『Candytree Garden vol.3』の金属恵比須~ROUNDABOUT 10th Anniversary Live
2024年最初のMarshall Blogは横浜から。
お目当てのバンドの出番までは時間が大分あるので久しぶりに「横浜見物」とシャレこんでみた…と言っても、ウチは母と家内が横浜の出身で、私は赤ん坊の時からこの地に親しんでいるので今更観光の対象として見て歩くところはコレと言ってないんだけどね。
ということで博物館めぐり。
この「神奈川県立歴史博物館」は何十回も前を通過していながら一度も入ったことがなかった。
ちょうど良い機会だと思って入ってみた。
「足柄の仏像」という特別展が開かれていてやたらと薦められたが、お断りして常設展だけを見学した。
コレがなかなかにオモシロかった。
ウチは家内が保土ヶ谷宿の本陣を務めていた家の出身ゆえ、「近世の街道と庶民文化」という神奈川県内の東海道五十三次に関する展示がとても興味深かった。
よせばいいのに「生麦事件」のことに関してはホンの少しだけ学芸員の方をやっつけさせて頂いた。今回ナゼこの博物館に入ったのかと言うと…上に書いたように一番は時間ツブシ。
もうひとつの理由は関東大震災にも空襲にも耐えたこの明治37年に造られた立派な建物が「横浜正金(しょうきん)銀行」の本店だったということ。
横浜正金銀行は明治13年に設立された外国貿易の関係業務を専門的に担当した銀行。
東京銀行を経ての現在の「東京三菱UFJ銀行」ね。
大分前、この横浜正金銀行がとあるアーティストと関係があることを知って興味を持った。 そこで2019年に上海に行った時、こんなモノも見て来た。
コレは横浜正金銀行の上海支店だった建物。共同租界として栄え、東アジアの金融の中心地であったこの「外灘(ワイタン)」と呼ばれるエリアには「旧三井物産上海支店」他、たくさんの歴史的な建造物が並んでいてひとつひとつ見て歩くと大変にオモシロイ。で、前掲の「とあるアーティスト」というのが誰かと言うと…小野洋子なのね、ヨーコ・オノ。
ヨーコのさんはとんでもない両家のご出身で、母方は安田財閥の人。
おジイちゃんが宇和島藩士の「伊臣忠一(いおみちゅういち)」の息子で、「安田善三郎」を名乗って安田家に婿入りし家督を相続したが、その経営手法が宗家の反感を買い追放されてしまったけど。
かつての「安田銀行」は日本三大銀行のひとつだった。
横浜正金銀行に関係があるのは父方で、お父さんがこの銀行のサンフランシスコ支店の副頭取を務めていた。
大正時代の話だからね、相当優だったハズ。
それもそのはず、父方のおジイちゃんは日本興業銀行の総裁だった。
だから戦時中を除いて子供の頃から海外と日本を往ったり来たりしていた…なんてことが下の本に簡単に書かれている。
結局はそこら辺のただスッ飛んでいるだけの女性がいきなりジョン・レノンと結婚なんかできないワケよ。で、そのジョン・レノンの前のヨーコさんの最初のダンナさんは一昨年亡くなった作曲家の一柳慧(いちやなぎけい)さん。
一柳さんについては私なんかより今日の記事の主役の金属恵比須の皆さんの方がズッとお詳しいでしょうが、「邂逅」なんて雅楽と読経のコラボのような作品を聴くとメチャクチャかっこいい。
そんな前衛芸術家同士のスゴいカップルだったワケ。下は私が2019年にマンチェスターに行った時に街中に掲げられていたバナー。
「マンチェスター・インターナショナル・フェスティバル」というお祭りのオープニングのイベントを務められたようだ。
こういう人こそが「国際人」ということなんでしょうナァ…とこの時感心してしまったっけ。
やっぱり何事も「家柄」ということよナァ。
というのは、芸術でも文学でもスポーツでも「仕込みの早さ」がモノを言うからね。 変な脱線をしてしまったけど、博物館のミュージアム・ショップで過去の特別展の図録のたたき売りをしていたので、3冊ほど買い込んで来た…のはいいんだけど、この手の本ってのは上質な紙を使っているので重いのなんのって!
