2023 春の夢美月~Strange,Beautiful and Loudの巻
Marshallの位置を入れ替えて…と。『2023 春の夢美月』の後半はStrange,Beautiful and Loud(以下「SBL」)が登場した。 ステージに上がった3人。
まるでリハーサルをはじめるかのようにごく自然にフリーフォームで音を出し始めた。ナンカ3人ともうれしそうだな~。
それもそのはず…
SBLの3人が東京で音を出すのは2019年9月以来のこと。冒頭で'はらやん'が触れた通り、3年7ヶ月ぶりのことなのだ!ブルージーなインプロヴィゼーションからジミ・ヘンドリックスの「Third Stone from the Sun」風のヴォイシングを奏でる三宅さん。
「Strange,Beautifil and Loud」はその「Third Stone form the Sun」の歌詞の「Strange beautiful grass of green」という部分にインスパイアされて付けられたバンド名なんだよ。
カウントに続いて金光さんのスネア6発!
1曲目の「if」に突入した!
三宅庸介河野充生金光健司 今日の三宅さんが鳴らすMarshallは…
1959HWと1960AX。
久々に目にしたLCフレット…やっぱりMarshallは美しい!インプットは「High」の「1」。
PRESENCE=0
BASS=4
MIDDLE=6
TREBLE=2
VOLUME1=10
VOLUME2=6
つまりボリュームはフル。
足元のようす。
右下の緑のペダルは東京初公開。
三宅さんのリクエストに沿って作られた歪み系のカスタム・エフェクター。
アミュレット代わりのハスの花は相変わらずだ。
金光さんはNATAL。ブビンガの12"、16"、22"。
バスドラムのサウンドのナント気持ちのいいことよ!
我ながらホレボレするわい。
三宅さんとは年も近く、音楽の趣味も近いこともあって、お互いに思い出しては電話をかけて長話しをしているので、例え4年近くぶりに顔を合わせてもそれほど「久しぶり!」という感じがしなかった。
ところが、「if」が始まった途端、「久しぶり感」と「懐かしさ」が予想をはるかに超えるパワーで押し寄せて来てた!
少々ホロっと来てしまって切っていて困ったわ!ノッケから相変わらずの激演。
髪を短くしたぐらいで、三宅さんはナニひとつ変わっていなかった!
3人が3人とも「水を得た魚」のようで、まさにみずみずしい!。
演っている音楽は重々しいことこの上ないんだけどね。2曲目は「bloom」。
ピックを口にくわえ、静かにテーマをツマ弾く三宅さん。アンサンブルとなり、金光さんのスティックが鮮やかにNATALの上を滑って行く。三宅さんならではの独特なメロディを持つダークなワルツ。
このメロディを2人でハモって聴かせてくれたいつかの田川ヒロアキさんとの共演が今でも印象に残っている。
河野さんのソロ。ココは曲調に合わせて静謐に弾き切った。ただいま「静かゾーン」。
三宅さんも今にも消え入りそうなサウンドでストーリーを編み続ける。
どんなに微細なサウンドでもキチンと音が抜けて来るのがMarshallクリーンの魅力のひとつ。イントロのハデなドラミングとは打って変わったこうしたナイーヴな演奏も金光さんの得意とするところ。そして、一気に曲はクライマックスに上り詰める。
しかし、ナンだね。
三宅さんの音楽に初めて接してからカレコレ15年近くなるのかな?
比較的色んな音楽を聴いているつもりの私でも最初はビックリしたものですよ。
何を演っているのかサッパリわからなかったからね。
それが何度か回数を重ねて自家薬籠中のモノになってくると、全然ポップなんだよね~。
そして、ゼンゼン飽きない。
コレは「ファスト・フードと新島のクサヤの違い」みたいなもんでしてね。
「ファミレスのメニューと父祖伝来のヌカ床で付けたキュウリ」の古漬けの違いと言ってもいいでしょう。
前半の梵天も同じ。
そうした流行りや手軽さとは無関係の音楽が時を経るごとに減っていっているのは誠に悔しい限り。
コレは音楽を聴く方の責任ですからね。
聴く方のレベルが下がれば、自然と世に出て来る音楽のレベルが下がるというモノだ。 「こんばんは。久しぶり~。
今日はCharlieに誘ってもらって久しぶりの東京なんですけど、来てくれてありがとう」ココでツラっとメンバー紹介。
「音が大きいと思いますけど、最後までよろしくお願いします」
そうなの。
事前に何度か三宅さんと「この日のMarshallをどうするか」と電話で話し合って来たのね。
以前はJVM210Hと1960BVをレギュラーで使ってもらっていたんだけど、前回最後に使った1959HWをまた使おう!ということになった。
三宅さんは1959の子供みたいなものだから。
ただ、音量は大丈夫なのか…?。
許容音量の問題がいささか心配だったが、お店の方にも快く受け入れて頂き、ナンのことはない。結局フルテン。
私はスピーカーと同じ耳の高さで写真を撮るので本番中は耳栓をさせてもらったが、リハーサルの様子では心配したほどの音量ではなかったナ。
ゲイリー・ムーアじゃないけど、ヘタをするとドラムスの音が聴こえなくなるのではないか?というのは杞憂だった。
イヤイヤそれよりも、この音量、この1959の音質でギターを弾ける若いロック・ギタリストって今日本に果たしているのかな?
