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2022年11月12日 (土)

【I REMEMBER 令文】ライブ・アルバムの魅力~大谷令文とBEAT SOUND

 
大谷令文さんの追悼特集。
今回は雑誌の話題。
冒頭にガッツリ脱線パートを加えて2009年4月1日に公開した記事とは別物にして復刻させて頂く。

私の経験だと今から46~47年前、ロックに夢中になり出した頃、高価だったレコードを買うことができるのはとてもマレなことで、聴きたくて聴きたくて仕方がないロックを楽しむにはFMラジオに頼るしかなかった。
レンタルCD屋なんてトンデモナイ…そもそもCDなんて想像したことすらなかったから。
今でもロックを愛でている私と同じ世代の皆さんは押しなべて同じ境遇だったことでしょう。
そこで重宝するのがいわゆるFM雑誌だった。
「FMレコパル」、「FM fan」、「週刊FM」なんてのがあって、私はカセットテープのレーベルのオマケがついていた「FMレコパル」をよく買った。
巻末の番組表をチェックして、聴きたいアーティストの新譜が紹介されるとなると、印をつけておいてエアチェックに臨んだ。
「エアチェック」なんて今では死語か?
この頃の私のオーディオ装置はお小遣いを貯めてやっとのことで買った下のSONYのSTEREO ZILBA'Pだった。
1976年当時で定価が57,800円。
調べてみると、この年の大卒の初任給が94,300円だって…コレ、スゲエ高かったんだな~。Zb当時、NHK FMなんかは新譜を1枚丸ごとオンエアしてしまうこともあって大変ありがたかった。
考えようによっては、コレって今のサブスクよりタチが悪いんじゃん?
で、ZILBA'P様に二礼二拍一礼してから、対座してトッド・ラングレンの『Ra』やらRoxy Musicのライブ盤辺りを録音していた。
ラジオをそう聴かない私でも、中学生の頃はこうしてFMラジオでロックの情報を少しずつ蓄えていった。
「ハンター」を知ってからはパタリと聴かなくなったけどね。
その「FMレコパル」。
インターネットで画像を拝借したんだけど、やっぱり昔はチャンとしていたね。
1977年の刊行なのでベイ・シティ・ローラーズが絶好調の頃かな?
一方ではスリーピー・ジョン・エスティスと憂歌団を取り上げている。
今の「完全一極集中主義」とは異なり「アレもあるけど、コレもある」という環境をまだ保っていたことがわかる。
すごく鮮明に覚えているのは。「アリス・ク―パー一家の休日」みたいな記事で、アリスや奥さんが家でフザけている光景を具にレポートしていた。
アリス・クーパーがそんな風に扱われていた時代があったなんでにわかには信じられないでしょう?
雑誌にはオーディオ機器にも多くの紙幅が割かれていた。
そのページを見ては「たっけェ~!」なんて驚いたものだ。
オーディオは楽器よりゼロがひとつ多い世界だからね。Fr 今は雑誌も大変ですよネェ。
そこで、チョット調べてみた…「本屋で見かけるものの一体誰が買っているんだ?」系の雑誌。
まずは軍事専門誌「丸」。
私は買ったことがないけど、今読むとかなりオモシロいかも知れないな。
それから「Gun」。
小学校の時にモデルガンに夢中になったことはあったけど、コレも本屋でみかけても開いたことがない。
「おお!コルト・ガバメントの新型が出た!」と喜んでみたところでホンモノを手にするワケにはいかないところがツラくはないか?
MrGun  
この「ラジオ技術」ってのは元はそのタイトル通りラジオ受信機の雑誌だったが、今はオーディオ誌になっているようだ。
「初歩のラジオ」なんてのもよく見かけた。
「CQ」なんてアマチュア無線の雑誌もあったな(今もある)…インターネットが普及した現在、アマチュア無線の世界ってどうなっているんだろう?
コレは知らなかった…「月刊むし」。
最新号の特集は「カミキリ虫」…コレは無視できんな。
コレら、ウェブサイトからお借りした画像はすべて最新号ですからね。
つまり今でも多くのファンを楽しませ続けている現役の雑誌たちだ。
この記事が少しでも宣伝の足しになればうれしい。

RgMs

一方、「オーディオ」関連の雑誌。
上のFMレコパルが栄華を極めていた時代はオーディオがひとつの趣味として立派に成り立っていた時代だった。
今、その辺りがどうなっているのかというと、「Stereo Sound」をフラッグシップ雑誌に据えたその名も「株式会社ステレオサウンド」さんが牙城を守り続けていらっしゃる。
書店では「HiVi(ハイヴィ)」なんてAV機器の専門誌もよく目にされると思う。
SsHv

