【ショ盆まつり】ストウ・ザ・セッション「Sasakist」の伊藤ショボン太一<前編>
「ショ盆まつり」の第2弾と第3弾はライブ・レポート。
「あのス―パー大物歌手」のバック・バンドのメンバーがカルテット編成で極上の演奏を聴かせてくれる楽しいセッション。
会場は今回初めてお邪魔する柏の「WUU(ウー)」。
ウーム…「WUU」とは一体ナンだろう?
ハハン?さてはオーナーが『ウルトラマン』に出て来る白い毛むくじゃらの怪獣「ウー」がお好きなんでしょう?
だってステージ奥の壁面に映るシルエットがウーみたいにになっているもん。
…なワケないでしょうから店長にその由来を伺ってみた。
頂戴したご見解は2つ。
①WがバストでUUがヒップ
②店名を決める段になってオーナーが「ウ~、どうしようか?」と考え込んでしまった時の「ウー」。
ウ~、どっもいいな。真四角な店内は広々としていてとてもいい感じ。
白いことを活かして店内の壁面をギャラリーとしてアーティストに開放しているそうだ。
屋台村のようす。
右の青くて四角いのは須藤さんのオリジナル手ぬぐい。こうすれば「幟(のぼり)」としてステージのセットにもなる。
コレはとてもいいアイデア!
唐草模様がステキ。定刻になりステージに姿を現した4人の職場仲間。
須藤さんの「始まります」の一声で演奏が始まった。
まずは多くの日本人であれば誰もがピンとくるヤツを10小節ほど。
そして佐々木さん作の「A Man from Olive Island」が続いた。その「仕事仲間」とは…
須藤滿佐々木秀尚
野崎洋一
そして、伊藤ショボン太一。
ショボンちゃんが使ったのはNATALの「ZENITH(ゼニス)」。
コンフィギュレーションは10"、12"、16"、22"。
50~60年代のビンテージ・ドラム・キットを再現したゼニスはシングル・タムのキットなので10"のタムタムはよそのメイプルのキットから移植した。スネア・ドラムはメイプルの14"×5.5"。
ツイン・バスドラム・ペダルも使い慣れたNATAL製だ。
各人のスリリングなソロが飛び出し、ノッケから会場のテンションがグングンと上がっていく。
続けて須藤さんのベースから始まる2曲目は「The Scramble」。
ラテン調のラインを何度も止めてフェイントをかける須藤さん。
バンド・アンサンブルとなって佐々木さんがテーマをシャープに奏でる。
須藤さんのソロが炸裂し…
野崎さんのソロが爆発し…
ディレイを深めにかけた佐々木さんのソロが跳躍し…
ショボンちゃんのソロからテーマへと進み曲はハードなエンディングを迎える。
コリャ、今日は一時も聴き逃すことができそうにない演奏だぞ!「ようこそお越しくださいました!
『Sasakist』としてギターの人と私のダブル・リーダーでツアーをやっております。
浜松、厚木、川口と回ってまいりまして今日が最終日でございます。
楽しいステージになることは間違いありませんので皆さんも大船に乗ったつもりでご覧ください!」
須藤さんからご挨拶の後、メンバー紹介が続いた。「ドラマーとしてだけでなく、米生産者としても活躍している」と紹介されたショボンちゃん。
「田圃の広さは13町歩です(=東京ドーム2.8個分)」
「軽い大名みたいですね~」と佐々木さん。皆さん、おしゃべりも名人級。
どの場面もとても楽しいトークだったんだけど、すべてをココに載せるほどの紙幅もないので、MCについてはポイントだけ記すことにする。クランチ―なギターが印象的な「Vibes」は佐々木さんの作品。
ミディアム・スローのテンポに乗って美しいメロディが奏でられる。須藤さんのロマンティックなソロが心地よい~。
佐々木さんはスリリングなフレーズをタップリとソロに詰め込んだ!
フォーク・ギターから始まった須藤さんの音楽遍歴について。
須藤さんがかつて長年在籍していたバンドでは積極的に若いミュージシャンを起用していて、50も年齢が離れたサキソフォニストとギタリストがユニゾン・パートを奏でているという。
とてもいいことだと思います。
「音楽は齢を取らない」ということの証左と言えましょうぞ。
そして、佐々木さんからお誘いをもらって2つ返事で引き受けたという現在の職場についての話があった。「ひとり2役を演じる」という須藤さんのオリジナル曲「Miller Light」。
「2役」というのはルーパーを使ってのひとり2重奏。
須藤さんのゴキゲンなスラップ・ベースをバックに弾くもう1人の須藤さんはさぞかし気分よかろうぞ!野崎さんの激演が続く。
ショボンちゃんのゴキゲンなファンク・ビートに乗って…
ソロの後半の野崎さんはセシル・テイラーもビックリの野獣っぷり!
