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2017年9月 8日 (金)

MMM…(ムムム…)

  
SEO対策のカケラも感じさせないこのタイトル!
一体どういうことかと先にタネを明かしておくと、この3つの「M」は…
  
MASHA…
20vMakabe…
30vMarshall…

Mar_logo  …の「M」。
そんだけ。
「住友」でも「ヘパリーゼ」でも何でもない。  
7月の末に「Polyphonics」なるMashaくんのトリオと、「Y.M.N」なる真壁くんのトリオのダブル・ヘッドライナーのライブがあったのだ。
今日はそのレポート。
シュレッド・マニアには「ムムム!」の企画なんじゃないの?

10マァ~、それにしてもこの人たち…ホントにギター好きだよね~。
そもそも名前からして気合いが入ってる。
「MASHA」はほとんど「Marshall」と同じだし、「マーシャルの壁」略して「マ壁」だし。
「もしこの世からギターが無くなったらどうする?」と訊かれると「すぐに死んでしまいます!」とか答えながらも、ま、死なないだろうな。
ギターの代わりに手芸でも料理でも、きっと代わりに熱中できるモノを探して来て、その道の達人になるに違いない。
私が夢中になってギターを練習していた時代と違って、学校や教材が普及してメソッドが確立された昨今、目も覚めるような速弾きをすることはまったく珍しいものではなくなってしまったのは「皮肉」としか言いようがないが、それでも、人並み外れた努力と時間を惜しまずには体得できない特殊技能が「シュレッディング」だ。
今の人たちが気の毒なのは、そうした高度な技術の習得がスタート・ラインで、勝負のしどころがその先にあるということだ。
「速弾き」ということだけでチヤホヤされる時代はとっくに終わっちゃったからね。
東大を意気揚々と卒業して財務省に入ったところまではいいけど、同期全員が東大を出ていたと言えばわかりやすいか?
で、勝負のしどころは何かというと、「いかに自分だけの魅力的な音楽を創作するか」という、いつの時代も音楽家につきまとう当たり前の話。
簡単に言えば「オリジナル曲の良し悪し」ということにならざるを得ない。
ロックの場合、器楽演奏の高い技術を習得するよりも、そっち方がはるかにムズカシイと思う。
で、それなりのアウトプットをするためには、その何倍ものインプットをしなければならない。
それには膨大な時間を要する。
要するに「仕込みの早さ」というヤツ。
だから、若い人たちにはイングヴェイだけじゃなくてクラシックから民族音楽まで色んな音楽を一刻も早く聴くことをススメている。
ま、大きなお世話なんだけど。
イヤね、若い感性と高い演奏技術を絡めたスリリングで独創的な音楽が聴きたいと思っているだけなのよ。
いくら「スタイル」とはいえ、メタルならメタル、J-POP系ならJ-POP系、ハッキリ言って皆さんどこへ行ってもみんな同じなんだもん!
  
さて、そんな状況を打破する志を持っていると私が信じている2人の若手ギタリストのイベントは『Technical Ecstasy』と名付けられた。
Black Sabbathか…。
持っていないのかと思い込み、さして好きでもないのに勘違いして同じのを2枚買ってしまったアルバム。
最近こういうのが多くなってきて困る。
「ジャケ買い」ではなくて「ボケ買い」だ。
ま、このケースは片方は紙ジャケということで自分を許す。
しかし…このジャケット、本当に色校をやったのかな?
プラケースの方は国内盤。紙ジャケはイギリス盤。
バージョンが異なるのではないかと思うほどの差がある。
デザインはいいよね。
Hipgnosisだから。
久しぶりに聴くとSabbathもなかなかいいもんだ…でもナンダ、これ?
国内盤とイギリス盤では音も全く違うじゃん?
普段はかなり古いジャズの音源なども耳にしているので、音質にはさほどこだわらない方なのだが、こりゃイギリス盤を聴いちゃった後は国内盤を聴けないね!
ジャケットには書いていないけど、イギリス盤の方はリマスターされてるのかな?…と思ってインナー・スリーヴを読もうとしたけど、老眼で小さい字が読めん!

