amber lumber~9周年記念ワンマンライブ<後編>
結成9周年を迎えたamber lumberの単独公演レポートの<後編>。
レポートに入る前に…。
膨大な数の厨房器具店が軒を連ねていることで世界的に知られている「合羽橋」を歩いていたらこんなモノが目に入った。
「ネコちゃんてぬぐい」
横綱が「猫ノ山猫五郎」、露払いが「猫ノ海猫太郎」、太刀持ちが「猫ノ風猫右衛門」、そして行司が「福守猫之助」…おお!コレはamber lumberのためにあるようなモノじゃん!
名前にヒネリがなさすぎるのが気にはなるが…。
「それでは第2部を始めたいと思います。
私たちの初合わせから丸9年ということなんですが、実はamber lumbrを結成したのはこの季節ではなくて年明けなんですよ。
ココにいる人はみんな知っていると思うけど9年前の11月に一緒に演って、その後に山本さんからラブレターのような歌詞が送られて来て私が曲をつけたんです。
それがとってもいい曲だった…というのが結成のキッカケなのね。
『初心忘るるべからず』でその曲を演ります。
それと、今日は遠くから来てくれてる人がいるので、苫小牧で大人気の曲も続けて演ろうと思います」
まずはそのamber lumber結成のキッカケになったという「青い月夜」。
ロマンティック極まりない征史さんの歌詞に…
味わい深いアキラさんの曲と歌が見事に合わさった1曲。
泣けるよナァ、この曲。
実際、一緒に歌おうとすると嗚咽が込み上げて歌えないんだよね。
「ありがとう!次は苫小牧で大人気の曲。
みんなで大合唱する歌ですよ!
今日は東京の人も歌えるんじゃなぁ~い?
苫小牧に負けるな!」
「苫小牧で大人気」というのはアキラさんの歯切れの良いファンク・ストラミングがグイグイ押し寄せて来る「あたし待ってんの」。
スキャットに…
ベース・ソロにと征史さん熱のこもったプレイも大きな見どころ。
そんな征史さんのパフォーマンスにアキラさんのソウルフルな歌声がベスト・マッチするというワケ。
「苫小牧のマスターに『オレがプロデューサーだったらこの曲をシングルで出す』って言われたんだけど私たちの中では毎回演る曲じゃなかったんだよね。
だからそう言われた時は『え~マジっすか?』って思ったわ」
「苫小牧ってホントにスゴくて…初めて行った時は大雨だったんです。
すごい雷が鳴ってもう嵐。
初めて行く全然知らない場所だし、こんなところに一体人が来るのかな~?と心配していたらゾロゾロと集まって来てアッという間に満員ですわ。
初めて行ったのに全員が歌っている…なんだコノ店は?ってなったんですね。
一応、ボクたちのホームグランドはココSHOJIMARUってことになっているんですけど、北のホームは苫小牧なんです。
機会があったらゼヒ皆さんも行くと楽しいですよ。無限に酒も出て来ますし!
ビールが空いたな…と思ったらすぐ誰かが『じゃあオレの飲んで!』みたいな感じで一銭も酒代を払ったことがない。
ないけれどもへパリーゼなしでは生きていけない!」
「でもねホントにあの頃もうヤル気がなくて早く辞めたかったの、マジで」
「2人とも音楽辞めようと思ってた頃に出会ったんですよ…ガラクタなんです、ボクら」
ナニをおっしゃる!
そういえば苫小牧って一度だけ行ったことがあるナァ。
港にある自社のセメントのサイロを見に行ったんだけど、他のことは見事に何ひとつ覚えていない。
続いてはアキラさんがギターのボディを叩きながら歌う「毒を吐く」。
ナンカこの時の「♪歌え 歌え」はグっと来たナァ。
これまでもう数えきれないぐらい聴いているのにすごくグッと来た。
コレが「周年」の力なのか?
『Hundred Suns』から「冗談じゃない」。
何事もどうにもならない鬱屈した気持ちをアキラさんがキリっとした声で歌い上げる。
征史さんは頭を大きく前後に揺さぶって必殺のソロを繰り出した!
第2部で征史が歌う番。
「じゃあ1曲歌わせて頂きます。
今日はボクの大学時代の恩師が来てくださっていまして大変なんですよ。
自分が持っている先生の著書を何冊か物販席に置いておきましたので読みたい人は『貸本屋山本』にご相談ください。とてもオモシロイ本です」
「宗教学ですかね。人類学?
