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2013年4月28日 (日)

かぎって書く~ズンコの魅力

Shige Blog 2012年4月24日初出

今日は変なタイトルでしょ?何となくつけてみた。

ところで、来月から開業だというのにこんな調子で間に合うのだろうか…?

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…なワケないね。すっかりスカイ・ツリーも景色に溶け込んじゃってる。これは浅草吾妻橋からのながめ。スカイ・ツリーのおかけで浅草もにぎわいを取り戻している…

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というのも昼間だけの話でね…。夜はこんなよ。戦前はこのあたりが東洋一にぎやかだったんだゼ~、ワイルドだゼ~。今はスッカスカだゼ~。

この雷門を背にして、浅草通りに向かって20mほども行くと右側のビルに「ZINC Asakusa」というジャズのライブ・ハウスがある。今日はそこからのレポート。

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出演はズンコ。

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2007年結成の女性ボーカルとギターのデュオ・チームだ。

男女のボーカル&ギターのコンビと言うとダレ?タック&パティ?エラ&ジョー?結構、デパートとか地下街のイベントでお見かけするような気もする。でもそういうのはほとんどがジャズのデュオだよね?でもこのズンコはチト違うんだナァ~!
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メンバーはボーカルのずんこ。
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ギターのもだん・ぎたー。「もだん」がファースト・ネームで「ぎたー」がファミリー・ネームですな。日本の方で、もちろん本名ではありません。

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そしてこれが彼女たちの最近作『いたって走る』。変でしょう?「いたって走る」んだって!じつはこのバンドはギタリストの三宅庸介さんに教えてもらったのね。

「シゲさんならコレ絶対気に入りますよ!ジャズお好きだから…」とCDを預かったのです。ま、三宅さんの勧める音楽なら間違いないと思ってさっそく聴いてみた。

ナンジャコリャ~ッ?なのだ!ナンカ今までにない感覚ではあるんだけど、ヤケに親しみやすいような、そうでないような、カッコいいような悪いような、きれいなような汚いような、でもつかみどころはシッカリしていて、「なるほどコリャ気に入るわ、さすが三宅さん!」ってなことになった。気に入りゃ見たくなる。で、見た!

曲のタイトルもアルバム表題の「いたって走る」、「なるようになるな」、「だれかはだれか」、「まねきねこ」等々、言葉遊びに似たような…。

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「一体全体、どんな人がこんな音楽を演っているんだろう?」 CDにはメンバーの写真もないし、わからないことはすぐウェブ・サイトという世代でもない。「ガリッガリに痩せてて、超神経質なマッド・サイエンティスト風の人がギター弾いてんだろうな~」ということに自分の中ではしておいた。

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そしたらア~タ、実際のもだん・ぎたーさんは、くじら料理店のマスターみたいな人で、手はドラえもんみたいだし、おっそろしく礼儀正しいし…いたって普通の方だったのですよ!

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しかし、音楽や楽器へのこだわりは尋常ではござらん!ギブソンL7を2204につないで独特のサウンドで独特の音楽を展開するワケだ。

2204は2203の50Wバージョンね。1975年に「Master Model」として発表された。みんな2203とか2204はJCM800の中のモデル名だと思っているかもしれないが、800シリーズの前から存在していたのね。そして、1981年、Rose Morrisとの販売契約が満了するのを待って。JCM800シリーズのラインナップのひとつとして華々しく再デビューさせたんですな。ちなみに「JCM800」というのは故ジム・マーシャルも愛車のナンバーから付けられたんだよ。

もだん・ぎたーが愛用する2204はそのJCM800に変わる前のもの。いわゆるJMP(Jim Marshall Product)の2204なの。だからルックスも1959みたいにコントロールパネルが真ん中なのです。

反対にJCM800時代になっても生産を続けていた1959は4インプットながらJCM800のデザインに引っ張られてワイド・フロント・パネルになった。

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マスター・モデルといっても、もだんは(もだん、もだんって言ってるとお好み焼きみたいだ)これを歪ませて使っているワケではなく、フラット・ワウンド弦を張ったL7を力いっぱいストラミングするというスタイル。ヘタに歪ませるよりよっぽどスゴイ音がする。なんというか、ゴロゴロ、ゴロゴロと夕暮れのゲリラ豪雨の時の雷のようだ!
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一方、ずんこは高域がとても美しいクリスタル・ヴォイス。それをもだんのギターにからめてドッシリと歌う。これが独特のオリジナル曲にマッチして絶妙な味わいを醸し出す。それがズンコなのだ。

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レパートリーは、もだん曰く「ケッタイな曲」が中心。ケッタイな曲とはオリジナルの曲。

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ま、確かにケッタイである。まだロックを聴き始めの子供の頃にズンコ聴いてたら夜うなされていたかもしれないな。

ところが替えがきかない妙な味わいがあって、ドンドン次の曲が聴きたくなってくる。1曲の尺も短くて「エ、それで終わりでいいの?」みたいにあっさりしている。何とも不思議!