1_img_0889MASHAくんと真壁くん(以下、「雄太」)はとても仲良し。
それを象徴しているかのように、ステージにはふたりのMarshallが仲良さそうにセットされた。
ギターまでチョコんと並んでカワイイな。

40MASHAくんはJCM800 2203と1960B。

50v足元のようす。
今日はMarshallの歪み系ペダル、BluesbreakerII(BB2)は入っていない。
ナゼならアンプが自分のMarshallだから。
アウェイで自分のアンプが使いえないときにMarshall感をアップさせる時にBB2を使うのだ。
60ご参考…コレは別の現場で使われていた実際のMASHAくんのBB2。

380 雄太くんも愛用の2555X Silver Jubileeのハーフ・スタック。

70vコチラは雄太くんの足元。
なんだかMASHAくんのとよく似てるな~。

80出番は雄太くんのY.M.Nが先行。
バンドのメンバーは真壁雄太がギター。
ベースがNOS、ドラムが弓田"Yumi"秀明という布陣だった。

90v1曲目は「Dog Star」という曲。
George Clinton…え、ジョージ・クリントン?じゃ、なんでオムツ付けて来ないの?

100v続いてはCharさんの「Rainbow Shoes」。

110v「昨日までTORNADO-GRENADOやってました!」
そう、行かれなかったんだけど、この前日がラスト・コンサートだったの。
「メンバーの中で誰よりも早くスタート・ダッシュを切りたいということで今日やっちゃいました!」
ホントに早いわ~…ってんで次はF1。こっちは「速い」ね。
T-SQUAREの「TRUTH」。
安藤さんって大学のクラブの先輩でね。
在学中にジャズ・ギターのコンテストに出たんだって。そしたら審査をした著名なジャズ評論家から「キミ、明日からプロで十分やっていけるよ」と評価された。
今と違って、当時はプロとアマの差がハッキリしていたからね。
安藤さんのストレート・アヘッドなジャズって聴いてみたいな。
そのプレイはJim Hallのようでもあり、Wes Montgomeryのようでもあったらしい。

120ここまでものスゴイ選曲でやってきたけど、次は雄太くんのオリジナル。
待ってました!
まずは「APOCALYPSE」。

130v今年1月に雄太くんの母校、尚美ミュージックカレッジで開催された「Marshallスクール」の時にも演奏した曲・
その時のレポートはコチラ
私、こういうお仕事お待ちしてます。

260v_2 これは「APOCALYPSE」を収録した雄太くんの2曲入りCD『MAKABERHYTHM』。
もちろんタイトルの「真壁リズム」は「マキャベリズム」に引っ掛けてある。
「マキャベリズム」とはイタリアの思想家、ニコロ・マキャベリが提唱した、「どんな手段や非道徳的な行為も、結果として国家の利益を増進させるのであれば許される」という考え方。
そこから、「単に目的達成のためには手段を選ばないやり方」を指す、いわゆる「権謀術数主義」というヤツ。
まさに今の日本の世情に警鐘を鳴らす社会的問題作ではないか!ん~、さすが真壁。
ジャケットを見よ!
コレは「丸に橘」か?
雄太くんはこの家紋でオリジナルのピックも作っていた。
で、ココで脱線。
「真壁」で脱線。

140cd「真壁」といえば誰が何と言おうと私はコレ。
1958年の黒澤明の『隠し砦の三悪人』。

150vも~、好きで好きで…。
初めて見たのは高校の時。
新小岩の第一劇場で、『用心棒』と『椿三十郎』と狂気の3本立てだった。
どういう順番で観たのかは覚えていないが、何しろ最後はもう尻が痛くて痛くて!
そりゃそうだ、3本合わせた上映時間は345分。すなわち6時間弱。
飛行機だったらロンドン・ヒースローまでの半分ぐらいまで行けちゃう。
でも、どれも面白かったナァ。
『用心棒』ももちろん最高なんだけど、この『隠し砦の三悪人』はもう日本映画のスケールを完全にはみ出して、超上質のハリウッド製アクション映画を軽く凌駕する面白さだった。
準主役の藤原釜足と千秋実が『スター・ウォーズ』のR2D2とC-3POのモデルになっていることはあまりにも有名だ。
その後、何度か映画館で観て、DVDが出たらすぐにゲットしたわ。
今でも時々観ているし、今日もこの後観ちゃうかも。