ボクが知ってる中でたぶん1番頭の柔らかい人なのではないか?というぐらいで私など足元にも及ばないんですが、すごく影響を受けているつもりでいます。
こうやって先生に会うと学生の頃を思い出したりしますね。
そこで学生時代の恋愛を思い出しながら作った曲を歌ってみようかな。
ニャンコの歌なんですけどね…『♪ノドを鳴らしてにゃぁ~ご』と私が歌いましたら、皆さんも『にゃ~お』と一緒に歌ってください」
征史さんの恩師とは「植島啓司」先生とおっしゃる「宗教人類学者」。
多岐の分野にわたりたくさんの本を著していらっしゃる。
大学の先生がライブに来てくださるなんてスゴイな、征史さん。
私なんか大学の先生といえば、担任だったシェイクスピアの先生のお顔と名前をかろうじて覚えているぐらいだわ。
卒論の指導教授すらスッカリ忘れた。
つまり大学で全然勉強しなかった…ということ。
勉強できる時にもっと勉強しておけばヨカッタと、情けないことに今頃死ぬほど後悔している。
ギターなんかに夢中になりさえしなければ、私だって…私だって…。
この「私だって」は<前編>の福地櫻痴のところでも触れた森鴎外の『雁』の1953年の映画化作品に出て来るセリフ。
ミジメな自分の生きざまを嘆き高峰秀子が扮する「お玉」が悲痛な面持ちでこのセリフを吐いて観る者に感動を与える。
毒を吐いているワケではない。
ところがそんな重要なこの「私だって」というセリフは森鷗外の原作には出て来ない。
映画の脚本は成沢昌茂。さすが溝口健二のお弟子さんだ。
その『雁』の舞台は東京大学の「鉄門」から不忍池方面へ下る「無縁坂」だ。
1953年版の映画ではお玉を囲う高利貸し「未造」に東野英治郎、お玉が見染めてしまう一高生(=東大生)の「岡田」には芥川比呂志が扮した。
比呂志は芥川龍之介の長男。三男坊が作曲家の芥川也寸志ね。
『雁』は1966年にも映画化されていて、コチラでは若尾文子がお玉を、そして小沢栄太郎が未造、そして山本学が岡田を演じた。
両方観たけど、やっぱりデコちゃん&黄門さまの方がヨカッタな。
ただ、若尾文子のお玉はメチャクチャ魅力的だし、小沢栄太郎の怪演も素晴らしかった。
Marshall Blogではこれまでにも何度か『雁』で脱線しているけど、植島先生も東京大学のご出身ということでまたぞろ取り上げさせて頂いた。
ああ、私だってギターなんかをやらずに一生懸命勉強していれば東大に行けたかも知れなかったのに…絶対にムリです、ハイ。
イヤイヤ、ナニ言ってんだ?ギターのおかげで今の私やこのMarshall Blogが存在していることを忘れてはいかんぞなもし。
征史さんが歌ったのは「思えども思えども」。
今にもネコになっちゃいそうな征史さんの情感タップリの歌いっぷりを植島先生はどうご覧になったであろうか?
アキラさんはコーラスに回って…
そして、みんなで「♪にゃ~お」。
amber lumberのファースト・アルバム『運命の輪っか』に収録されている曲。
はじめて聴いた時はエラく感動したわ。
ネコといえば…しばらく前にSNSに投稿したんだけど、上野の不忍池のほとりを歩いていたらベビーカーに乗せられた「メインクーン」とかいう種類の巨大ネコを見かけて、そのあまりのデカさにスッカリ仰天してしまった。
山ネコかヒョウの赤ちゃんかと思ったのよ!
さて、盛りだくさんの9周年。
ココで新しい作品について情報を開示。
アレンジャーの間宮さんと作品を創っていたが、『スターズ』を出してから半年ぐらいの間それが停滞していた。
それがまた動き出して11月15日に1曲リリースを果たした。
そして、このMCの次の次に演奏する「大事なこと」が12月にリリースすることが発表されたのだ。
「私、この歌を去年の誕生日に作ったのね。
気に入っていてソロの時とかに割と演っていたんだけど、歌う度に歌詞が変わっちゃって…。
それで今年の誕生日のワンマンの時に『完成しました』と言って演ったんだけど、その時も『アレ?』っていう感じがあったの。
なんとなく仕上がらない…コリャ、一生仕上がらないんじゃないか?と思っていたら間宮さんが仕上げてくれたの。
それでamber lumberとしても出来る形にしてもらった。
間宮さんバージョンは、この場ではチョット出来ないけどね」
「転調して戻って来たり。
レコーディングの時も迷子になるから『コノ音だよ!』っていうのを間宮さんが優しく出してくれました」
「やさしい…だけどamber lumberを始めて『今からamber lumberになります!』っていう最初のライブの時ってココで間宮さんのところとダブル・ヘッドライナーだったのよね。
間宮さんがギターを弾いていたんだよ。
『あの時はこ~んな関係になるとは思ってなかったですよね?』って言ったら『ウン。この2人にはボクは関わらないようにしようと思ってた』って!」
「近づかないように…ね。
それがドップリ。
2人っていうか、『森永さんに近づかないように』って言っていましたよ」
「あなたも入ってましたからね!
