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2020年8月 5日 (水)

【イギリス-ロック名所めぐり】vol. 51 ~変わりゆくロンドン<その2>ソーホーあたり

 

昨年、ロンドンの街を歩いていてやたらと目についたのが工事現場。
も~、アッチコッチで立て直しの工事をやっていた。
変わりゆく~!

10古い建物を復元するワケでもなかろう。
きっと従前とはガラリと変わってモダンなビルが立ち、味も素っ気もない東京の街のように近づいていくのだろうか?
そういうことを考えると「Listed Building」という歴史的な建物の保存義務を規定した条例は実に意義深いことだと思う。
しかし、いくら古いモノを大切にすると言われているイギリス人でも上下水道や冷暖房の効率化、建物自体の利便性を考慮すれば近代的な建物の方がいいにキマってるわな。
大分前にMarshallの友達が家を買って、私を招待してくれたことがあった。
彼の家は、伝統的なイギリスの建造物に似せたレンガづくりの重厚な外観の集合住宅で、中は最新の設備が備え付けられたモダンな仕様になっていた。
そこで、私は彼に尋ねた。
「こういうモダンな住まいと歴史的な家とでは、どちらが人気があるの?」と。
彼の答えは…庭付きのクラシックな家に住むことはひとつのステイタスだから、できれば築100年、200年の家に住みたいとみんな思っている。
若い人ほどそういう傾向があるとも言った。
ところが、リフォームに莫大な費用がかかることに加え、いくら修繕を加えても次から次へと設備の不都合が出て来て、経済的に大変な負担を背負い込むことが少なくなく、敬遠せざるを得ないという。
何せそれまでテムズ川にタレ流していた下水を下流に流す工事に着手したのが1855年、すなわち165年も前のこと。
その下水道を今でもそのまま使っているとは思わないが、全般的にかなり老朽化が進んでいることは間違いないだろう。20しかしコレ、どの現場もオモシロイの。
自立できないワケではないんだろうけど、ピッタリと棟続きで建てちゃうもんだから、歯抜けになると心もとないのか、こうして支保工を入れて隣接の構造物の倒壊を防いでいる。
見事な「ご近所付き合い」だ。
この下は工事をしているワケではないんだろうけど。
30vココは18年前に初めて来た時から変わらない名門ジャズ・クラブ「Ronnie Scott's」。

40でも高齢化が進んで久しいジャズ界にあっては、出演者の面々は相当変化があってもおかしくない…と、去年の6月のスケジュールを見てみると、お~、シェップが出てる!
Archie Sheppは観たいな~。
Airto MoreiraとFlora Purim夫妻もご健在のようだ。
その昔、Retuen Foreverが来日した時、記者会見でブラジル人のAirto Moreira(アイアート・モレイラ)がファースト・ネームの読み方を訊かれて無言でこう答えた。
彼は慣れた手つきで自分の目、耳、そしてつま先を指した。
「Eye, ear toe」ということ。
ウマい!
きっと年がら年中尋ねられていたんだろうね。

11_img_9759_2 コレはウチにある最も古いRonnie Scott's の写真。
2009年に撮ったもの。
ゼンゼン今と変わらない感じ。

11_img_0036ハハハ、上の階では改装工事をしてら。

11_img_0037「Ronnie Scott」というと、今では結果的にライブハウスのオヤジ…ということになるが、元々は1950年代の後半に活動したジャズ・サキソフォニスト。
イギリスのテナーの巨匠、Tubby Hayesと組んで『The Couriers of Jazz』なんてコンボをやっていた。
そして、1959年に「Ronnie Scott's」を開店した。
確か最初は今とは違う場所にあったんじゃないかな?
Tubby Hayesはカッコいいよ~。
Alan Holdsworthと演っていたGordon BeckなんかはTubbyのコンボの出身だ。
ちなみに「courier」というのは本来「案内人」とか「添乗員」とかいう意味だけど、今では「宅急便」という意味でこの単語を使っている。
43cdこの時はロニー・スコッツを借り切ってのClass5の発表会だった。
私は期せずしてロニー・スコッツに入れるのがうれしくてね~。
ロンドンに行くたびに店の前で出演者を確認するんだけど、観たいアーティストが出演していた試しがなくて、それより以前にロニー・スコッツには入ったことがなかったのだ。
 