160これはロンドンのチャリングクロス・ロードにある新古書籍店で買った英語字幕入りの同作。
英語でのタイトルは『The Hidden Fortress』という。
コレ、円がすごく高い時に買ってね、600円とかそんなもんじゃなかったかな?でも形式がヨーロッパと日本では異なるので一般のテレビで見ることはできない。
他に『七人の侍』と『用心棒』を買った。
何でそんなものを買ったかというと、英語の勉強のため。
飛行機の中でやっていた英語字幕付きの日本映画を観ていて気がついた。
小津か寅さんだったと思う。
実は、海外の映画で英語の音声を聞き、そこに当てられた日本語の字幕を見て勉強するより、言葉と意味の分かる日本語を聞いて、それがどう英語に訳されるかを見た方がインプットの量がはるかに多いのだ。
もちろんリスニングの練習にはならないけどね。
ご存知の通り、日本語と英語は語順が全く違うし、日本語は著しく視認性に富んでいるため、字幕を一息に見て意味を取ることができる。平均的な人で1秒間に6文字は軽く読めるらしい。
すると、どういうことが起きるかというと、まず真っ先に日本語を読んでしまう。
それから英語を聞くため、英文の中の最後の方の単語を字幕の日本語に当てはめる作業に終始してしまう。
コレだと勉強にならないんだよね。
ナゼかというと英語では文章の一番キモとなる動詞が最初の方に来ちゃうもんだから、日本語を読んでいる間にその一番肝心な部分を聞き逃してしまうのが普通で、さして練習にはならないのだ。
また、ご存知の通り、字幕の文章は上記を根拠に文字数に厳格な制限があるため、訳された英語は、必然的に簡略で最も実用的な文章にしなければならないので、ネイティブたちが日常的に使う表現が多用される。
加えて、そのことによってや彼らの思考の筋道みたいなものが見えて来るのだ。
「あ、この日本語は英語でこう言えばいいのか!」と目からウロコが何枚も落ちる。
ネェ、ピート、いい考察でしょ?
…といいたいところだけど、全然やっとらんわ。
それより、一旦観始めると、何回観てもその面白すぎる内容に引き込まれてしまって英語の字幕なんか忘れちゃうのよ!

170さて、ナゼこれが雄太くんかというと、三船敏郎が演ずる主人公の名前が「真壁六郎太」というのだ。
だから新しいバンドが出来たら名前は「六郎太」にすればいいじゃん!って言ってやった。
真壁という姓は常陸国(今の茨城)は真壁郡に栄えた武家だったそうだ。
調べてみると、確かに家紋のひとつに「丸に橘」があった。
本当は映画の内容についてもっと書きたいところなのだが、これから観る人のためにガマンしとくね。
雄太くんにこの映画のことを教えてあげたところ、翌日すぐにTSUTAYAで借りて観たそうだ。
「メッチャ、おもしろかったです!もっと教えてください!」ってワザワザ電話してきたわ。180コレが真壁六郎太。

190そして、こっちが真壁雄太。
ソックリだな!

200vさて、曲はもうひとつ『MAKABERHYTHM』から「Exceed」。
コレも尚美さんの時に披露したインスト曲。
面白いのはね、こういうインスト曲を演ると、メインのメロディが歌のメロディになっていること。
ま、コレは当たり前の手法なんだけどね。
「ヘヴィ」だ、「メタル」だ、という言葉は世代を超えてつながっていても、今の若い人たちが作る曲に出て来るメロディって、70年代のハードロックで育った我々の世代の耳の中にはない旋律なんだよね。
我々の世代で言うと、どちらかと言えば「歌謡曲」の部類に入るメロディ。
良いとか悪いじゃないんですよ。時代はドンドン変わっていくから。
そういうタイプのメロディが歌の代わりにギターで奏でられると…チョット変な感じがするんだよな~。

210雄太くんが敬愛するPaul Gilbertの「Scarified」。
もうすぐMr.BIG来るね~。
Paulはナント1959を使う予定だよ。
どんなサウンドになるか楽しみだ!