そして遂に完成しました!
まだタイトルが決まっていなくて、『大事なことを忘れないためのメモ』みたいなタイトルにしようと思ったんだけど『大事なこと』でいいんじゃんかって言われたのでそういうタイトルになりそうです」
時間が経つのが早いので、ついウッカリして大事なことも忘れがち。
そして「大事な人」とも会えなくなくなる日が来てしまう…なんてことがないようにしようというホッコリ・チューン。
まったくです。
コンパクトなベース・ソロが効果満点。
「♪忘れんなよ、免許の更新」と小声で呟いたのが印象的だった。
まだ引きずっているのだ!
ところで3倍ですってよ…3倍。
歳を取ると子供の時や若い時に比べて時間の早さが3倍に感じられるそうです。
人間、誰しも歳を取ると早起きになるでしょう?
アレは当然のことで、ダラダラ寝ていると年寄りの1日が短くなりすぎちゃうんですよ。
チョットでも寝坊しようものならその日の夕方が来るのが早いのなんのって!
だから朝早く目覚めさせて、年寄にも時間を有効に使わせてやろうという神様のお気遣いなんです。
「そうだ…間宮さんの『福丸チューンズ』から1曲ずつ210円でダウンロード販売をしていて、ある程度溜まったらアルバムにしようと思っているんですが、実はメチャクチャ変わるんですよ。
どういうことかって言うと、ダウンロードした時のバージョンとアルバムに入る時のバージョンに大きな差があるんですよ!」
「結構リミックスを施すんですよ。
今回から縛りを設けまして、ベース・ソロを2回録って、配信とCDは別のテイクにする。
だから『CDが出るまで待っていようかな?』みたいな人が結構いらっしゃいますが、配信とCDではモノが違います。
オレのベースソロの違いがどれくらい効果が出るのかはわかりませんけど…」
「ウチの娘が結婚式をした時に作った歌なんですけど、歌っていると全然娘の顔も出てこない。
作った時はそうだったんだけど…でも例えば私を捨てたアイツなんかも出て来ない。
ホント歌っていると、作った時の感じと違うんだよね。なんツ~の?そう言うの。
全然うまく言えねぇな…。
結婚式には留袖を着て歌いましたけど…内緒話をしちゃうと私、来年おバアちゃんになる。
まだ言っちゃいけないって言われたんだけど…もう言っちゃってる。ガハハハハ!」
おめでとうございます!
孫ってホントに可愛いよ~。
ということで「宇宙のあかりへ~祝福の歌~」。
生命の誕生を称える愛らしいワルツ。
音を選びに選んだベース・ソロが曲の感動を倍加させる。
アキラさん、大熱唱。
バラードながらこの場面は第2部のハイライトではなかったか?
客席は2人の演奏に完全に入り込んでいた。
「ありがとうございます。
今、歌った2曲が最新曲なんですけど、ナンカ作風が変わったと思うんだよね。
毒を吐かないし、なんて言うんだろう?…色がない?
『こう歌っています、でも実はこういう意味です』みたいなイヤらしい所がずっとあったんです。
そうやって曲を作って来た。誰もわかんないでしょ?
でもそういうコトがなくなった。
で、『今年中に私は3曲作る』っていう誓いを立てたんですが、全然作ってないので…作ります。
まだ2ヶ月あるし」
「初年度は出会って、そっから2ケ月で10曲くらい作ったんですよね。
『初心忘るるべからず』!」
「そう!
とにかく曲を作ろう。
あと来年に向けての目標はドラム曲を増やす!アハハ!
ところで皆さん、もうお気づきとは思いますが本日もMarshallさんの素敵なアンプを使っています!
ホント、SHOJIMARYの時だけこの良いギターの音で演っているんですよ!」
「そして山本さんもこの重たいMarshall。
SHOJIMARUってどうしてエレベーターがないんですかッ?
穴を開けて上のAJIROとつなぐエレベーターを作ろう!
ヨシ!じゃあ、あと2曲。
でも我々もう9年間やって来て400何本…441本?
