摩天楼オペラ~AVALON TOUR DAY at 日比谷野外音楽堂<後編>
さて、<後編>。
今年はこの摩天楼オペラが野音納めになった。また来春までこの象さんともお別れだ。
やっぱり子供の頃から通い慣れているせいか、日比谷野音はいいね。好きな会場だ。
1983年に大幅に改装されたけど、雰囲気はその前のまま。この「ビルに囲まれた小さな音楽のオアシス」というシチュエーションが魅力的なのだ。
そして、日本武道館とか日比谷野音とか、歴史を刻んだ音楽の名刹(?)は間違いなくその環境とブランドで演者をインスパイアし、名演を産む。
にもかかわらず、日本はそういう歴史的な施設を何の未練もなく消滅させてしまう。たとえば新宿厚生年金会館。そして、もうすぐ中野サンプラザ・ホール。
地震の多い日本のことだから、老朽化した建造物に手を入れながら存続させていくことは、建築技術的にも経済的にも大きな問題となることはわかるのだが、いかにもモッタイナイ。
Her Royal Majesty、Drury Lane、Lyceum、Prince of Wales等々、挙げ出したらまったくキリがないが、ロンドンの劇場の多くは19世紀の建物を大事に大事に使って歴史を守っている。Mel Tormeで有名なShubert Alleyやら『Cats』のWinter Garden等、ブロードウェイの劇場の多くも、かなり古く、歴史を感じさせる建物が多い。LAの「Shrine Auditorium」なんてのもそのひとつだ。
もっとも東京に関していえば、関東大震災と東京大空襲ですべてを失ってしまったので、無理もない。もし、このふたつの大惨事がなければ、そして、もっと古跡を愛でる風土があれば、間違いなく東京は世界でもズバ抜けて魅力的な観光地になっていただろう。
話しは反れたが、とにかくそういう歴史を持つ劇場がなくなるのは、同時に日本における音楽の歴史も抹消され、後世への音楽文化の伝承が断たれるような気がして悲しくなるのである。
野音は開業から90年を迎えたが、どうかこのまま存続して欲しいと願う。
この日も野音はご多分に漏れず、素晴らしい名演を生み落とした。
それを操るAnzi。
この光景。AnziとMarshallの壁は切っても切れない。
ステージは本編後半に入る。
「クロスカウンターで乾杯したいんだよ!」という苑の叫びで始まったのは…
『AVALON』から「クロスカウンターを狙え」。
「クロスカウンター」には興奮したよ。何せ「あしたのジョー」はリアルタイムだからね。この「あしたのために その3」が本当にできるかどうか、当時実際に試して顔に青アザを作ったヤツがいたっけ。
「INDEPENDENT」~「ANOMIE」と続く。
ここで一転。
ステージからヒラヒラと真っ白な鳥の羽が舞い落ちる。
苑が亡き友人に捧げたバラード、「友に捧ぐ鎮魂歌」だ。
いつかも泡のようなものをステージに舞わせて感動的な空間を作り出していたが、野音の開放的な舞台でのこの演出は効果てきめん!
風がなくてヨカッタ!
昨年の暮れにシングル・リリースし、『AVALON』にも収録された「Orb」。
そして、また合唱隊がステージ壇上に並び「天国の在る場所」を演奏。
会場はこの一大スペクタクルに大興奮!
本編最終コーナーを飾るにふさわしい力強く、荘厳なパフォーマンスだ。
続けてインストの「journey to AVALON」。
そう。きれいにスタートに戻ったワケ。
素晴らしい演出!
ショウ全体があたかもひとつの曲になっているかのような、こうした作り込まれたストーリー性のあるステージはいいね。
これで本編18曲を終了した。
アンコールの1曲目は本邦初披露となった「致命傷」。
なんぞ物騒なタイトルだが、10月末に「ワンコイン・シングル」としてリリースした、『オレん家のフロ事情』というテレビ・アニメの主題歌。
摩天楼オペラ初のアニメとのタイアップだそうだ
思い返してみるに、摩天楼オペラに初めて接したのはまだインディーズの時代で、よくDELUHIと活動を共にしていた頃だった。
その時Anziさんのプレイを初めて見たのだが、確かなテクニックとバンド・サウンドを重視したバランスの取れたプレイ、そして何よりもそのMarshall愛に私はスッカリやられてしまった。
アレから何年経って、何回このバンドを拝見したかはわからないが、何しろスケールがドンドン大きくなっていることにいつも感動する。
それは、メンバーの音楽への真摯さがそうさせていることは間違いないそして、それがすごく伝わってくる。
他とはチョット違うけど、奇を衒うことはない…この絶妙なサジ加減が魅力であり、サウンドを成長させる源になっているのだと思う。
アンコール2曲目はファースト・アルバム『Justice』より「IMPERIAL RIOT」。
猛然と疾駆する5人。
すべてが終わり、月の下で、割れんばかりの拍手の中の極楽鳥たち!
悠の最後の雄叫びもいつも通り!
そうそう、もうひとつ。摩天楼オペラのコンサートはお客さんの男性比率が大変高いことを書き添えておく。
やっぱり野郎には「ハード・ロック好き」のDNAが組み込まれていて、摩天楼オペラのサウンドがシッカリと応えてくれることをみんな知っているのだ。
次はナニをしてくれるのか…楽しみだ!
摩天楼オペラの詳しい情報はコチラ⇒摩天楼オペラOFFICIAL WEBSITE
(一部継承略 2014年10月18日 日比谷野外大音楽堂にて撮影)
***** お 知 ら せ *****
1993 年に出版され、当時もっとも詳しかったマーシャルに関する書籍『THE HISTORY OF Marshall(日本語未訳)』を、マーシャルの創業50周年を記念し大幅に改訂・増補して2013年に出版されたのが『THE HISTORY OF Marshall THE FIRST FIFTY YEARS』。
そして、その日本語版がついに出来する!
レ アなアイテムを中心とした数百点にも及ぶ商品やマーシャルの歴史に名を残す重要人物のカラー写真(本邦初公開多数)、歴史的文書、ヴィンテージ・カタロ グ、販促アイテム、ミュージシャンや関係者の興味深い証言を満載してジム・マーシャルの波乱万丈の人生から、50年にわたって時代をロックし続けた名器た ちを立体的に詳述する。
マーシャル社が制作に全面的に協力したロックやギターを愛する者必携のマーシャル・バイブル!
なんて言うとカタっ苦しいけど、写真見てるだけでも十分に楽しいわ、コリャ!…という一冊。
<内容>
ジ ム・マーシャル物語 爆音の父/Marshallサウンドの誕生/歴代のモデル(JTM45から新DSLまでを網羅)/スピーカー・キャビネット/50周年記念コンサート(コ レはマーブロが勝つな…/関連商品/Celestionスピーカーについて/マーシャル・シリアル・ナンバーの読み方…他、400ページ以上の充実したコ ンテンツ!
帯(腰巻)が付くとこんな感じ。
アンプ大名鑑[Marshall編]
著 者:マイケル・ドイル、ニック・ボウコット
監 修:ワタシ
発 売:12月19日(金)
体 裁:B5判/並製/400頁強(オールカラー)
価 格:本体4,500円+税
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