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2021年8月23日 (月)

【Marshall Blog Archive】厚生年金会館の思い出

 
コロナの影響の有無を問わず、東京の中~大型のライブハウスというか、ホールというか、そうした設備がドンドン閉鎖していってるでしょう。
チョットさかのぼると渋谷のBOXX、隣りにあったAX、横浜BLITZ、赤坂BLITZ、新木場COAST(来年1月末閉館予定)…まだ他にもあるかな?
みんななくなっちゃった。
そんなことを先日Zepp Tokyoへお邪魔した時にシミジミと思ってしまった。
そのZepp Tokyoも今年いっぱいで閉館してしまう。
そこで思い出したのが、昔のMarshall Blogの時に編んだ1本。
11年前に閉館した新宿の厚生年金会館のことをつづった記事。
仕事でお邪魔した上のホールたちとは異なり、厚生年金ホールはロックに夢中になっていた高校時代に足繁く通っていた私にとってのロックの「生地」であり「聖地」でもあったのだ。
今日は【Marshall Blog Archive】として2010年3月30日と31日にわたって2本立てで投稿した記事を下地に現在の情報や状況をカラめた大幅な加筆を施してお送りします。
 
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 
新宿駅からチョット遠いんだよね。
いつも往きは胸をワクワク、帰りは友達と「ああでもない、こうでもない」と興奮交じりに今観て来たコンサート評。
そうやって歩いていれば長いハズの距離もアッという間だった。
東京厚生年金会館ホールの話。
49年の営業に幕を降ろし、今月いっぱいでその歴史に終止符を打つという。
寂しいね~。7img_1727 開場前にこの階段で待っている時はいつもドキドキだった。
「あの曲演るかな~」とかいって…。7img_1728 初めて厚生年金に観に行ったコンサートは残念ながら覚えていないけれど、ずいぶん色んなのを観たわ。
…と言っても、何を観に行ったか思い出そうとしてもパッとは出てこないな。
半券も全部保存していたんだけど、昔父が誤って全部捨てちゃったし…。
結局、コンサート・プログラムが手元に残っているコンサートが一番間違いがない…ということになる。
そういうこともあって私は今でもなるべくプログラムを買うようにしている。
そう言えば、昔は「ライブ」なんて言い方はしなかったナァ…もっぱら「コンサート」だった。
歌謡系の人たちが定期的に開催するコンサートを「リサイタル」と呼んでいたイメージがあるけど、「リサイタル」なんて言葉ももはや死語でしょう。
「ライブ」という言葉は、今となっては「音楽」から遠く離れてしまった感じがして、とても安っぽく聞えるので正直あまり使いたくないんだよね。
昔は「あ~、ライブに行きたい!」なんてことは言わなかった。
さて、この記事を書くにあたって「新宿厚生年金出演者一覧」みたいな資料をインターネットで検索したんけどどうしても見つからなかった。
仕方なく調べついでに関連するブログをチェックしてみると、あるわあるわ、ご年配の皆さんの厚生年金会館の閉館を惜しむ想いが!
私なんぞ丸っきりヒヨッコよ。
ここに厚生年金の思い出を書き連ねるのもおこがましい。
そうした年配の方々がココでご覧になったコンサートとなると…
デビッド・ボウイ、スリー・ドッグ・ナイト、ハンブル・パイ、スレイド、フォーカス、そしてマイルス・デイヴィス…。
ハ~ッ…タメ息が出るじゃんね。
私だってもう5年ほど早く生まれていれば間違いなく片っ端から観に行ってたよ!
ごく普通に仕事で訪問するあの楽屋でマイルスやボウイやマリオットが出番を待っていたのか思うと鳥肌が立っちゃうよね。
そして、あのステージには延べ何千台ものマーシャルが並べられて来たワケですよ。
 
これ(下の写真)は1978年、ヴァン・ヘイレン初来日の時のプログラム。
まだファースト・アルバムの発表からそう時間が経っていなくて、アルバムから全曲演奏した。
それでも、1時間にも満たない尺だったためか、このころにしては珍しく前座が付いた。
東京公演はレッド・ショックというバンドで、後年このバンドのドラマーと知り合いになる機会があり、この時の話をして興奮したものだった。