同社が刊行している「管球王国」なんてのはタイトルからしてタマらんね。
「管球」というのは真空管のことね。
いまだに真空管を使ったオーディオ機器にこだわり続けていらっしゃる…って人のことは言えないか?
真空管のオーディオ・アンプと超高品質のスピーカーでアナログ・レコードを聴いたことってある?
間違いなくブッたまげるよ。
その音質たるや、Marshallとそこらのデジタルのギター・アンプぐらい違う。
最近は「アナログ盤復活ブーム」とか言って、レコードをBluetoothスピーカーで鳴らして「ああ、音があたたかい…」なんてやっている若い人がいるようだけど、おかしいでしょう、それは?
私もいつかは管球のオーディオで音楽を楽しみたいと思っていたけど…ま、いいか。Koさて、その「Stereo Sound」の別冊に「Beat Sound」という雑誌があった。
コレがとてもいい雑誌でしてね。
どういう風にいいのかと言うと、主役をオーディオと音楽の両方に据えて「いいオーディオ装置を用いて、いい音でいいロックを聴こう!」という趣旨なの。
0r4a0800 この雑誌には2006年に一度関わったことがあって、ある日、その時のことが縁になって編集部から連絡を頂戴した。
「大谷令文さんをご紹介してくださいませんか?」という依頼だった。9bs用件を伺って令文さんに伝えると、その仕事に大変ご興味を示してくださり、2009年3月某日、2人で六本木ヒルズの裏にあるStereo Sound社のスタジオにお邪魔した。Img_8846企画の内容は、ロックのライブ・アルバムを様々なスピーカーの名器で再生して、その臨場感を聴き比べるというものだった。
令文さんの相手を務めるパネラーはオーディオ評論家の細谷信二氏。
Img_8849アンプとCDプレイヤーは固定しておいて、次々にスピーカーを取り換えていき、その音質の違いを確認していく。
そして令文さんと細谷さんがその音質の違いについて語り合うという段取り。
視聴にはレコードを使用したような記憶があったんだけど、CDを使用したんだね。
この頃は今みたいに「レコード、レコード!」と騒いでいなかったからナァ。Img_8868事前に「令文さんが違いを聴いてみたいCDをご持参ください」という依頼があった。
すると、令文さんはお気に入りのライブ・アルバムのCDを10枚ぐらいご持参された。
Img_8871すべては記憶していないが、King Crimsonの『USA』とWishbone Ashの『Live Dates』が入っていたことはハッキリと覚えている。
Usリファレンスがどうあれ、こういう企画はオモシロイね。
とにかく、コワいぐらいスピーカーによって音が変わってしまうのだ。
あるスピーカーではボーカルズが一番前にいるのに、他のスピーカーから音を出すと、同じCDにもかかわらず今度はドラムのハイハットが一番手前に出て来たりしちゃう。
不思議だネェ。
ベースがもう少し欲しくなるモノもあれば、足の裏がムズ痒くなるくらい低音がリッチにしてしまうモノもある。
もちろんアンプの設定は一切イジらないでだ。Img_8866結果的に視聴したCDはほとんどが細谷さんのチョイスとなっていまった。
ところが両者のチョイスが一致したリファレンスが1枚あった。
Ld1それは令文さんが手にしているWishbone Ashの『Live Dates』。Ldこのうれしそうなお顔!
「ヘェ~、コレってこんなに音がヨカッタんだ~!」
元より「名録音」の誉れ高いライブ・アルバムの名作だけど、やはり良質なオーディオ・セットで聴くと尚更その良さが際立ったのだ。Ld2 ちなみにこのアルバムに収録されている「Warrior」、「Throw Down the Sword」、「Blowin' Free」の3曲はこのニューカッスルの「City Hall」で収録された。
Img_6844ELPの『展覧会の絵』もココでレコーディングされ、キース・エマーソンは備え付けのオルガンを使用したそうだ。
また、Roxy Musicの『Viva!』の一部もココ。
「Do the Strand」で、オリジナル・レコーディングでは「Chinese」と歌っているところをブライアン・フェリーが「Geordies!」と言い換えてお客さんが歓声をあげるのはそのため。
「Geordie(ジョーディ)」はニューカッスル出身者のアダ名。
そして、ニューカッスルはブライアン・フェリーの地元なのだ。
つまりブライアン・フェリーもジョーディなのだ。Img_6838 思い返してみると令文さんとこういう話をジックリしたことがなかったナァ。
令文さんは熱心なマーブロ読者でいらっしゃったので、私が何度も書いているこんなようなことはご存知であったろうが、こういう話題で直接おしゃべりをしておけばヨカッタ!…大後悔。Img_8867ギターの音もライブで聴いてみよう!ということで令文さんにギターを弾いて頂いた。
Img_8859使用したMarshallは当時新発売だった今の前の世代のMGシリーズからMG15FX。
初めて使うMarshallだったので、音質を確かめながら弾く令文さん。Img_8854途中から持参したiPodをMP3インプットにつないでバッキング・トラックに合わせて弾いてくださった。
曲はナンだったか忘れてしまったけど、令文さんはその音質と機能にビックリ!
この「ニンマリ」はそのニンマリ。Img_8858誌面用の写真撮影。
空模様が怪しくなって来て、カメラマンが「色が出なくなる!」と超大慌てでシャッターを切っていたのを覚えている。
そして「フ~ン、空が曇ると写真の色が出なくなるのか…」とこの時初めて知った私なのであった。Img_8842この対談は「音楽はライヴだ! Living Loving Live Sound ギタリスト大谷令文、JBLブルーバッフル・スピーカーを聴く──案内役:細谷信二」として編集され、2009年4月1日発売の『Beat Sound No.12』に掲載された。
また読みたいんだけど、どうしてもこの冊子をウチで見つけることができなかった。
よって、対談を横で見学していた記憶をたどってこの記事を書き上げた、
さほど大きな記憶違いはないと思う。
ハッキリ覚えているのは…この後令文さんと2人で食事に行った時のこと。
令文さんはこうおっしゃっていらした。
「ウッシー、あのサ……『好きなCDを持って来い』っていうから持って来たんだけどサ…結局ほとんどあのオッサンのチョイスだったよな~」
ハハハ、私も横で見ていてそう思いました~。
その細谷さんもこの対談の2年後の2011年に他界されていた。
今となってはとても貴重な企画となった。Bs_2 

200_2(一部敬称略)