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2013年2月26日 (火)

祝!復活Republic Saxophone

Republic Saxophoneは森園勝敏のバンドで、ほぼ1年ほど活動を休止していた。理由は森さんの健康。

その森さんが見事復活を果たし、Republic Saxophoneの活動を昨年末に再開させた。祝!

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復活の場は森さんのホームでもある西荻窪のTerra。くつろいだ雰囲気の中で最高の演奏が繰り広げられた。

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森園勝敏

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ベースは大西真

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キーボードは石井為人。

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ドラムはおなじみ岡井大二。

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オープニングは「Susie Q」。

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Freddie Kingの「Tore Down」。

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さらにJ.J. Caleの「Crazy Mama」。何たる渋さ、何たる安定感!

それに森さんの選曲は実に勉強になるわ。Fredie KingやらJ.J. Caleなんて自分では絶対聴かんもんね。

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…といってもそれらはただの形式というか、単なる材料にすぎなくて、聴いている音楽は「森園勝敏の音楽」なのだ。

続いて「After Midnight」。これはクラプトンのカバーで有名にあったが、これも元はJ.J. Caleの曲。

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そして、ジャズ・ギタリストの関雅樹が加わる。関ちゃんはちょっと前にもマーブロに出てもらった

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曲はCharles Mingusの「Good Bye Pork Pie Hat」。ロック・ファンにはJeff Beckの「Wired」ですっかり有名になったが、もともとはミンガスの代表作…のひとつ。ミンガスは名曲が多いからね。ミンガスのことはこないだ「Guitar★Man」の時にちょっと書いたね。

この曲はミンガスがテナー・サックスの巨人、Lester Youngにささげた曲。レスターはポーク・パイ・ハットがお気に入りだった。初めてレコーディングしたのは1959年3月のことで、そのわずか2か月後にレスターが急逝し、多くのジャズメンがこの曲をカバーした。ロックでは先に書いた通りベックのバージョンに人気が集まるが、1966年にはPentangleもカバーしている。John McLaughlinのアコギ・バージョンもJoni Mitchellの歌バージョンも素晴らしくカッコいいが、私はナント言ってもRhasaan Roland Kirkの『The Return of the 5000 Lb. Man』が一番好き。このアルバム自体が大の愛聴盤なのね。

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森さんのはベック・バージョンだ。

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森さんがタメタメで音数少なくジックリ弾いているかと思うと関ちゃんがジェット戦闘機のように鋭く切り込んでくる。このコントラストがこの師弟の面白いところだ。

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ここで何しろスゴかったのは為人さん。 実はこの写真は「Pork Pie Hat」の時に撮ったものではない。あまりにもカッコいいソロをジックリ聴きたくてシャッターを切るのがイヤだったのだ。なんてウィントン・ケリーみたいなことを言っとりますが…でもホントこういうプレイに出会うとシアワセ~!

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為人さんはバークリー出身のジャズメン。ザ・プラターズのメンバーとして全米を回ったり、レイ・チャールズと共演した経験を持つキーボードの達人だ。もちろんこの曲以外でも最高のプレイを聴かせてくれた。

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ジェフ・ベックの「Behind the Veil」。『Guitar Shop』収録のあのレゲエのパターンのヤツだ。惚れてまうやろ!森さんは存外にこのアルバムに収録されている曲をよく演奏する。

一部最後はデヴィッド・フォスター、ダニー・コーチマー、ジム・ケルトナーらが在籍したLAのバン、Attitudesの「Promise me Moon」。森さんはこの曲を1979年のアルバム『Cool Alley』で取り上げている。ちなみにこのアルバムのドラマーはジム・ケルトナーだ。

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森さんを支える4人の演奏も素晴らしいのひとことに尽きる。

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安定感に優れているばかりでなく、ベテランの滋味がいいように出ているのだ。

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そして、ダラダラとインプロヴィゼーションで時間をつぶすなどということは絶対にしない。良質なシングル盤を次から次へと聴いているようで実に楽しい。

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やっぱりこういう立派な演奏を多くの人に見てもらいたいものだ。

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ここで休憩。

これは森さんの足元。

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このおもちゃ箱をひっくり返したようなヤツは関ちゃんの。アンプは2187。森さんもマーシャルだ。

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さて、2部がスタート。

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2部では大西さんに代わって日本のタル・ウィルケンフェルド、大関明子が登場。

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曲はやはりベックの「The Pump」。

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2曲目はこれまたたくさんの人が取り上げているThe Metersの「Cissy Strut」。 へヴィな大二さんのドラムが気持ちいい!

