Marshall Blogに掲載されている写真並びに記事の転載・転用はご遠慮ください。
【マー索くん(Marshall Blog の索引)】
【姉妹ブログ】
【Marshall Official Web Site】
【CODE/GATEWAYの通信トラブルを解決するには】

« ブルースの犬たち~Tomi Isobe & Blues Dogs | メイン | うんこ~爆弾ジョニー »

2018年6月 4日 (月)

amber lumber ニュー・アルバム『Mother Moon』レコ発ライブ

    
本来であればココでクイズ『Marさま!!』である。問題のジャンルは漢字。
  
「盈虧」の読み方を答えなさい
 
コレが質問なんだけど、もうMarshall Blogに何回も出てきているのでクイズになりゃせんな?
「えいき」と読む。
「月の満ち欠け」という意味。
知らなかったら読めもしないし、言葉の意味に至っては想像することすらムズカシイ。
私はコレをMEJIBRAYというビジュアル系バンドの曲のタイトルで知った。
人間、何事も勉強である。
それで思い出したのがRCの清志郎。
まだ渋谷の屋根裏に出ていた頃だったかしら…ナニかのインタビューで「忌野」という名字の由来について質問にこう答えていた。
「だってカッコいいじゃん?『忌』っていう字の形がサ…」
高校生だった私は「そうかナァ~?やっぱりミュージシャンってのは変わってんな…」と思った。
でもサ、「盈虧」の方がカッコよくね?書けないけど。
 
満ちたり欠けたり、いつも心に寄り添う月。あなたを癒す月のような12のピース
 
…というキャッチ・コピーが付けられているのがamber lumberのセカンド・アルバム『Mother Moon』。
「コレ、いいんだよね~」というファースト・アルバムの高評価が冷めやらぬうちのリリースだ。
キャッチ・コピーに偽りのないホッコリとした、さりとてそれだけには治まらない、静かな力強さに満ちたamber lumberの世界が広がっている。
今回もオリジナルのイラスト満載で、アルバム制作に対する計り知れない情熱が伝わって来て実に気持ちが良い。
あ、買った人はオビを捨てずにその裏面を必ず読んでね。

10cd今日のレポートはその『Mother Moon』のレコ発ツアーの東京公演。
会場は神田須田町のTHE SHOJIMARU。
神田須田町についてはコチラに記してあるので興味のある人はどうぞ。

20v_2今回もamber lumberの2人が書いたエッセイが会場で配られた。
ライブのたびに書いていて、今回で第72号だって!
毎日ライブをやっているワケではないにせよ、毎回ってのは大変なことだよ。
1回、2回書くのはとても簡単なことだけど、継続するのは大きな困難をともなう。
内容を考えて、不明瞭な点を調べて、文章を書いて、文字数に収めて、推敲して、プリントして、持って歩いて、配って…この繰り返しじゃん?
他にもたくさんのオリジナル・グッズを手作りしてるからね。

25この日はお店の2周年を記念して展開しているトリプル・ヘッドライナー・シリーズの一幕。
amber lumberはトリで登場した。
何しろココはamber lumberにとって東京のホームみたいなモノだからね。

60v満員のお客さんの前に姿を現したふたり。

30森永JUDYアキラ

50v山本征史

40v「お店の2周年を記念して」…というワケではないんだけど、この日はサウンド的にいつもと違うamber lumberのステージになった。
それはまずアキラさんの後ろ。

70いつもはラインで鳴らしているアコースティック・ギターを今日はアコギ用のアンプで鳴らしたのだ。
使用したのはMarshall AS100D。
ASというのは「Acoustic Soloist」の略。
ASの話をすると、「エエ~ッ!Marshallってアコギのアンプなんて作ってんの?!」なんて時々言われるんだけど、アータ、このシリーズはAS80Rというモデルをもってして1994年にスタートしたロング・セラーなんよ。
何回かモデルの出入りがあったにせよ、ビンテージ系のモデルを除けば、Marshallで24年も続いているシリーズってかなりの長命よ。
それもそのハズ、ヨーロッパ、時にフランスではアコギ・アンプのベストセラーなんだって。
その証拠にフランスが生んだ大アコースティック・ギタリストのピエール・ベンスーザンの言葉を引用するに…
何よりもサウンドが好きだ。私のアコースティック・ギターのスペックにこれほど近いアンプは初めてだ。たくさん機材を持って行くよりも、ギグやリハーサルにこの1台だけを持って行ったほうがいい
要するに出音が自然だということなのね。
だから海外では重用されるんだけど日本ではダメなんよ。
「アコギ」と言えばほぼ100%「ラインで鳴らすモノ」と思い込んじゃってる。
実際、専門学校なんかでもそう教えている…という話を先日耳にした。
 