私の記憶の中ではコノ曲を外したことがないな。
ということは、これまで441回歌ったってことでしょ?
スゴくない?
あの手この手でやってきた。
アンプが小さくてベースソロになった瞬間、『ウワッ!ショボ!』みたいな時もあったよね?
今日は自前のMarshallでガツンとイケますね?」
この日もアキラさんはMarshallのアコースティック楽器専用アンプ「AS100D」を使用。
征史さんは長年の愛器「1992 SUPER BASS」と「1960A」。
「あの手この手」といえば、1952年の市川崑監督で同名の映画があった。
若き日の「久我美子」を見せるための1本みたいなモノだが、なかなかオモシロかった。
「久我美子(くがよしこ)」は本名を「久我美子(こがはるこ)」といって、「村上天皇」の血脈を持つ華族の家の出だった。
「だった」というのは一昨年の6月に93歳で亡くなったばかりで、私が知る限りほとんどテレビで報道されなかったんよ。
昔の映画界はそうした公家の血を引く良家出身の人や東大や京大出がゴロゴロしていたため、上智大学出身の井上ひさしは映画産業に就職することを諦めたという。
久我さんのご主人のウルトラマンでおなじみの「平田明彦」も東京大学の出身。
「良家」ということで言えば、山田五十鈴、原節子と並んで「日本三大美人女優」と呼ばれ「化け猫映画」でも人気を博した「入江たか子」。
この人は本名が「東坊城(ひがしぼうじょう)」さんだからね…ホンモノだ。
何せ「菅原道真」が祖先だっていうんだから。
寅さんにも出ていた「河内桃子」や『東京物語』のお母さんを演じた「東山千栄子」なんかも貴族の血筋。
貴族ってのは、大抵は江戸時代の大名家ですからね。
ということでその最頻出曲「ここにある宇宙」。
ということは私がamber lumberを観た回数とこの曲をナマで聴いた回数がイコールになるということか。
この曲でのアキラさんの歌声はいつだってドスが効いていた。
今日もその切れ味はバツグンだ。
この曲での征史さんの暴れっぷりも同様。
毎回、何かに憑依されてしまったかのような乱れっぷり!
コレを400回以上演ってきたワケだ。
そして最後は「半分の月」。
アキラさんの溢れる情感がamber lumberの9周年を記念する公演の本編を感動的に締めくくった。
「好角家」のことで脱線しようと思ったんだけど、今日はMCで1回も相撲の話が出なかった。
なのでそのネタはまた別の機会が訪れるまでまでキープしておこう。
アンコールに移る。
征史さんが愛器について説明。
私も昔はアメリカのアコースティック・ギターの仕事をしていたので、ライバルのブランドだった征史さんが愛用しているアコースティック・ベースのメーカーのことはよく知っている。
征史さんは同じ楽器を3本持ていて、一番気に入っている1号機が修理から戻って来て「うれしいなったらうれしいな」とやっているところ。
ココで2人が初めて合わせた曲を演奏することに。
「自分のソロの時には私はこの曲をセットリストに入れないんですよ。
だから最初にこの曲で『一緒に演りますか?』って山本さんに言われた時、『エ~!?』と思った。
しかもコノ曲を演りたい人がヘヴィメタルの人だとは思わなかったよ、ホントに!」
「ヘヴィメタルだって、いいじゃないか。
学生の時、肺が破れてレントゲンを撮ったら写ってなかったの。
で、すぐに『入院ですよ!』って言われたんだけど、その時ちょうどメタルのバンドのライブ入っていたんです。
酸素ボンベを使いながら1時間首を振って翌日入院したら…直ってた!
ヘヴィメタルってそういう効果がある。スゴいんですよ!」
アンコールの1曲目は「少しずつ」。
最初にこのワビサビ曲を選んだところがスゴイな。
「チョットさびしくなることがわかっていたので予め用意していたハッピーな曲をもうひとつ」…と、続けて「とりあえずハッピー」を演奏した。
おっ!ヘヴィメタのライブでよく見る光景!
ハハハ!
見て!アキラさんの顔!
この日は大相撲九州場所の初日だった。
amber lumberで後援会に入っている欧勝海の「ヨイショ!」で締めくくることになった。
「せ~の!ヨイショ~!」
そして、止まる気配がない「アンコール」に応えてもう1曲。
「風が吹いたら」を演奏。
最後はもう1回…「ヨイショ~!」
ズシンッ!
おお!「猫山猫五郎」ばりの四股を決めてamber lumberの9周年記念が終わった。
amber lumberの詳しい情報はコチラ⇒amber lumber Official Web Site
<おしまい>