日がな一日コレを背中にしょって歩き回ったモノだからクタクタになっちゃった。
「神奈川県立歴史博物館」の後、前から入ってみたかった「日本郵船」の資料館を訪れてみたが休みで見られず。
さて、今日お送りするのは、横浜・関内にある「まごころ居酒屋」の「ROUNDABOUT」の10周年を記念するイベントに出演した金属恵比須のステージのもよう。
ROUNDABOUTさんはプログレを中心としたロック好きが多く集うお店。さて、ココで第2脱線。
お店の名前の由来はプロッグ・ロック・ファンであればピンとくるところであろう。
でもイギリスに行くようになると「ラウンドアバウト」といえば下のような交差点を真っ先に思い浮かべるようになるだろう。
「環状交差点」という信号のない交差点。Marshallの本社/工場があるミルトン・キーンズは1960年代に作られたイギリスで一番新しい町で、このラウンドアバウトがたくさん設置されている。
信号を取り付けるほどの交通量ではないし、かといって普通の十字路のままだと事故が発生しやすいかも知れないし…ということなのかしらん?
何しろ、この町は信号があるのはほぼ駅の周りだけで、他の交差点のほとんどがこのラウンドアバウトになっているのだ。
コレ、カーナビがどういう風に案内するかというと、それぞれの道路に「Exit」という番号付けられていて、「Exit何番を出てください」みたいな指示が出される…私が見たのはそうやっていた。
まぁ、信号で待つイライラは一切ないが、イッパイやって車でホテルに送ってもらう時、このラウンドアバウトを高速で直進されると「オエッ!」となっちゃうんだよね。下はMarshallの本社。その真ん前にも「センチュリオン」という名前の小さなランドアバウトがあるんよ。
ね、ミルトン・キーンズはラウンドアバウトだらけなの。
さて、お待たせしました!
今日のイベントの会場は「ジャンプ禁止」で知られる横浜ランドマークタワー・ホール。ユッタリしたロビーには大型の屋台村が設置されている。コチラは金属恵比須の屋台。ハハハ!ウマいね!
「今日しか入手不可」…ウ~ム、ココは普通「今日だけ入手可能」の方がシックリ来るのではなかろうか?
コレも金属流か。さて、このイベントのトリを務めた金属恵比須。
まずはいつもの通り高木さんがステージ姿を現してひと言ご挨拶。
「金属恵比寿です。
カメラ、映像、画像、OKです…そのかわり拡散してください」「『これは広告です』というハッシュタグを入れて頂ければ最近はステマ規制法にも抵触しないということですので…全部撮っちゃって頂いて構いません。
そのかわりSNSに上げてください。個人で楽しむことはご遠慮ください。
ボクらはそれを見て反省しますのでゼヒYouTubeに上げてくださいね。
それでは始まります。
もうしばらくお待ちください」「ゴジラVSメカゴジラ・メインタイトル」が場内に流れる中、舞台に現れたメンバーたち。
高木さん指揮のアンサンブルのパ-トからオープニングの「新府城」へ続く。稲益宏美宮嶋健一新加入の埜咲ロクロウ。後藤マスヒロマスヒロさんはNATAL。
このステージから正式に「NATALドラマー」になって頂いたのだ!
この日は10"、12"、16"、22"のウォルナットのキットを使用。そして、金属恵比須の総帥・高木大地。高木さんの背中にはMarshall。この日も1959のフルスタックがステージに華やかな色どりを寄せた。宮嶋さんが奏でるメロトロン・サウンドに高木さんのカシミったリフが重なるヘヴィ・チューン。 「新府城」かぁ…このフランス人が耳にしたら喜ぶような名前の城ね、金属恵比須とこんな関係になるなら一度ぐらい行っておけばヨカッタなぁ。
武田勝頼が甲府お躑躅ケ崎館(つつじがさき)館から当地に本拠を移転を計画したものの、1582年の入城後、織田&徳川軍に攻め入られて勝頼自らが火を放ったという「悲運の城」。
68日しかもたなかった…モッタイない。
場所は韮崎。
約30年前、昔勤めていた会社で山梨を担当していた私は下の標識を何度も何度も目にしながらとうとう一度も訪れることはなかった。
ま、今でこそこんなこと書いているけど当時は歴史になんか全く興味がなかったからね。
伊那の高遠だって何度も仕事で行ったけど「え?『ホシナ』ってダレすか?」ってな具合だったから。
無知ほど人生を無駄にするモノはない。
今は違うよ。
歴史を学ぶことは年寄の最大の楽しみだから。
…ということで高遠からの~「武田家滅亡」。金属恵比須のキラー・チューンのひとつ。ステージ前で入魂のソロを聴かせる高木さん。それを引きついでの宮嶋さんのソロ。リズム隊の弾け具合が気持ちいい!
