Marshallの新製品三部作<作品3>~OVERDRIVEペダル・シリーズ
今回のNAMMで発表したMarshallの新商品群のシンガリはペダル。
つい先日「Guv'nor」や「BLUES MASTER」等のビンテージ・ペダルを復刻リリースしたばかりだが、早くも新企画の歪み系ペダルが登場した。
わかりやすく言えば「コレを使えば〇〇の音が出ます!」というヤツ。
今ではデジタル技術を使った「音のソックリさん」の存在が当たり前になってしまったけど、コレはモノが違う。
何しろ本家自身が父祖伝来のサウンドを再現しているのだから…血脈(けちみゃく)がつながっているのだ。
タイプは1959、JVM、JCM800、JCM900、DSLの5つ。
まず、見た目がいいじゃないか。
Marshallのシンボル・カラーである「金と黒」のコントラスト。
ロンドンの街を歩いていると、パブの看板だけでなくいたるところでこの金と黒のコーディネーションに出くわす。
例えばこの「リージェント・パーク」の門柱。
「ERII」というのはエリザベス女王のこと。
これは「レインボウ・シアター」だった建物の表札。
今は「アサヒビール」になっちゃったけどハマースミスにある「FLULER'S」の工場の看板。
コレは「セント・トーマス病院」の外壁に取り付けられている「狂牛病の犠牲者」の追悼プラーク。
ね~、金と黒ばっかり。
この2色の組み合わせは一種の「ロンドン・カラー」と言えるのではなからろうか?
ジムはまさにこのロンドン・カラーを自分の商品に適用した…と思うのだ。
「このことをジムが元気な時にに直接確認すればヨカッタ!」と今頃後悔している…機会はいくらでもあったのにナァ。
それで今回の5種類のペダルが徹底して金と黒。
特に目を惹くのがスイッチ周辺のフレット・クロスのパターンを模したデザイン。
コレ、パッと見た時にはどれも同じに見えるかも知れないけど、全部違うんだぜ。
それと、ひとつあたりの重量が740gもある。
「も」というのは、以前復刻リリースしたガタイの大きなビンテージ・ペダルより重いのです。
こっちは715g。
わかりにくい?
じゃ夏目漱石でやってみるか?
新潮文庫の『吾輩は猫である』、『坊ちゃん』、『こころ』、『それから』の重量を合計すると755g。
今度のペダルはそれぐらい重い。
エ?余計わからなくなったって?じゃ、吉村先生の本でやってみる?…いいか。
熱心な研究家に言わせると、こういうペダルなるモノも重量が大切で、やはり良い音を出すペダルは大抵重いそうだ。
「軽薄短小」が優先される今の世の中、小さくないわ、重いわで、マーガレット・サッチャーが聞いたら目を三角にして怒り出しそうなペダルのラインナップ。
でも、Marshallは「良い音」を最優先したというワケさ。
ここまでは「ヨシ」と…。
では、Marshallの新しい歪み系のペダルがどんなもんか順に見てみよう!
はじめに言っておきますが、この類の商品は対象に定めたモデルのサウンドにどれだけ近いか?ということが評価の最大のポイント。
だから「コレを使えば〇〇の音が出ます!」というわかりきったことを述べるのが一番良いワケだけど、そればかりではオモシロくもナンともないし、紹介する意味がない。
それゆえ、以下ではそうした惹句を一切省いて書いたことを予めご了承願いたい。
代りにそれぞれの商品のデモンストレーション・ビデオをリンクしておいたので、結果がどうあるかはそれぞれのビデオを参考にしてください。
では、まずは「1959」から。
あ、肝心なことを言うの忘れていた。
以下の商品はすべてアナログの回路を搭載しています。ノー・デジタル!
アナログバンザイ!
1959 PEDAL
コントロールは…
HIGH TREBLE
NORMAL
TONE
VOLUME
の4つ。
「HIGH TREBLE」と「NORMAL」というのは「1959」のコントロールと全く同じと考えてよいそうだ。
つまり、インプットをジャンプした状態の「1959」の「VOLUME I」と「VOLUME II」をイメージして欲しい。
そのミックス具合で音のキャラクターをキメるというワケ。
コレは使いやすいし、とてもいいアイデアだと思う。
その後に「TONE」が付いているところがミソ。
構造もシンプル。
余計なモノがついていないのがうれしい。
電池稼働もOK。
スティーブのデモンストレーションはコチラ。
JVM PEDAL
コントロールは…
VOLUME
TONE
GATE
GAIN
の4つ。
コレの最大の特徴は「GATE」。
要するにノイズ・ゲートが搭載されているのだ。
JVMの大ゲインにどうしても伴ってしまうノイズをコレで完全ブロックすることができるスグレモノ。
上面以外は1959 PEDALと同じ。
もちろん「1959」と同じく電池での使用も可能。
シリーズを通じての共通仕様なので後続のモデルではこの辺りを省略する。
デモ・ビデオをどうぞ。
JCM900 PEDAL
コントロールは…
GAIN
CONTOUR
TONE
VOLUME
の4つ。
このペダルはMarshallのお家芸である「CONTOUR」コントロールが付いているのが大きな特徴だろう。
「contour」は「輪郭」とう意味。
「コンター」という表記を見かけることがあるが、ま、片カナで書く時には「コンツァー」だろうナァ。
Marshallが昔、中音域の調整を一手にこの「CONTOUR」に任せて劇的に音を変化させることを思いついたのは、コントロール・パネルの面積を節約するためだった。
結果、そこらのEQとはまたひと味違った音作りを可能にしたのね。
コンツァーすげえや!…なんちゃって。
JCM900 PEDALのデモンストレーション・ビデオ。
JCM800 PEDAL
コントロールは…
GAIN
SENSITIVITY
TONE
VOLUME
の4つ。
ココで気になってくるのは当然左から2番目の「SENSITIVITY」でしょう。
コレはオリジナルの「2203」についている「HIGH」と「LOW」のインプットの音質のミックス具合を可変的に調整できるようにしたイメージ。
要するに「SENSITIVITY」を右に振り切れば「HIGH」にインプットしたことになり、その反対は「LOW」にインプットしたと思いネェ。
ココで「2203 MODIFIED」の時に「2203はLOWにインプットしている人も多い」と言ったのが生きてくるワケだ。
簡単に言うと1959をジャンプした時と同じだね。
デモンストレーション・ビデオはコチラ。
DSL PEDAL
最後は「DSL」。
コントロールは…
GAIN
DEEP
TONE
VOLUME
と来たもんだ。
低音域を調整する機能が「DEEP」。
「JCM2000 DSL」に「DEEP」スイッチというのがあったでしょう。
アレはオン/オフの選択だけだった。
海外のギタリストなんかはみんなオンにしていたようだよ。
このペダルの場合は「DEEP」の効果を調整できるというディープ好きにはうれしい設計。
スティーブがビデオの中でその辺りを実演してくれています。
以上。
今回Marshallは「STUDIO 900」、「1959&2203 MODIFIED」、「OVERDRIVE PEDAL」と3種類の新しい商品を発表したが、うれしいね~、デジタル技術に関連している商品がひとつもないよ!
「やっぱりギターはアナログで弾くべし!」と啓蒙的な立場に立ったのか、「どうオレたちはアナログよ!」と覚悟を決めて開き直ったのかどちらかは定かではない。
正直その両方なのではなかろうか?
ギターを手に取った時からモデリング・アンプなんてモノが傍らにある若い人たちには是非こういう商品を試してもらいたいと思う。
もっともそういう若い人たちはコレを読むことはないだろうけどよ。
そこが問題だ。
とにかくよくやったMarshall!