このClass5、やっぱりいいアンプでサ。
チョット前に発見したんだけど、フルアコをつないで歪まない程度にボリュームを上げて弾くと、もうタマらん!
もう「ベルベット・サウンド」っての?
「ビロード」のような音?
日暮里に行ってもなかなかコレほど上質なベルベットを見つけるのはムズかしい。
実際、全国的に有名な日暮里繊維街でもベルベットだのビロードってあんまり沢山扱ってないんだよね。
ちなみにジーパンのEDWINは日暮里の出身です。

で、このClass5、ギターのクォリティが2ランク上がったかのように鳴らしてくれる。
やっぱりギターの音はアンプだね。
そして、真空管だよ。
デジタル技術の隆盛でギター・アンプの勢力図がおかしなことになって久しいが、やっぱりね、いいモノは変わりゆかないよ。
最後まで残る。
 

C5 
この時、我々Marshallチームは工場から50人乗りぐらいの大型バスでロンドンに向かった。
そんな大きなバスを店の前につけることはできないので、最寄りの大通りであるシャフツベリー・アベニューに停めざるを得ない。
「大通り」と言ってもせまいロンドンの中心地だからして車線は2つしかない。
しかも世界の演劇の中心地でもある観光のメッカだからしてビジターがウジャウジャだ。
そんなところに大型車両を停めたりしたら大渋滞を誘発してしまうので、条例か何かで「停車は上限2分」と決められているのだそうだ。
30人はバスに乗っていたであろうか?
それだけの人数をたった2分でバスから下車させられるワケない。
この時の運転手さんがスゴかった。
バスが停車した途端、運転席から後ろを振り向いて「Get off!  Het Off!!  Hurry, hurry, hurry! Hurry up!! Get O~~ff!  ゲ~ットオ~フ!!」と絶叫し出したのだ。
もう形相が恐ろしくもあり、可笑しくもあり…とにかく大絶叫!
もちろん2分で全員がバスから出て来れるワケもなく、10分ぐらいは停車していたかな?
幸い、違反切符は切られていないようだった。Img_0045店の中はこんな感じ。

11_img_0042この時はJoe Bonamassaがヘッドライナーを務めた。

11_img_0078お土産で傘を買ったんだけどアレ、どうしたかナァ?

45真向いにあるビルにブルー・プラークが付いている。50v1764~65年までモーツァルトはココに住んでいたっていうんだよね。
ヴォルフガングが8歳の時のこと。
前年の4月にツアーに出たモーツァルト一家、1764年の4月にロンドンに到着するやいなやバッキンガム宮殿で時の国王ジョージ3世に謁見。
最初はココではなく、トラファルガー広場の近くの床屋に2階に部屋を借りていた。
ロンドンはすっかりモーツァルト・フィーバー(←なつかしい言葉!)!
そして、コンサートをすればヴォルフガングは3時間で100ギニーを稼ぎ出したという。
コレ、おとっつぁんのレオポルドの8年分の収入に等しい額だったという。
オヤジ、ウハウハだわな。
その後、オヤジが身体を悪くしてチェルシーに移動。
回復したところで、ココに移り住んだ。
ヴォルフィーはロンドンにいる間に『交響曲第1番』の他、43の『ロンドン小曲集』等を作ったとされている。
60sロニー・スコッツからすぐ近くの「Greek Street(グリーク・ストリート)」にある「The Coach and Horses(コーチ&ホーセズ)」というパブ。
「ウエスト・エンドで最も有名なパブ」と自ら謳っている。
18世紀からこの場所にパブがあって、今のこのビルは19世紀に建てられ「Grade II」に指定されている。

11_img_9770以前にも何度もこの前を通っていて珍しくもナントもないんだけど、そこに掲げられていた看板がフト目に入った。

70コレ。

80v「アサヒ」というのは「ウンコ」でおなじみの「アサヒビール」のことね。11_2ab「STOP FULLERS」の「FULLERS」とは…コレ。

11_img_1787イギリスに来ると恐らく最初に覚えるであろうエールの銘柄のひとつ「London Pride」を醸造している会社。
 

Lp
コレは以前ハマースミスのホテルを定宿にしている時、早朝に散歩をしていて出くわしたフラーズの醸造所。
11_img_1781コレが滅法クサイ。
ホップを蒸すんだか、煮るんだかする時のニオイなのだそうだ。
ホテルに帰って受付の若い女性に「Fuller'sの醸造所に行って来た」と伝え、「ナニあれ?激クサじゃん!」と言おうとすると彼女はすかさず、「アラ!とてもいい香りだったでしょ?あの香りはハマースミスに住んでいる私たちの自慢なのよ!」と言われ、とても「クサイ」だなんて言えなくなってしまった。
「クサイ」と言うか、とにかく人生で一度も経験したことがない得体の知れないニオイなのね。
ま、クサイわ。