マスヒロさんと… ロクロウくんのコンビネーションが完璧だぁ!「武田家滅亡、武田家滅亡」と町の「武田さん」が聞いたら気を悪くするかも知れないが、そういう曲だから仕方ない。
武田と言えば…「アリナミン」でおなじみの「武田薬品工業」って大変に古い会社なんだよ。
1781年の創業。
もちろん大阪の道修町(どしょうまち)の発祥。
道修町って今でもシオノギ、小林製薬、扶桑薬品、田辺製薬等々、薬品会社の事業所が多い。
それは、日本で商われる薬は一旦道修町に集まり、品質と目方を保証してから全国に流通させた歴史があるからなんんだね。
いずれにしても武田薬品が滅亡することはあり得ないであろう。
そんな薬の町ゆえ、明治35年には「人頭黒焼き事件」なんて騒ぎがあった。
コレはどちらかというと犬神サアカス團向けのネタか?
そしてこの事件のようすを取りまとめたのは愛媛の八幡浜出身の二宮忠八だったという。
忠八はライト兄弟よりもはるか以前に飛行機(当時は「飛行器」)の原理を発見した人。
このあたりの話をし出すとキリがなくなるのでココでスパッと止めます。
その代わりもう少し薬の話を。
薬は当然東京だって負けていない。
龍角散や浅田飴、津村順天堂も19世紀後半に創業し、日本橋本町は薬問屋街として大いに栄えた。
龍角散は秋田・佐竹家の関係、津村順天堂は順天堂大学と無関係。
浅田飴の創業者は堀内伊太郎という人で、「浅田さん」ではない。
「浅田」は第14代将軍徳川家茂のお目見えで、幕府の御典医だった漢方医浅田宗伯のこと。
伊太郎は宗伯に学び、浅田飴の作り方を教わって、商売を始めた。
下は谷中にあるその浅田宗伯のお墓。 「ありがとうございます。
今日は色々とお知らせがございます。
まず…楽器メーカー数社様のご協力を頂いております」
この場面でMarshallのフル・スタックと…NATALをご紹介頂いた。
あ、マスヒロさん、ご協力ありがとうございます!「ありがとうございます!
おかげさまでいい音!バッチリ、バッチリ!」 「はい。
今日は長いのでもう早く帰りたいでしょ?
スミマセン…それなのに次はゲストを呼びたいと思います。
そこにオルガンがございます。
オルガンのCX3といえば…難波弘之さんです!
難波先生とは5月に小松左京のSFのトークのイベントで初めて共演させて頂きました。
ですから演奏の共演は今日が初めてです。
最近ライブでトークが多いとおっしゃるかも知れませんね…いい加減にしたいと思います、ハイ」難波弘之登場!
難波さんもすごく久しぶりにMarshall Blogにご登場頂きました。難波さんをゲストに迎えての1曲は、これまた金属恵比須のキラー・チューン「ハリガネムシ」。今日も稲益さんの「キセイチュウ~!」が会場にコダマする!ロクロウくんの堂々たるソロ!
こんなに若いのにプログレッシブ・ロックを演るなんて…あのね、プロッグ・ロックの故郷のイギリスではもう誰も聴いていないんだよ。
そんなことを言っちゃいけないか。
今はインドネシアだよ。
先日、インドネシアでは知らない人が全くいない…と言われるイシヤナ・サラスファティという若い女性ミュージシャンが来日した。
コレはMarshall Blogでレポートさせてもらったんだけど、アータ、それがもうプロッグ・ロックの教典のような凄まじいシンフォニック・ロックだったんですよ!
「♪プログレ、滅亡!」ではなく「♪プログレ!存続!」がインドネシアからだとは驚いたよ。
宮嶋さんのシンセのソロ。
ツボを得たプレイはいつも通り。
シンセサイザーといえばMoog。
そしてMoogといえば、テルミン。
あの『テルミン』という映画、ひどくオモシロかった!
高木さんのボトルネックのパートを経て…キーボーズ・チームのスリリングなソロ合戦!
もちろん難波さんのオルガン・ソロもタ~ップリ。
お客さん、大よろこび!そこに高木さんのギターが入り込んで来ての「三すくみ」状態。 誰がへビで、誰がナメクジで、はたまた誰がカエルだとは言わないが、お互いに一歩も引かないソロの応酬!