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続いては「Mercy, Mercy, Mercy」。スイス人Joe Zawinul作。

アキちゃんはいつも通り大ベテランに混ざっての好演。

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彼女のベースはメチャクチャ重い。奇を衒ったプレイがまったくない分、限りない確実性がバンドに安定を与える。

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ここでゲスト。

きもちのいい夕方に

ボタンの穴から

のぞいたらくしゃみなんて出そうになって

アァ、空がやぶける

アァ、音も立てずに

ロック・ファンならだれでも知っている、イヤ、日本のロックの最重要部分として知っておかなければならない名曲の歌詞だ。

曲は「一触即発」。作曲は森園勝敏、そして、作詞はこの写真中央の末松康生。

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末松さんは自己のブルース・バンド「よろこんで」で活躍中だ。

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「都都逸をやろう」とリクエストがあったが、「このバンド、都都逸はやっていない」ということでブルースに変更。カッコいいブルース・ハープをキメてくれた。

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さすが、稀代の名作詞家、コメの銘柄をちりばめた最高に素敵なブルースを歌ってくれた。結局都都逸?

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続いてはBuzzy Feitenのオリジナル・ジャズ・ブルース「Buzzy's Blues」。バズ・フェイトンもフレットの開発ですっかり有名になっちゃったけど、出てきた時は「またスゲェギタリストが現れた!」って大騒ぎだったんよ。アタシャ、ハードロックに夢中でチョコッと聴いただけだったけど…。

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森さんは案外Larsen=Feiten Bandの曲を演奏したりする。

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本編最後は「Lady Violetta(レディ・ヴィオレッタ)」。

間違いなく日本の音楽史に残る世紀の名曲だけあってすべてが聴きどころだが、やっぱりソロに入るEm7をG/Aに置きかえたところの果てしない展開感は何にも代えがたい快感だ。

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ここは関ちゃんが素晴らしかった!ま、いつもこの曲のソロを楽しみにしてるんだけど、今日は最後に一発かましてくれた。関ちゃんのギターはロック・フレーズとジャズ的アウト・フレーズが実にいい塩梅で混ざりこんでいて、ソロを聴くのが楽しみなギタリスト。今日もそんな感じで気持ち良く弾き込んでいたが、そのの最後を#11thで〆たのだ。

こんなこと、普通のロック・ギター・ソロだったら「あ、間違えてら!」となってしまうが、関ちゃんはそこに向けてその前のソロの中でちゃんと物語を作ってきているから何の違和感もまく「カッコいい~!」となってしまう。

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アンコールではまずはの「Ya Ya」という曲をプレイ。間違っても桑田圭祐じゃないよ。関ちゃんに聴いたらスティーヴ・ミラーの「Born 2 B Blue」収録の古い曲だと。で、調べてみた。作曲はLee Dorseyというルイジアナの黒人ミュージシャンの曲。このリー・ドーシーの作品のほとんどはアラン・トゥーサンが務めており、バックはThe Metersが担当している。

この曲はペトゥラ・クラークもレパートリーに加えている。 他にもジョン・レノンが『Rock 'n' Roll』に収録している。それよりも映画『アメリカン・グラフィティ』にも挿入されていた。チッ、ペトゥラ・クラークを除いて全部持ってるけど気が付かなかったからアタシも情けない…。

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そして、またまたフレディ・キングの「Palace of the King」。

オルガンのモジュールを操る為人さん。また、このオルガンがいいんだ~!

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アキちゃんのベースで大西さん再登場!

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大二さんのダイナミックなドラミング…いいナァ~。

「All Blues」をプレイ。

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あ~、今日もいい演奏だった~ 。なんか森さんのライブってアッという間に終わっちゃうんだよね。もちろん、ジックリと演奏を聴かせてくれるもんだから時間の過ぎるのが異常に早いのね。

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森さん自身によれば、実はまだ100%は復調しておらず、左手の薬指と小指の動きが自在ではないという。元々、音数が多い方ではないし、速弾きなどとは違う世界の人なのだが、音数が減った分、ますます凄みが増した。一音一音、魂を込めるようにして弾くギターは「凄まじい」の一言につきる。本当に素晴らしいギターだ。

この森園勝敏の至芸、ジャンルを問わずギター・ファンの人たちには見逃して欲しくない。そして、いい音楽のそばにはいつもマーシャルがるってこと…。

まずは復活を心から祝いたい!

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(一部敬称略 2012年12月28日 西荻窪Terraにて撮影)