チェット・アトキンスに「お金を払ってでも聴きたいギタリスト」と言わせしめたナッシュビルの超スゴ腕フィンガー・ピッカー、ドイル・ダイクスと何度か仕事をしたことがあった。
彼は必ずアコギ・アンプを通してプレイした。
MarshallのプレイヤーではなかったのでASの存在を知らなかったが、やはり「ナチュラルなサウンド」とAS100Dを大層気に入ってくれた。
海外では、ライブでアコギ・アンプを使うのが当たり前なのである。
ビックリした?
その利点は…
 1. 音のパンチ力がラインより格段に上。
 2. ミキサーの人にいちいち頼まなくても自分の音を自由に手元で作ることができる。
 3. 自分の音が背後から出ているという安心感。
…などなど。
コレは私は勝手に書いているのではなく、ドイルをはじめとしたアコギ・アンプを常用している海外のギタリストから聞いた話。

80で、実は、今のMarshall BlogになってAS100Dが登場するのは初めてなんですよ。
つまりアキラさんがASの壁をブチ破ってくれたというワケ。
そんなだからもう少しAS100Dを紹介させてもらいますよ。
ようやく企業のブログらしくなってきた!
 
出力は50W+50Wのステレオ。
8"カスタム・スピーカーとツイーターが2発ずつ搭載されてる。

2_i2mg_6682 簡単に言って入力は充実の4系統。

A10アコ―スティック楽器をつなぐAcoustic Channel 1。
その下がマイクもつなぐことができる楽器用チャンネル。

A20ハウリングを防止する「アンチ・フィードバック」や16種類の空間系エフェクトも装備。
下段はマイク専用のチャンネル。

A30さらに外部のステレオ音源を鳴らすためのRCA入力も装備されている。
だからコレ1台でなんでもできちゃうの。

A40リアパネルにはループやステレオDIアウトも各種装備。
あ~、便利だなったら便利だな。
コレで音が素晴らしいと来てるんだからタマったもんじゃない!

A50Marshallが作ったデモ動画あるので紹介しておく。
デモンストレーションは根っからのエレキ野郎のクリスが担当しているが、ASの音質や機能の良さは十分にご理解頂けると思う。


一方、征史さん。
いつもアコースティック・ベースを弾いているが、今日はエレクトリック。
5弦のフレットレスだ。
愛用のアコベは修理中なんだって。
聞いたら修理代がスゴイ!…でもそれだけの大工事だから仕方ない。
ミュージシャンにとって楽器のメインテナンス・コストは子供の養育費みたいなものだから、どうしても避けられない。

90エレクトリック・ベースに合わせてアンプ・ヘッドもStrange, Beautiful and Loudの時に使用しているMarshall 1992 SUPE BASSが起用された。

1001曲目は前作『運命の輪っか』から「青い月夜」。

110_atなんかもうライブが終わっちゃいそうな、いい演奏を観た後の幸せに満ちた寂寥感のようなモノがタマらん。

120vアキラさんの歌と詞に呼応するように丁寧にベースの音を置いて行く征史さん。

S41a6441 アキラさんのシャープなカッティングでスタートしたのは…

0r4a6643同じく前作から「あたし待ってんの」。

140_am好きな言葉は「紅一点」、キライな言葉は「四捨五入」だというアキラさん。
いい声だナァ。
「ウィスキー・ボイス」っていうの?
キンクスのレイ・デイヴィスは「Lola」という大ヒット曲の中で「Dark Brown Voice」という表現を使った。
それがどういう人の声かは実際に曲を聴いてもらうことにしてココには書かないが、この曲について面白いことを知った。
この曲はホモの体験を歌っているんだけど、その出だしに「彼女に会ったソーホーのクラブで飲んだシャンペンの味はチェリー・コーラの味がした C-O-L-A コーラ」とある。
レコーディングをした時、元々この「チェリー・コーラ」という部分の歌詞が「コカ・コーラ」だった。
コレでは宣伝になってしまってBBCで放送することができないということになり、ニューヨークにいたレイ・デイビスをロンドンに呼び戻したという。
そのおかげで、レイ・デイヴィスはたった一言の歌詞を差し替えるために、往復9,600kmの道のりを日帰りしなければならなかったんだって!
amber lumberも気をつけてくださいよ~。
そのレイ・デイヴィスの今では「Knight」だからね。

