ロビン・トロワー・インタビュー (オマケつき)
本家のウェブサイトにRobin Trowerのインタビューが掲載されたので訳出しておく。
ま~、Marshall Blogのやることと異なり、何ともサッパリしたインタビューだが、その分オマケを付けておいたのでお楽しみ頂ければうれしく思う。
Marshall(以下「M」):ギターを始めたキッカケは何ですか?また、あなたが最初に影響を受けたミュージシャンは誰でしょう?
Robin Trower(以下「R」):ギターを始める当たってはスコティ・ムーア(訳者註:プレスリーの右腕ギタリスト)に影響を受けたね。
彼は今でもスゴイよ。
M:あなたは長年にわたり色んなマーシャルをお使いになられてきましたが、いつでも戻りたくなるようなお気に入りのモデルはありますか?
R:ここ数年、2種類のモデルを使っているところだよ。100WのVintage Modern(訳者駐:2466のこと)と50Wの1987Xだ。
<Vintage Modern 2466>
<1987X>
M:今はどんな機材を使っているんですか?
R:オープンバックの2x12”と4x12”キャビネット。それを100Wヘッド2台か50Wヘッド2台で鳴らすんだ。
M:あなたは様々なコンサート会場やフェスティバルで演奏をされていますよね。その中でも際立って印象に残っているパフォーマンスはありますか?
R:あるとも。フロリダはセント・ピーターズバーグの「Janus Landing(ママ)」というイベントは特別だったね。(訳者注:現在は「Jannus Live」と名称を変えている。キャパは2,000。発音は「ジャナス」だと思う)大きな屋外の中庭ですごくいい雰囲気なんだ。
M:あなたにとってライブでの楽しみはなんですか?
R:何かスゴイことが起こるチャンスがいつもあることかな?
M:これからギターを始めようとしている人になにかひとつアドバイスするとしたら?
R:私たちは皆、何かに影響を受ける。でも、それをそのままマネしようとしてはダメなんだ。それをやってしまうと自分だけの音楽を育てる余地を失ってしまうからね。
おわり。
え?もう終わり?
そう、だから「サッパリしてる」って言ったでしょ。
Robin Trowerのような大ギタリストが出てきてコレで終わったんじゃMarshall Blogの名がすたる!…ってんで、私なりにRobin Trowerについて少し書き足してみることにした。
バイオグラフィはチョット調べればどこにでも出ているから割愛ね。
それよりも、Robinについては大変に悔やんでいることがあるのだ。
というのは、1977年の1月に来日した時に行かなかったこと。
まだ中学2年の時だったからねェ。
その翌月のAerosmithの初来日公演は武道館に観に行った。
Robinは、東京では中野サンプラザで三回のコンサートを開いた。三回もですゼ!
いい時代だ。
その頃、呼び屋さんは宣伝用の小さなステッカーを作って配っていた。Toddのは保存してあるんだけど、Robinのはどっかに貼ってなくなっちゃった。取っておけばヨカッタ。
下の写真はRitchie Blackmore's Rainbowのコンサート・プログラムから。
そういう意味ではRobinのLynard Skynardも失敗した。行っておけばヨカッタ。
「新春コンサート」ってのがまたイイね。
ちなみにチケットはS席で3,000円だ。
私は熱心なRobinのファンではない。
それでも、歌を歌わずに今も第一線で活躍しているうギタリストとしては、Jeff Beckほどではないにしろ、ロックの歴史に十二分その名前を残す偉大なギタリストではなかとうか…と思うのだ。
日本では完全にベテランのリスナーの間ぐらいでしか名前が出ないのは残念だが、キャリアを積んだプロ・ギタリストの間では今でもちょくちょくRobinの名前が出る。
令文さんはMarshallの新商品の試奏の時に「Day of the Eagle」を弾かれていたし、シャラさんは今は無き渋谷AXで、開演前の試し弾きに「Little Bit of Sympathy」のイントロを私のために弾いてくれたのを覚えている。
三宅さんは今でも熱心に研究されているようだし、グバ~っとMarshall全開で弾いちゃうところなんか、すごくRobinの影響を感じさせてくれる。
実際、後で紹介するRobinの代表作「Bridge of Sighs」なんて曲は三宅さんのオリジナル曲と雰囲気がよく似ている。三宅さんの曲のほうがケタ違いにヒネってあるけど。
海外では今でも大人気で、昨年もアメリカをツアーしたようだ。
2008年にJack Bruceとの『Seven Moon』をリリースした時、Marshallの友達は「シゲ、明日RobinとJackを観に行くんだ~、へへへ」とうれしそうに自慢していた。うらやましかった。
こういうところに欧米と日本のロックの存在感の決定的な違いを感じるんだよね。
イギリスに生まれたかったな~。
消費税(VAT)が20%でも社会福祉がシッカリしてるし。BBCはおもしろいし。
日本みたいな政府の「やらずぶったくり」がない。国民がうるさいからね。
オッと、政治の話はしないんだった!