70r4a0134 エディが「暗闇の爆撃(Eruption)」を弾いた時には感動したな~。
まだ「ライトハンド奏法」などという名前がなくて、我々の間では右手の人差し指を少し曲げ気味に立ててそれを回しつつ「アレ」とか「コレ」とか呼んでいた。
チケットは、S席3,000円、A席2,800円、B席2,500円、C席1,800円也…消費税なんてなかった。
 
エントランス脇には49年間の公演の歴史がダイジェストで展示されている。
思いのほか試写会が盛んに行われていたんですネェ。
見にくいですが、右のウインドウの上にはソニー・ロリンズの来日公演のパネルが飾られている。
コレ、私もココへ観に来たのよ(後出)。
ウインドウの中には落語公演の歴史が飾られていた。
とっくの昔に東横ホールもなくなってしまったし…志ん朝を観たっけ…ホール落語の様相もすっかり変わってしまったようだ。Board最近の話だけど、頭脳警察と四人囃子のダブル・ヘッドライナーなんかもよかったナ~。
コレは完全に客として拝見させて頂いた。
Z4
Procol Harumと四人囃子のダブル・ヘッドライナー。
この時は差し入れでギターのジェフ・ホワイトホーンに日本酒を持って行った。
私は『Grand Hotel』以外のProcol Harumって通っていないんです。
つまりほとんどナニも知らないに等しい。
そんなんで楽屋を訪れるとジェフの姿が見えない。
そこで、そこにいた白髪の品のいいおジイさんにジェフの居場所を尋ねると、「ココにはいないよ。外へ行った。イッパイやりに行ったんだろう」ぐらいの返事をしてくれた。
そして、本番が始まって驚いた。
ピアノの前に座って歌を歌っている人がさっきの白髪のおジイさん、すなわちゲイリー・ブルッカ―だったのだ!
「知らない」というのはげに恐ろしい。P4 この時、開演前に楽屋の廊下のベンチに座って岡井大二さんとおしゃべりをした。
初対面でね、相手は「四人囃子のドラマー」ですからね、かなり緊張した。
それが今となってはNATALのトップ・エンドーサー。
そして私のRock Guruにして、呑んだ時にはともすれば事務所にお泊り頂くこともある9つ年上の大先輩。
人とのお付き合いというモノは出会った時にはどうなるか全くわからないモノです。
大二さん、フジロックお疲れさまでした!7s41a0300 今は亡き井上堯之さんのコンサートにはすごく驚かされた。
井上さんはVALVESTATE VS100Rとごく普通のテレキャスターをお使いになっていたんだけど、その音の素晴らしいことと言ったら!
当時は私も同じアンプを持っていたので、家に買ってすぐに自前のテレキャスターで試したみたが、及びもつかないツマらない音がしてガッカリしたことがあった。
わかっちゃいるけど…道具じゃないんよ。

Vs100r2

DEENやCLASSIC ROCK JAMの取材もさせて頂いた。

Crj そういえばKANSASもご招待を頂戴して2回ぐらい観に行ったナ。
「Dust in the Wind」とか「Point of no Retuen」とか「Song for America」とか代表曲を演ってくれるんだけど、何しろ「Carry on~」に向けて他の曲も演奏しているような印象を受けたな…というか、受けざるを得なかった。

このFair Warningというバンド、私は全然知らなかったんだけど、Marshallのレンタルの話が舞い込んできて対応した。7img_1533 サポート・メンバーのニクラス・ターマン。
ものすごく感じの良い人で、楽屋でJVMの話をした。

7img_1552 そうそう、それからイングヴェイの取材も一度ココでしたことがあった。
それまでにもショウは何回も観ていたのだが、面と向かって会うのはその時が初めてのことだった。
ご存知の通り私は世代が古いので、イングヴェイのことはよく知らなかったのだが、ファンのみんなが親しみを込めて「インギー、インギー」と呼んでいることは知っていた。
そこで、ひと通りの挨拶した後に「アナタのことを『インギー』と呼んでいいですか?」と尋ねてみた。
もし失礼だったらヤバいからね。
でも「イエー、もちろん!『インギー』と呼んでくれ!」という答えが返って来るものばかりと思っていた。
とことが…彼は急にキッとした表情になってこう言った。
「オレのことを『インギー』と呼ばないでくれ。
オレの名前は『イングヴェイ』だ。『イングヴェイ』と呼んでくれ」
「インギー」と呼ばれるのをものスゴくキラっていることが十分に伝わって来た。
正直、この時は結構ビックリしたけど、私は少しも慌てず「オーケー、イングヴェイ!」とだけ答えた。
もちろん、それからイングヴェイと一緒になる機会が何回かあったが、絶対に「インギー」と呼ばなかったことは言わなくてもイイングヴェイ?
 
