。次回もお楽しみに!

つづく

(一部敬称略 2012年9月 英Marshall社にて撮影・収録 ※協力:ヤングギター編集部、平井毅さん&蔵重重友紀さん)