間違いなくこの日の金属恵比須のステージのハイライトのひとつになった。「最高ですね、コレは!ありがとうございます。
今日はいいものがいっぱい見られますねぇ。
…と言うことで、まだまだお知らせがあるんですよね?」
「はい。いろいろお知らせがございます。
まずは告知の通り宮嶋健一が今日をもちまして金属恵比須を卒業します」
「今日をもちましてしばらく雲隠れして、新たな姿でまた皆様の前にお目見えしようと思います。
しばらくお待ちください」
「ハイ。
もうひとつ…栗谷秀貴がお休みさせて頂いておりましたが、今日をもちまして脱退とさせて頂きます。
本人が来られず申し訳ありませんが、そういうことになりますのでよろしくお願い致します。
で、新たに正式メンバーとして加入致しますのが、今回サポートで出演しております埜咲ロクロウくんでございます。
2000年生まれの23歳です!」
「金属恵比須ファンだったんです。
新しいベーシストに選んで頂いて非常に光栄に思ってます。よろしくお願いします!」
これにて、高木さん、稲益さん、マスヒロさん、そしてロクロウくんの4人が金属恵比須の正式メンバーとなった。
そして、過日レポートした通り、後藤マスヒロさんにはNATALプレイヤーのお1人に加わって頂いた。
そうして既に決定しているこれからの2つのライブのキーボーズはトラで対応するとのこと。
詳しくは巻末のリンクから金属恵比須のウェブサイトをご覧頂きたい。 さて、金属恵比須のステージも残すところあと2曲。
下は、帯に記された「わたしは往プログレを許さない」という惹句が目を惹いた昨年10月発表の初のベスト・アルバム『邪神覚醒』。
このアルバムのタイトル・チューンを取り上げた。マスヒロさんの威勢のよいカウントから…
重々しい5/4拍子のリフが繰り出される。「♪幸せを躙るもの わたしは許さない」
格式高い日本語の歌詞が曲にきれいにマッチする。もうひとつ、宮嶋さんが奏でるメロトロンのサウンドがあまりにも曲調にピッタリなのよ。
そしてココでも的を得たシンセサイザーのソロが飛び出した!
ワウ・ペダルを踏んでの高木さんのソロ。そして、エンディングはプロッグ・ロック・ナンバーのドラマツルギーを具現したかのような壮絶なバンド・アンサンブル。そんな場面をドラマチックかつダイナミックに演出するのはマスヒロさんのドラミング!
我ながらナンですけど…いい音だナァ。
叩き手が良いからなんですけど。
「さて、最後の曲なんですが、マスターたってのリクエストです。
是非セットリストに入れて欲しいとリクエストを頂戴しました」「はい、ベスト盤『邪神覚醒』に入っております「猟奇爛漫」という曲でございます。
ところで、さっきジャンプした時に両足が攣ってしまいましてね…不自然すぎる動きスミマセン。
日頃の運動不足がよくわかりますね。
ちゃんと運動しましょう…ということで、最後はおとなしめにいきたいと思います」 金属恵比須のライブの締めくくりではおなじみの「猟奇爛漫」をこの日も出番の最後=イベントの締めくくりに持って来た。高木さんのリード・ボーカルズ。その高木さんの傍らでハンド・パーカッションに、オノヨーコばりの奇声に、と大変に忙しい稲益さん。前後もしくは左右の鍵盤を同時に押さえる宮嶋さんの姿がいつもカッコ良かった。
金属恵比須でのこの姿もコレで最後。この曲の見せ場のインスト・パートに突入。
鉄壁のリズム隊が繰り出す5/4拍子のリズムに乗って高木さんの狂熱のソロが会場を駆け巡る!
圧倒的なバンド・アンサンブルを劇的にまとめ上げるマスヒロさん!
高木さんは右手を大きく回してエキサイト!そして、宮嶋さんが奏でる「火山ダンス」を想起させるメロディが聞こえて来ると雰囲気は一変する。
「今日は本当にありがとうございました。
最後に中央線沿線で流行っている振付を皆さんと一緒にやりたいと思います。
先ほども言いましたけれども、私は運動不足で皆さんも同様に運動が不足している思います。
そこで、少しばかりお付き合い頂ければと思います」
バンド陣が送り出す軽快なリズムに乗って高木さんがこれからやろうとすることを説明しようとすると…
「チョット、演奏止めてもらえますか?」
「エ?」「初めての方がいらっしゃると思いますので説明します。
『猟奇爛漫体操』というモノがあるんですね。
こう、手をブラブラする感じで…血行がよくなるんですよ。
リズムに合わせちゃダメなんです。
猟奇的に不規則にやらないと。
みんなで『猟奇爛漫』って言いながら、練習してみましょう!
1、2、3、4!」
「♪猟奇爛漫!猟奇爛漫!」もちろん客席は完全に「猟奇爛漫」状態!おお~っと!
宮嶋さんは客席に降りてまでの猟奇爛漫!そして、演奏はクライマックスに達し…それぞれのエンディングのルーティンへと突入した。
暴れるだけ暴れて演奏が終了。
「これからも金属恵比寿、まごころ居酒屋、よろしくお願いします。
そして、宮嶋健一に拍手を!」最後は当日の出演者が全員ステージに上がって記念撮影。
ROUNDABOUTさん、10周年おめでとうございました!そして、宮嶋さんお疲れさまでした!
ロクロウくん、よろしくお願いします。
金属恵比須の詳しい情報はコチラ⇒Kinzoku-Yebis Offical Web