…と、このことを今まで軽く3、4回はMarshall Blogに書いた。
ところがfacebookなんかを見ていると、イングヴェイ・マルムスティーン本人がイヤがっているにもかかわらず平気で「インギー、インギー」と呼んでいる人を見かけると悲しくなる。
これほどまでにMarshall Blogが読まれていないのか!…とね。
ま、そういう人は実際にマルムスティーンさんに会った時に「インギー」と呼んでみるといい。
「なんだ、お前、Marshall Blog読んでないのか?」と言われるかどうかは知らない。7img_0189 元の記事はココから<後編>になっていた。
  *    *    *    *
本日、2010年3月31日…いよいよ東京厚生年金会館の最後の日が来た!
 
ヴァン・ヘイレン初来日の年と同じ1978年の11月にはジェネシスを観に行った。
これも初来日だったのね…もうスティーブ・ハケットもいなくて、ダリル・スチューマーがギターを弾いていた。70r4a0122 でも、フィル・コリンズとチェスター・トンプソンのツイン・ドラムスがカッコよかったこと、照明がすごくきれいだったことをよく覚えてる。
もっとも印象的だったのは、フィル・コリンズがタンバリンひとつでソロを演ったこと。
手のほかに、頭、足、お尻と身体のあらゆる場所にタンバリンを当てて色んな音を出していた。
ものスゴイ演奏だった。
正直を言うと、当時はGenesisは苦手だったんだ。
でも、演奏は照明スゴイし、特に照明が素晴らしいということを耳にして行く決心をしたのです。
今は超大好き。
イギリスに頻繁に行くようになってからメチャクチャ好きになった。
惜しむらくは、もっとチェスターをよ~く見ておけばよかった!
何といっても歴代ザッパ・バンドで一番好きなドラマーはテリーでもヴィニーでもなくてチェスターだからして。70r4a0117 下は布袋寅泰さんのバンドのイギリス人ドラマー、スティーヴ・バーニー。
もちろんNATALドラマーだ。
2019年の国内ツアーで来日した時にウチの事務所に遊びに来てくれた時の写真。
私が東京大空襲の話をすると、ものすごく熱心に耳を傾けてくれた。
スティーヴはGenesisの大ファン。
私よりも幾分年下で、いわゆるプログレ時代のGenesisを観たことがない…と、私が厚生年金会館で観たことを話すとこれまた熱心に聴いてくれた。
家内の手料理を喜んでくれて、2人で「Afterglow」のチェスターのドラム・フィルの話なんかをして大いに盛り上がった。
楽しかったな~、この時。
まだコロナの「コ」の字もなかった頃だ。7s2b エントランスを抜けるとロビーは案外狭いんだよね。終演後はいっつも大勢の人でゴッタ返していた。

7img_1730臨時ニュースを申し上げます!臨時ニュースを申し上げます!ゴジラが銀座方面に向かっています…。大至急避難してください、大至急避難してください!
1979年5月、Blue Oyster Cult(以下「BOC」)は忘れることのできない最高のコンサートを見せてくれた。
『Spectres』とライブ・アルバム『Some Enchanted Evening』収録の「Godzilla」が話題になってて、当然この時も演奏した…というか、日本で「Godzilla」演らないでどうすんねん。

70r4a0129 レーザー光線や照明がすごくて、カギ十字の形をしたギターを持ったリード・シンガーのエリック・ブルームがギターをマシンガンに見立てるアクションをすると銃声とともにストロボがたかれたりしてね。
とにかくカッコよかった!
曲も滅法よくてね。70r4a0132 ショウのクライマックス圧巻はファイブ・リード・ギター。
ドラマーまでフロントに出てきてメンバー5人全員でリード・ギターを弾いちゃう!
最近はライブ映像を収録したDVD付きのCDも発売された…はい、当然ゲットしています。 