そっちの方がよっぽど心配だ。
耳にナニか突っ込んでピコピコ音を聞きながらステージに上がるなんてのはロックじゃないよ!
あ、私も耳栓してるんだった!失礼。
無口なMCの後はSBLのキラー・チューンのひとつ「Stratify」をプレイ。
SBLのファースト・アルバム『Lotus and Visceral Songs』のオープナー。 5/4拍子のヘヴィ・チューンだ。 この河野さんのベース!
以前、伊藤広規さんのCDのライナー・ノーツに「いいバンドにはいいベーシストがいる」と書かせてもらったことがあったが、絶対間違いじゃないな。
簡単に言って「いいベーシスト」ってどういう人かと言うと、「ベース・ラインだけ聴いていても楽しい」というベースを弾く人のことね。
河野さんがそれだ。コレはドラマーも同じ。
特にジャズ・ドラマーなんかは顕著で、すごいドラマーになると「♪チンチキチンチキ」というトップ・シンバル1枚の音だけズッと聴いていられる。
アート・テイラーなんかタマらんよ。
金光さんが叩くシンバルの8分音符も同じ。
何とも言えないノリが気持ちいいんだよね。
コレがMoonshineやTroubled Wingsなんかの時とは全く異なる味わいなんだよね。
同じ人が打ち出す8分音符なのに違う…不思議なものである。そんな2人が送り出して来るリズムに乗ってのソロ。
そりゃ密度が濃くなって当たり前なのだ。フォクシーなフィードバックから「murt 'n akush 」。この曲の初演は覚えているナァ。
「おお!カッコいい!」と感動した割にはタイトルの綴りがいつまでたっても覚えられない。
「マラケシュ」といえば、私の中ではコレか、アルフレッド・ヒッチコックの『知りすぎていた男(The Man Who Knew Too Much)』。
最近「ケ・セラ・セラ」とかいう曲を演っている若い人がいるようだが、この映画を観たのだろうか?
ドリス・デイのファンなのだろうか?
もしそうでなければ、恥を知った方がいい。
その後、この曲は私が東京キネマ倶楽部で撮影した写真をジャケットに使って頂いたSBLのセカンド・アルバム『Orchstral Supreme』に収録された。
三宅さんは私が撮るライブ写真の最大の理解者でもあるのだ。コレも5/4拍子のヘヴィなナンバーなのだが、変拍子っ気を全く感じさせない。
いわゆる「意味のある変拍子」。河野さんがヒザを曲げて身体を上下にゆするこのアクションはノッてる証拠。金光さんも絶好調。
今回のライブで一番楽しそうに、そしてうれしそうに演奏していたのは金光さんだったナ。
そりゃ、こういう他に2つとない音楽を演奏するのは、楽しくもあり、誇りでもあるでしょうよ。
昔、スティーヴ・ガッドが「シナトラのバックのビッグ・バンドでドラムスをプレイするのが夢」というのと同じ。ますます熱のこもるギター・ソロ。
かつて三宅さん自身がおっしゃていた「薄皮を剥いで身を削っていくような演奏」だ。河野さんのベースのアルペジオのバッキングがカッコいい!