220vそして最後はRUSHの「YYZ」にチャレンジ!
六郎太の底抜けに明るいステージはこれにてお開き。
 
真壁雄太の詳しい情報はコチラ⇒Twitter230続いてステージに上がったのはMashaくんのPoliphonics。

240vPolyphonicsもトリオ編成。
ギターはMASHA。
ベースはSilexの同僚、hibiki。そして、ドラムはFUMIYAという編成。

250MASHAくんの方は1曲目にAndy Timmonsの「Super '70s」。

260v続いては…やっぱりYngwieなのね!…「Blitzkrieg」
blitzkriegとは「電撃戦」という意味。
「blitz」で「電撃」なんだけど、イギリスで「The Blitz」ということになると意味が変わって来る。
1940年9月から1941年5月に渡って実行されたドイツ軍のロンドン大空襲のことだ。
映画『トミー』の冒頭のシーンね。
  
もう一回言っておきますが、Yngwie Malmsteenは「インギー」と呼ばれるのをイヤがっていました。
「オレの名前はイングヴェイだ。インギーとは呼ばないでくれ」…と私にハッキリ言っていた。
あ、私も「インギー、インギー」と呼んでいたワケではないですよ。そんな慇懃無礼なことはしません。
そもそも彼の音楽すら詳しくないし。
コレってもうMarshall Blogでもう何回書いたかな~。
それでもfacebookなんかで「インギー」って書かれていのを見ると、いかにMarshall Blogが読まれていないということがわかってとても悲しくなる。
青砥や寺田町あたりでイングヴェイとバッタリ行き会っても「インギー」って呼ばない方がいいですよ。

270vMASHAくんも2曲ほどオリジナル曲を披露した。
まずはLight Bringerの「It's Showdown」。
hibikiくんの曲。
Marshall GALAでも演奏してくれた曲。

280もう1曲は「What a Game!」。
こちらはMASHAくん作。

290v「次はムズかしい曲を演ります!」とMASHAくんが取り上げたのは「Hundreds of Thousands」。

300vまさに「数十万」の音符が会場を埋め尽くす!
Tony MacAlpineのナンバー。
以前、教則ビデオの仕事をしていた時ね~、この人のビデオってよく売れたんだよ~。

310Poliphonicの最後はRichie Kotzenの「Out Take」。
イヤ~、よく弾きましたな~。
MASHAくんのプレイは美しいよ。

320vさて、ノリにノッテるMASHAくんの本籍、Silex。
他のメタル・バンドとはチョット変わった色調でグングン人気をアップさせている。

330近頃セカンドCD『Everlasting Symphony』をリリースしたSilex。
間を空けずして新作をリリースした。
2016年のデビューと同時に発売され、大きな話題を呼んだ衝撃の第1弾シングル『Silent in Explosion』に最新のライブ・テイク2曲を加え全5曲入りのスペシャルエディションとしてよびがえったのだ!!
ノッてるわ~、Silex!

  
Silexの詳しい情報はコチラ⇒Silex official website

340cdしかし、真空管のギター・アンプの音ってのはやっぱりいいね。
2人とも愛用のMarshallで自由にのびのびと自分を表現する姿がとても頼もしかった。
なんかさ、「真空管が入ってる」ということで愛着も沸いてくるんだよね、不思議と。
「人間に近い」と言ったらもちろん言い過ぎなんだけど、音だけでなく、その存在があたたかい感じがする。
やっぱり人間の耳ってのはアナログだからね。
どうしたってアナログの音響機器の方がシックリくる。

2_img_0107「若いギタリスト」というと、問答無用で今流行のデジタル系アンプに喰いつきそうなイメージがあるけど、実は若い人って存外に従来型の真空管アンプを選んでくれる傾向があるんだよね。
今日の2人みたいなプレイをするギタリストはことさらその傾向が強い。
そして、そうした若いプレイヤーでも抜きんでた人たちはMarshallをチョイスするのだ。
  
またの機会を楽しみにしている。
次回は全曲オリジナルで…ね!

350v(一部敬称略 2017年7月31日 高円寺ショウボートにて撮影)