70r4a0124 後年、Marshallの本社に行った時、事務所に1976年のBOCのヒット曲、「(Don't Fear) The Ripper」がインターネット・ラジオで流れていて、若い連中がそれに合わせて歌っていた。
私はそれを見てビックリしたね。
だって、その若い連中が生まれる20年以上も前の曲だからね。
たまらず彼らにどうして知っているのか訊いてみた。
「ヒットした曲だから、いつの時代もどこかで流れているので若い人も覚えちゃうんだよ」
「両親がよく聴いていたのよ」
ウーム、コレがベイ・シティ・ローラーズかなんかならわかるが、ブルー・オイスター・カルトだぜェ?
日本では絶対に考えられん。
しかもブルー・オイスター・カルトはイギリスではなくて、ニューヨークのバンドなのよ。Dfr BOCのプログラムの広告には5月のNazarethが載っていた。
コレも渋谷公会堂へ観に行った。
このコンサートは「観ておいてヨカッタ~」のウチのひとつ。
この年の6月の興行として2回目の来日となるScorpionsとUFOが掲載されている。
すべてS席3,000円也。
Scorpionsはウリが脱退した代わりにマイケル・シェンカーが来るというので大評判になっていた。
でも来なかった…。
その後、UFOでやって来たけど、ギターは元Lone Starのポール・チャップマンじゃん。
おかげで今の今までホンモノのマイケル・シェンカーなるモノを観たことない!
これには後日譚があって、もはや笑ってしまうのだが、このブログ記事を書いた年のフランクフルト・メッセのマーシャルのブースではマイケル・シェンカーのサイン会を開いたらしい。
それまで長年毎年参加したフランクフルト・メッセなのに、選りによってその年は行かれなかったのだ。
もうスティーヴ・ミラーとマイケル・シェンカーは一生見れないモノと決め込んでいる。

70r4a0138 廊下に据え付けられている時計。
右の灰皿みたいな丸いのはスピーカー。
上演中ここから場内の音を控えめに流していた。
そういえば、ここは1階廊下にも2階フロアにもイスがふんだんに置いてあったこともヨカッタ。

7clock2ソニー・ロリンズは厚生年金で2回観た。
ボビー・ブルームのギターとトニー・ウィリアムスのドラムが抜群にカッコいいアルバム『No Problem』を発表した直後の1983年のLive Under The Skyがすごくよくて、「今度ソロで来日したら観に行こう」と心に決めていてそれが実現したというもの。
ちょっと脱線するが、この時の『Live Under the Sky』のロリンズのバンド・メンバーがメッチャ豪華で、ギターがパット・メセニー、ベースがアルフォンソ・ジョンソン、そしてドラムスがジャック・ディジョネットという顔ぶれ。
おまけにダブル・ヘッドライナーということでチック・コリア、ミロスラフ・ヴィトウス、ロイ・ヘインズの3人が名盤『Now He Sings, Now He Sobs』を再演するというオマケつき。
よみうりランドEASTのクソ遠さを忘れてよろこんだものだった。70r4a0151 で、厚生年金でロリンズを観たのは1985年と86年の2回。
85年にはヴァイブラフォンの名手、ボビー・ハッチャーソンが、86年のにはギターのボビー・ブルームと電化マイルスのドラマー、アル・フォスターが出演した。
とにかく、豪快にバリバリ吹きまくるロリンズがやっぱりカッコよかったな。70r4a0147 それにしてもこの49年の間に一体延べ何台のマーシャルがステージに上がったことだろう?
先日のAC/DCの来日追加公演では後ろの方にほんの少々空席が認められたが、AC/DCのチケットが売れ残るのは世界広しといえどもナント日本だけなんだそうだ。そういった状況が外タレの日本離れ現象を引き起こしているとも聴いた。一体いつから日本は世界のロック後進国になってしまったんだろう?世界のアーティストから相手にされない国なんてイヤだ~!
もちろん色々な事情があったのであろうが、この名ホールの閉館もそんな状況のあおりを受けたような気もするし、ますます日本人を海外のロックから遠ざけてしまうような暗い気持ちにもなってしまう。

さらば厚生年金!

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
…と、2010年の記事はこうして締めくくられている。
この時から11年。
今、何を思うかと言うと…コレは友人のジャズ・サキソフォニストと話していたことなんだけど、ロックに関してもジャズに関しても、私の世代は「レジェンドが生きていた時代」に生きたということ。
パソコンやスマホやゲームなんかなくても、こと音楽や映画等のエンターテインメントに関しては、とてもいい時代を過ごすことができたと思う。
冒頭に挙げたライブハウスは「我が青春の」では全くないが、厚生年金会館のように「なつかしいな~」と思い出す日が来るのだろう。 
 
ちなみに厚生年金会館の跡地はヨドバシカメラさんの本社になっている。

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