ま、バンド・メンバーが3人しかいないので当たり前なんだけど、低音が変わるだけでバンドが出す音の表情というのはガラリと変わるもんだよナァ。テンションを持続したままリズムはワルツに替わり、三宅さんのソロで曲は終わる。
もう剥ぐ皮が亡くなってしまったのでは?という凄まじさ。すぐに次の曲に移る。
♪ギュワワワワワ~ギュイーン、ギュイーン…と、陳腐な表記しかできない自分を情けなく思うが、このワーミー・バーでフィードバック音を激しく上下させるプレイを文字で表現しようとするとどうしてもこうなってしまう。
要するに文字では書き表しようがないサウンドということよ!曲は以前もよくショウの最後に演奏していた「virtue」。コレもハードなワルツ。
中間部からヘヴィネスが大幅に加増されて…いよいよ三宅さんが「ギターの鬼神」と化す!
その三宅さんのプレイに呼応する…2人のパフォーマンスも「鬼」クラスだ!河野さんのソロ。
ナチュラルなトーンでジックリと舞い上がって行く。そして、ソロが三宅さんにリレーされる。
もはや薄皮だけでなく肉までそぎ落とすかのようなプレイ。
ギタリストの中落ちだ!
当然、お客さん全員の目が三宅さんに釘付けとなる。
Marshall 1959の轟音を得ていつにも増して激しい演奏なのだ。金光さんがエンディングで感極まって立ち上がってしまう!締めくくりも極度に熱のこもった一発となった。演奏を終えてドラム席を離れた金光さん。
お疲れさまでした…と思ったら?ナニやらSBLの家族会議が始まった。
時計を指さす金光さん。
コレはもう完全に持ち時間オーバーの図式ですな。
さてどうするSBL!?三宅さんが家長として声明を発表。
「どうもありがとう。
演りすぎてしまって時間が……あとチョットいい?
もう1曲演っても大丈夫ですか?」
お店と主催者からグリーン・ライトが出てもう1曲演奏することに…。
お客さんは拍手喝采!曲は三宅さんの愛奏曲「petal」。
ああ、コレだ~!
このアルペジオ!
最後の最後まで真剣勝負の3人!
恐らくは令文さん亡き後のこの国において、「MarshallをMarshallらしい爆音で鳴らして自分の作った音楽を奏でている人」といえば、間違いなく三宅さんは最高峰の1人であろう。
この三宅さんが鳴らす1959サウンドをゼヒ経験して頂きたいと思う。
今度チャンスが訪れる時には事前にSNSで告知しましょうかね?…「三宅さんが1959を弾きますよ!」って。
そういえば、思い出した!
10年以上前、「1959のプラグイン・ソフト」なるモノが発売になった時のこと。
私はそういうモノに滅法疎くて、ちょうど一緒にいた現在Geordieで活躍しているベテランのギタリストにこう尋ねた。
「コレは何をするためのモノなの?」
するとそのギタリストはこう言った…「デカい音でギターが弾けないヤツが使うモノだよ」。
三宅さんの演奏を久しぶりに目の前で見て、このことを思い出してしまった。
いいですか?…三宅さんの大爆音がおかしいのでは決してないからね。
おかしいのは世の中の方で、コレが本来のロック・ギターの基準でありスタートなんですよ!今回はこれにて終了。最後にもう一度メンバーを紹介して招聘してくれた梵天のCharlieに感謝の言葉を贈った。
3年以上部ブランクを全く感じさせない素晴らしい演奏だった。最後に'はらやん'が締めのご挨拶。
「Strange,Beautiful and Loudに大きな拍手を!素晴らしかったです。
そして、梵天の皆様もステージへどうぞ!盛大な拍手を。
ありがとうございました。
集合写真を撮りま~す!」パチリ。
お疲れさまでした~!
コレで久しぶりのSBLの東京での演奏の模様を半永久的に残すことができた。
さもなければ、「ハイ、久ぶりにライブを演りました」だけで終わっちゃうからね。
ああ、私っていい仕事してるナァ。
イヤ、それもこれもご協力頂ける皆さまのおかげです。
次回も楽しみだ!
今日は58年の歴史を持つ伝統の1959サウンドを聴かせてくれた三宅さん。
そのこだわりのサウンドづくりのノウハウを生かしてMarshallのデジタル・アンプ「CODE25」のデモ動画にも出演して頂いている。
オリジナル曲満載!
世界の音楽ファンに観てもらおうと英語字幕まで入れてみた。
未見の方は是非ご覧あれ!
(一部敬称略 2023年4月15日 新宿Crawduddy Clubにて撮影)
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イギリス南西部のコーニッシュ出身のキング・クリーチャー。
本場のブリティッシュ・ハードロックを存分にお楽しみあれ!
<Desolation>
<Captives>
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