11_img_1786この1845年創業の由緒あるエールのブランドが変わっちゃったのよ~!
2019年、アサヒビールがフラーズを買収しちゃった。
そこでさっきの看板をもう1回見てみる。

11_img_1785「STOP FULLERS」というのは「フラーズを止めて!」ということ。
フラーズはこの場所の借地権保有者で、「もう借地契約を更新しない」とパブの経営者を脅かしているというワケ。
それで、フラーズを買収したアサヒビールに「フラーズの愚行」を止めさせてこの歴史あるパブを助けて!…と訴えているワケ。
The Coarch and Horsesはヴィーガン向けのパブとして、またコックニー・スタイルのパブをリバイバルさせた店としてそれなりの成功を収めている。

80vそして、このパブの内装が『Jeffery Bernard is Unwell』という芝居のセットにそのまま再現されたということで有名なのだそうだ。
この芝居、オリジナル・キャストのひとりはピーター・オトゥールだったという。
『アラビアのロレンス』でT.E.ロレンスを演じた人ね。
イギリスを代表する名優。
Jbu『ロレンス』もいいんだけど、私はこの『マーフィの戦い(Murphy's War)』という作品が大好きだった。
もう小学校の時から観てないけど…。
11_2murphyその後、どうなったか確かなことはわからないが、フラーズのウェブサイトを見るとこのパブが載っているので、恐らくは元の鞘に収まって、変わりゆかなかったのだろう。
めでたし、めでたし。
今度ソーホーに行ったらエールを飲みに行ってみよう。

11_img_9769その近くで出くわした黒人のストリート・ミュージシャン。
もうホンモノのブルースのムード満点!
カッコいい!90ところが…メッチャ、ギターヘタでやがんの!
何しろ抑えたコードの音のいくつか出てないの。
ブチブチブチ!みたいな。

100vまた「Wardour Street(ウォードー・ストリート)」。
この辺りにイタリア料理の惣菜屋があって一度買って食べてみたことがあったが、美味しかったな。
ケーキもスゴクおいしかった。

105せっかくすぐ近くまで来たので一応様子を見に来た。110v_2元Marqueeの2号店。
ココは何の変りもなし。
ヨカッタ。

120「Brewer Street(ブリュワー・ストリート)」はウォード―・ストリートから「Glasshouse Street(グラスハウス・ストリート)」までを結ぶソーホー地区を象徴する通りのひとつ。
「Brewer」なんて、昔ココに醸造所でもあったのだろうか?
調べたけどわからなかった。
色んな店が立ち並ぶが、一番目を惹くのは風俗方面の店舗だろう。
近くにはドアの入り口に露出度の高い服を身にまとったお姉さんが立っていて、「チョイとそこ行くお兄さん」と声をかけてくれる店もチラホラ。
かつて、その手の店の値段を現地の友人に尋ねたことがあるが、だいたい「座って30,000円」ぐらいの感覚ではないか?と言っていた。
コレはもう大分の話で、その頃は1ポンドが230円ぐらいだったので今では格段にお得になっているハズだ。350この緑色の本屋はチェーン店でこの辺りに何軒か店舗を構えている。
1階が新古本屋で、売れ残った新品の本を8~9割引きで販売している。
レジにいるのはいつも東欧系の人。
地下はポルノ・ショップ。
ま、地下の商品の売上げが屋台骨なんだろうな。
でも、うれしいことに1階は音楽や映画の本の在庫が充実していて、私も行く度にココを覗くのを楽しみにしている。
ロンドンにはそういう新古本屋がいくつかあって、すごくうらやましい。
オマケがゴチョゴチョ付いているThe Whoの本や色々な写真集、他にも辞書の類を結構買った。
それでも、私が知っているだけで、ここ数年の間にもう3、4店は廃業していて寂しい限りだ。
そういうところも「変わりゆく」なの。
この本屋の横の路地を抜けると…