ところで、私、Robin Trowerを日本に呼ぼうとしたことがあったんですよ。
それは、2002年あたりに三回目の「マーシャル祭り」を開催しようとした時、誰か外タレを呼ぼうということにした。
Marshallのアーティスト担当と色々とスリ合わせたのだが、コチラからは「Mick Taylorはどうか?」という相談を持ち掛けたが、どうも連絡をつけるルートがないらしかった。
その代りとしてAlvin Leeの名前が挙がった。
今となってはお願いしておけばヨカッタ!と臍を噛む思いなのだが、「それよりもRobin Trowerはどうだ?」と提案したのだ。
その担当者はさっそくRobinにコンタクトしてくれたのだが、予算的に手も足も出なかったのでキッパリと諦めたのだった。
コレがRobin Trowerの思い出。
いつかはホンモノを観てみたいギタリストのひとりだ。
この後は紙幅を広げるための蛇足だ。
Robin Trowerになじみのない方にホンの軽くディスク・ガイドを掲載して置く。
ベテランの方にも少しはトリヴィアになれば、少しは書いた甲斐があるというものだ。
まずは定番の『Bidge of Sighs』。
1974年のソロ第二作。
昔は雑誌で「スーパー・ギタリスト必聴盤」なんて企画があるとたいてい選ばれていた名盤だ。
ま、結構渋い感じで、当時私はあまり夢中にはならなかったが、今聴くと実によろしいな。
渋いと言ってもソロ第一作の『Twice Removed from Yesterday』ほどではないだろうけど。こっちは一曲目から「I Can't Wait Much Longer」でジトっとやられるでネェ。名曲だけど。
そこへ行くと本作は「♪ジャジャンガ、ジャジャンガ」と「Day of the Eagle」で派手にキメてくれる。
カッコいい曲だよね~。
他にも「Too Rolling Stoned」、「Lady Love」。「Little Bit of Sympathy」とRobinの代表作がテンコ盛りだ。
何しろ曲がいいのよ。
Procol Harum時代の旧友Matthew Fischerのプロデュース。
エンジニアは『Revolver』以降のThe Beatlesとの仕事で有名なGeoff Emerickだ。
鳴りモノ入りなワケよ。
ところで、このアルバムのタイトル、「Bridge of Sighs(ため息橋)」とは何ぞや?
「あしたのジョー」でおなじみの南千住の泪橋(なみだばし)はよく通るけど。
「ため息橋」というのは、16世紀に架けられたヴェネツィアの橋のひとつ。牢獄につながっていて、この橋からの眺めは、投獄される前に囚人が見る最後のヴェネツィア景色で、「この美 しい景色を見られるのもコレが最後か、トホホ」…と囚人がため息をつくというところからその名が付いた
…のだが、実はこのアルバムのタイトルはその橋とは全然関係がないそうだ。
Robinによると、歌詞はできているが、タイトルがキマらない曲がかつてあった。ある日スポーツ系の雑誌で「Bridge of Sighs」というのを目にして「コレだ!」とひらめいて、曲のタイトルにし、かつアルバム名に使用したらしい。
それは競馬ウマの名前だったとか。
全米7位。ゴールド・ディスクを獲得している。
いい時代だ。
Music Jacket Galleryみたいになってしまうが、このジャケット、オリジナル盤はこうだった。
色だけでなく、渦が反対、すなわち180度上下が入れ替わっていた。メッチャ変な感じ。
試しに今のジャケを逆さまにしてみると、ホラ、渦の形が同じでしょ?