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元々はメタル好きのもだん。ジャズ・ギターにハマってからはその道をまっしぐら!ビッグ・バンドのギターを演っていたそうだ。

もだんはズンコのことを「世界一おとなしいメタル・バンド」と呼ぶ…ん~、メタルねェ。

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だから、コレは「ロッケンロー!」と叫んでいるの図。ちょっと恥ずかしそうだ…。

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気持ちはわかるが、メタルでは片づけられない特殊な立ち位置にいることはこの表情を見てもわかるだろう。

また、スーツがいいね!演奏が引き締まるよ。真夏の屋外のジャズ・フェスティバルで、ルー・ドナルドソンのバンドのある日本人が「Tシャツで演奏しよう」と提案したら、ルーは「イヤ、暑いがネクタイを締めて演奏しよう。その方が演奏が引き締まる」と言われ、本当のアーティスト魂を見たようだと記してあるのを何かで読んだことがある。もだんもその域に達しているのだ!

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ケッタイな曲ばかりではなくて、女性ボーカル+ギターといえば…そうボサノヴァ。曲はジョビンの「おいしい水」。「あがじゅべべ~」ね。ずんこの透き通った声が実にやたらメッタラこの曲にマッチする。

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他にもアルバム『いたって走る』に収録されているガガさまの「Pokerface」も!これもとってもよかったな~。高音部がいいのよ。

さて、ようやくやって来たぜ!前からどうしても書きたかったんだけど、マーブロ止めて書く場所がなくてサ。いきます。ガガさまの衣装というか格好のことなんだけど、みんな「奇抜」とか「斬新」とかいうじゃない?アレって、ピーター・ガブリエルのお下がりなんじゃないの?40年ぐらい前に使ってたヤツ。見てすぐにそう思ったんだけどな~。新しくもなんともないよ!テレビで誰かいえばいいのにな~。もっと勉強してもらいたいね。今、人類のエンターテインメントに必要なのは温故知新だと思ってるから。エ、大したことじゃないって?イヤ、アタシャがまんできん!

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そして、個人的にうれしかったのはカウント・ベイシー・オーケストラの十八番、「Shiny Stockings」。フランク・フォスターですな。もだんのスウィンギーな四つ切りがゴキゲン!スキャットまで披露してくれた。

この曲、チョー好きなバージョンがあって、それは1972年のサンタ・モニカ・シビック・オーディトリアムのライブ『Jazz at the Santa Monia』のエラ・フィッツジェラルドとカウント・ベイシーがいっしょに演ってるヤツ。もう何十回聴いてもサブイボ出る。歌はもちろんだけど、エラのスキャットと「ア~、カウント・ベイシー」と名前を呼ぶところがタマラン!このライブでのエラのカッコよさはオールスター・ジャムのところでも爆発していて、ソリストの名前を呼ぶところがあまりにもステキ!「スタン・ゲッツ」だの「ハリー・エディソン」だの「ボン、ボン、アル・グレイ」だの…ああ、また聴きたくなって来たけどCD持ってない!LPだ~!

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ズンコの魅力はまだある。それはもだんのMC。もう存在だけでも笑いが取れそうなのに、コッテコテの関西弁で引っかき回されてはかなわない。別に面白いことをそう言うわけではないのだが、最高におもしろい!

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感情の込めにくいタイプの曲の連続にも見受けられるが、ずんこの熱唱ぶりはやはり最大のみどころだった。

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この人、瞳が澄んでいてとても美しく、その声とあいまってズンコの魅力を際立たせてくれる。となりのおじちゃんがああいう感じだからなおさらだ!

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テレビをつければAKB、オネエに子役に韓流…もう飽き飽き!なんかもうちょっと本当にしっかりしたエンタテインメントに接してみたいナァ…なんて方にはきっといい刺激になるのではなかろうか、ズンコ。おすすめです。

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ズンコの詳しい情報はコチラ⇒ズンコのホームページ

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普段は大阪を中心に活動しているが東京にも時折きて演奏しているので東京の方々、是非お見逃しなきよう!
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KRUBERABLINKAの和重さんからのプレゼントのピックケースとともにパチリ!

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この日、遊びに来てくれた三宅庸介さん。もだんのL7を手に取りス~ラスラ。昨日のKRUBERABLINKAもそうなのだが、ジムの悲報といい、ズンコといい、シゲブロはスタート以来三宅さんにお世話になりっぱなしなのだ!

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そして浅草の夜は更けていくのであった…しかし人いね~!あのねここは戦前は東洋一にぎやかな…もういいか!浅草もがんばれ!

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(一部敬称略 2012年1月14日 ZINC Asakusaにて撮影)