360「Berwick Street(バーウィック・ストリート)」に入る。

365変わりゆく~!
ココはいつもこうしてチョットしたマーケットが立っている。
それは変わらないんだけど、左側の工事しているビルね。

370以前は中古レコード屋が何軒か入っていて、中を覗くのが楽しみだった。
いいモノはなかったけど、やっぱりうれしいじゃん?、ロンドンで中古レコードなんて。
400この写真の右側にあるビルぐらいだったのかナァ。
1階から5階ぐらいまで窓が開けっぱなしになっていて、中の様子が丸見えだったのね。
アレは何時ぐらいだったんだろう…調べてみよう。
ーーー間ーーー
よく知られている通り、イスラム教徒は1日に5回の礼拝の義務がある。
ファジュル(夜明け)、ズフル(正午過ぎ)、アスル(午後)、マグリブ(日没後)イシャー(夜)の5回。
だから、アレは「アスル」だったハズ。
ビルの中から数人の男性がゾロゾロっと通りに出て来て、マットを敷いてその上に座る。
何かの合図があったのだろうか、外のマットの上の人たちをはじめ、ビルの1階から5階の人たちまで全員が一斉に同じ方向を向いて一糸乱れぬ仕草で礼拝を始めたのだ。
アレは圧巻だった。
それを見て感動していたのは私だけだった。
ヒースロー空港には祈祷や礼拝のための部屋があるし、ニューヨークからロサンゼルスに向かった時には飛行機の中でそうした儀式を執り行う夫婦を見たこともある。
そんなシーンを日本で見た経験はない。
そういう時、日本ってのはホントに世界から遠いところにあるんだな~と思うワケ。

380この時、特に歌が聞こえてきた記憶はないが、いいんですよ…イスラム教の経典「コーラン」を歌うように読誦する「クルアーン」。
「微分音階」という半音を9つにまで細分して音程を取る超絶技巧がとにかくトリハダもの。
「クルアーン」とは「コーラン」のことね。
このCDはおススメです。

Photoこんな花屋のスタンドなんてのは雰囲気があっていいね。390どんな風に改装されるんだろう…変わりゆくな~。410バーウィック・ストリートをジャンジャン進むと出て来るのがこのピザ屋。
「JAZZ@PIZZA EXPRESS」という看板通り、地下がジャズのライブハウスになっている。
以前、元Soft MachineのJohn Etherridgeが出ていて、観れずに大変悔しい思いをした。
そして、ココで録音したライブ・アルバムがあるのを後から知って喜んでゲット。
期待して聴いてみたら大したことなくてエサ―リッジを見れなかった悔しさは消え失せた。

420階下から演奏している音が漏れ聞こえてくる。
日曜なのでマチネーがあるようだ。
おお~、メッチャうまいブルース・ギター!
誰かと思ってスケジュールを見てみると…Bernie Marsdenだった。

430vハイ、これで今来た道をもどる。
するとこういう景色になる。440例のコレね。

450cd_2ブリュワー通りに向かってドンドン戻る。

460「Reckless Records(レックレス・レコーズ)」は有名なレコード屋さん。
この辺りは以前まだもう少しレコード屋さんがあったんだけどな。
ArgentのCDを買った店はどこだったっけか?

470もう1軒。

480v「Sister Ray(シスター・レイ)」というお店。
ん?…この看板。
レコード盤のイラストかと思っていたら、コレ、それだけじゃなくて「Hit the mark」になっているんだ。
「標的に当たる」という意味。
つまり、「ウチの店なら探していたモノが見つかりますよ!」ということを表しているに違いない。

490何回か入ったことはあるけど、ナニか買ったことはないナァ。
実は今回、このお店の3階が大きく変わったのです。
それは…500vこんな感じ。510ココ、Marshall Recordsの新しい事務所なのだ!

7_mr

520vコレらはまだ引っ越し中の写真なんだけど、今はもうココで仕事をしている。

530vイヤ~、比較的ロンドンに来るたびに前を通りかかっていたおなじものビルに身内が引っ越して来るなんて実にうれしいナ。
次回ロンドンに行った時にお邪魔するのがすごく楽しみだ!
変わりゆくな~。

550<つづく> 
 
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