このレタリングもカッコいいよね。
それと、コレはハズせないでしょう。
1975年2月のスウェーデンはストックホルムでの演奏を収録した『Robin Trower Live』。
コレはよく聴いた。
今聴いてもメッチャかっこいい!「Too Rolling Stoned」のイントロを聴いただけでワクワクする。
元々はスウェーデンの国営放送のために演奏したもので、バンドのメンバーたちは録音されていることを知らされていなかったらしい。そのおかげで、いい具合にルーズな演奏で、形式ばった仕上がりにならず、彼のベスト・パフォーマンスのひとつになったという。
Robinのギターもノビノビとしていてカッコいいが、忘れちゃイケないのがJames Dewarのボーカルですよ。
Greg LakeやJohn Wettonにも通じる極めて男性的な歌声は問答無用で素晴らしい。
コチラも全米ベスト10入りを果たしている。
そして、ジャケット。
多分、表だと思うんだけど、写真はナントJim Marshall。写真家の方ね。
こんなことを知ると余計に好きになっちゃうね。
この時、Robinとの間で「アレ?Marshallの社長と同じ名前じゃん!」なんて話になったのかな?
それともう一枚。
「KING BISCUIT FLOWER HOUR」のライブ盤。ココもいい音源イッパイ持ってるよね。
Zappaの海賊盤なんてドラムがDavid Logeman期の貴重な音源だけによく聴いた。
こっちはZappaの海賊盤。
下がRobinバージョン。
今はジャケットが違うようだが、私のはコレ。コレも中の写真はJim Marshall。
「King Biscuit Flower Hour」というのは1973年から2003年まで続いたライブ音源を中心にしたアメリカのラジオ番組。
スポンサーがKing Biscuit Flour Co.という会社で、番組開始当時のヒッピー文化、「Flower Power」と「Flour Hour」を引っ掛けて名付けられた。ウマい!
Flourとは「小麦粉」のことね。
第一回目の出演は、Blood, Sweat & Tears、The Mahavishnu Orchestra、Bruce Springsteenだっという。どういうブッキングじゃい!
Robinのバンドは、以前はJames Dewarがベース/ボーカルを担当するトリオ編成だったが、後にRustee Allenというベーシストが加入してJamesはボーカルに専念することになった。
この音源は1977年10月の録音で、まさにその時期の演奏だ。
このRustee Allenという人、知ってる?
Larry Grahamの前のSly&The Family Stoneのベーシスト。何でRobinのバンドに入ったのかね?
…と思ったら、ドラムのBill LordanもFamily Stone出身で、『Small Talk』の録音にRusteeとともに参加している。ドラミングは『Robin Trower Live』よりこっちの方がはるかに良いと思う。
Jamesはベースを取り上げられたのを快く思っていなかった…というのを何かのインタビューで読んだ記憶がかすかにある。
でも、このアルバムでの演奏はとてもいい。
1977年の『In City Dreams』のレコ発記念的なライブだったのだろうが、おなじみの曲もシッカリ収録されている。
そのおなじみの曲がどれもテンポ・アップされていて、かなりこなれた「立て板に水」的な演奏だ。
RobinもよくJimi Hendrixのフォロワーと言われていたが、ギターのサウンドや奏法もさることながら、Frank Marinoあたりとは異なり、もっと内面的な部分でJimiの影響を受けているように思いますな。もしJimiが生きていたらこんな感じの曲を書いていたのでは?…なんて、久しぶりに聴いてそんなことを感じた。
「新ヴィラノヴァ・ジャンクション」みたいな…。