150私のためにセット・リストに加えてくれたという「雨雲レーダー」。
そう、前作に収録されていた「思えども思えども」と並ぶ感動巨編なのです。
お母さんとの手紙のやりとりを征史さんが情感豊かに演ずる。

175アキラさんのシンプルなアルペジオが背景だ。
今日は一段と音がクリアで美しい背景が広がる。

170「♪こっちのアジサイ濡らした雨が そっちのアジサイ濡らしに行くよ」…ココで感動の嵐よ。
メロディがあるのはこのパートだけ。
アキラさんが征史さんのオクターブ下にハモリを重ねる。普通反対でしょ。
しかし、ナンダってこんなロマンチックな文句を思いつくんだろうね~。
 
ちなみ先日名古屋に行って東京に帰ってくる日はものすごい雨だった。
新東名を突っ走って帰って来たんだけど、結局雨雲と一緒に東に向かうもんだから、最初から最後までハンパじゃない大雨。
もちろんハンドルを握りながらこう歌ったさ!
「♪名古屋を濡らした雨は 東京濡らしに来るな!」って

180ニュー・アルバムから「MSMM」。
「♪あたしはそんなに立派な人間じゃない」。
こんな曲、アキラさん以外に歌える人いないね。

270v_2 途中から征史さんのベースが爆発。
歪ませたベースの音色のせいもあるんだろうけど、こうして聴くとキング・クリムゾンみたいだな。

S41a6456 ツアーでごちそうになったカニとブリがあまりにも美味しかったので作ったという曲、「カニはエライ」。
実やらミソやら捨てるところがないのがエライんだって。
しかし、みんなカニ好きだな~。
アタシャ、特段夢中になったことがないナァ。

190v_keカニに敬意を表して、ココは2本の指だけを使って弾いている。
ジャンゴもカニが好きだったりして…。

200コレはふたりでカニ歩き。
そういえば、志ん生のマクラに「カニてぇヤツは横に這うもんだがな、このカニゃタテに這ってるよ。そしたらカニが…『少し酔ってますから…』」ってのがありましたな、ねぇ征史さん。210お客さんと一緒に…「美味しく生まれてくれて、ありがとう~!」

220ジックリと「半分の月」。これもニュー・アルバムから。

230_htまるで時間の速度が半分になったかのようにユラ~っとした時が流れる。
アキラさんの歌のマジックだ。
落語に「もう半分」という噺があってね…ヒデェ話なんだよ、ねぇ征史さん。

240v「ちょっとスイマセン…」
アキラさん、突然ギターを降ろしちゃった。
ナニかと思ってたらトイレだって!
「アイガラピー」ってヤツ。
グラスを片手に演奏するような小ぶりのクラブの男性ミュージシャンにこういう光景を時折見かけるけど、女性は初めて見たな~。
正直でよろしい。

245v_tアキラさんが無事トイレから戻ったところでドラマーが加わる。

250杉山章二丸!

260v曲はamber lumberのキラー・チューン「Eしか弾けない」。
290v前回同じ場所で拝見したワンマンの時は「Eってイイ!」⇒「カッコいい!」というお客さんとの掛け合いの説明をしていたが、今回はそれを省略してもバッチリ。
amber lumber人口が増殖しているのを感じた。

280v章二丸さんともう1曲。
イントロでアキラさんがKazooでうなる「風が吹いたら」。

300v_kf『Mother Moon』のクローザー。
ライブを締めくくるにも最適な印象的なナンバーだ。

310ショウは一度ココで終了したが、アンコールの声が鳴りやまず、間髪入れずもう1曲。
『運命の輪っか』から「ここにある宇宙」。

320vやっぱりこの曲の後半の征史さんの「暴れコーナー」がないとね!

330今日はMarshall SUPER BASSにエレクトリック・ベースというコンビネーションで思う存分暴れて頂いた!

340vイヤ~、ホント、手前ミソながらASの音の素晴らしさに惚れ直すこともできたし…。
時間は短かったけどすごく充実したステージだった。

350vこれからもamber lumberならではの音楽をジャンジャン世に送り出してくれることを期待している。

360vこのツアー、西の方はもう終わっちゃったけど、まだ14本も残ってるからね…会場がお近くの時にゼヒ足を運んでamber lumberの音楽を楽しんでくだされ。
 
amber lumberの詳し情報はコチラ⇒amber lumber Official Website

390v 

200_2 
(一部敬称略 2018年6月2日 神田THE SHOJIMARUにて撮影)