もちろん須藤さんもタップリと必殺のソロをお見舞いした!
さらに佐々木さんが須藤さんのソロに呼応すべくハードなソロをキメてきた!
1部最後の曲は佐々木さんのチョイス。
「今回の問題作」と紹介した曲名を聞いてエエエエエエエエッ!…と驚いたのは私だけだろうよ。
その理由は巻末に記すことにして…。
起こした譜面の3ページ目が何しろムズカシイらしい。「ヨレない、ブレない、間違えない」ということで仲間内から「ターミネーター」と呼ばれているショボンちゃん。
「この曲…ウッ!と身体が止まりそうになるところがあるんですよ。
そう、譜面の3ページ目はもう大変です!」
そのパートはさしものターミネーターでも難儀らしい。
ハハン、あのパートだな?
コリャ楽しみだわい!佐々木さんが取り上げたのは櫻井哲夫さんの「Wonderland in the Sky」。
心地よいリズムに乗って野崎さんがパノラミックなソロを展開する。
ショボンちゃんのプレイにも気合が入る!
ん?この表情は3ページに入っているのか?
イヤ、まだだろう。曲に思い入れが深い佐々木さん。
それだけに思う存分弾きまくる!ショボンちゃんのソロ!
ドラムスはNATALです。3ぺージ目はこの複雑なキメのパートのことだな?
まさにスリル満点!
ナンノナンノ、4人の職場仲間は難なくこのパートもこなして…須藤さんがベース・ソロをガツンとかました!
佐々木さんは大学の音楽サークルで悪戦苦闘しながらこの曲に取り組んだという。
違う学部でキャンパスが異なるため、参加していた音楽のサークルも私と別だったのだが、実は佐々木さんは私と同窓なのだ。 で、この「Wonderland in the Sky」という曲は、櫻井さんが2001年に発表した『Gentle Hearts』というアルバムに収録されていて、私は櫻井さんがそのアルバムのベース・プレイを解説した教則ビデオを制作したことがあったのだ。
だから「エエエエエ!」と驚いたワケ。
同時に涙が出るほどなつかしかった。
佐々木さんが大学のサークルでこの曲を演奏して楽しんでいた頃、私はそんな仕事をしていたというワケ…齢の差が大きいナァ。
だから当時、櫻井さんからこのアルバムの制作について色々とお話を伺った。
櫻井さんはとにかくデニス・チェンバースにドラムスを叩いてもらいたくて、ダメ元でオファーしたところスンナリOK。
レコーディングでは、どの曲も1回譜面を見ながら演奏するとデニスはその譜面を取り去り、2回目以降はミスすることが全くないどころか、自分の解釈を織り込んで更にスゴイ演奏をしてくれたそうだ。
また、ギター・パートに関しては櫻井さんは単身アメリカに乗り込み、グレッグ・ハウの家を訪ね、そこでレコーディングをした。
グレッグは近くのバス停まで車で櫻井さんを迎えに来てくれた…という話がとても印象に残っている。
もうこの時から24年も経ったのか!その24年前の2001年、『マーシャル祭り』というイベントの2回目を開催した。
このイベントは櫻井さんと菅沼孝三さんにリズム隊をお願いして、ギタリストがドンドン替わっていき、ロックの古今の名曲を演奏していくという企画だった。
孝三さんはよく「マーシャル10人組み手」なんておっしゃっていた。
私がすべての台本を書き、櫻井さんが弾くベース・パートの採譜まで担当した。
このイベントは前年にもジム・マーシャルを招聘して開催しており、櫻井さんと孝三さんには2回続けてご出演頂いた。
両方のコンサートに出演したギタリストの中には矢堀孝一さんがいらしゃって、当時孝三さんと水野正敏さんと組んでいた「Fragile(フラジャイル)」というトリオの曲を演奏した。
それからしばらくすると、櫻井さんが矢堀さんと孝三さんを迎えて自分のトリオとして活動され始めた。
櫻井さんとFragileのメンバー2人の混成チームゆえ「櫻ジャイル」なんて呼ばれていたっけ。
2回の「マーシャル祭り」がキッカケとなってそのトリオが生まれたのが私はとてもうれしかった。
今は無き六本木のスイート・ベイジルでのライブにお邪魔した時、この「Wonderkand in the Sky」を演奏していたことはココに書くまでもなかろう。
とても懐かしい。私の勝手な感動と思い出で第1部が幕を下ろした。
コリャ第2部も楽しみだワイ!<後編>につづく