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2015年7月17日 (金)

ギター・テック・インタビュー:トレース(エアロスミス)

この仕事をしていると、海外のギター・テックと接するケースが度々出て来る。
来日、すなわち海外公演するような世界的なバンドについている連中だから、どんな仕事をしているのか当然気になる。
で、「他に誰の面倒をみてるの?」なんて話しをよくするんだけど、やっぱ世界はスゴイね。
ジェフ・ベックのテックのスティーブなんか、「ん~、ブライアン・メイとかブラーとか?」みたいな。オイオイ、軽く言うんでない。
かつてゲイリー・ムーアについていたグラハムも当たり前のようにすごいことを言っていた。忘れちゃったけど…とにかくスゴイいいヤツだったのは覚えている。
今日ここに登場するトレースも興味深いキャリアを誇るひとり。
エアロスミスのギター・テック、かつてはAC/DCやチープ・トリックとも仕事をしていたそうだ。
トレースのインタビューをお届けする。

Trace オクラホマのタルサ周辺が拠点なんだ。シカゴで育ったんだけど、80年代にはLAに移って20年ほど過ごした。自分でも楽器を演奏する一方、他のバンドの機材の面倒をみてかれこれ30年以上になるんだ。

僕はプレイヤーでもあり、テックでもやっている。いくつかのバンドでは両方を務めているんだよ。13年間にわたってメリッサ・エサリッジのショウ・バンドでテックを務め、キーボードとギターを弾いたよ。ものすごくバタバタした夜を過ごしたね。
ここ10年間で一緒に仕事をしたのは…

●エアロスミス:ジョー・ペリーのギター・テックを務めて7年経った。
●AC/DC:2015年のワールドツアーでスティービー・ヤングと仕事をした。AC/DCのツアーの仕事はこれが初めてなんだ。
●チープ・トリック:リック・ニールセンのギター・テック。普通のツアーだったけど、40本のギターの面倒をみなければならなかったよ。
●キース・アーバン:(訳者注:エ、この人ってニコール・キッドマンのダンナなの?!)
●コレクティブ・ソウル:過去10年くっついたり、離れたり…。いいバンドだね。
●グー・グー・ドールズ:テックとしてトラでツアーに参加したんだ。

ま、挙げ出したらキリがないね。本当に色々なタイプの音楽に携わってきたよ。

Marshall(以下M):はじめてマーシャルに接したのはいつですか?またどのバンド?
Trace(以下T):エ~、最初は僕が高校の時のバンドにさかのぼるかな。長い間お金をためてハーフ・スタックをゲットしたよ。
JCM800だったと思う。それがその時にもっともゲットするのにふさわしいモデルだったんだ。


M:今まで仕事をした中で最も爆音だった機材は?
T:よくぞ訊いてくれました。2か月前だったら「ジョー・ペリー」と答えていたな。ジョーの音は信じられないぐらいデカいんだ。
でもね、AC/DCの方がデカい。ウン、はるかにデカいな。耳の保護をしないままでアンプの前を通りすぎることができないんだ。痛いんだよ。
でもそれが彼らのサウンドなんだ。そして、メッチャ音がいい!


M:今まで仕事をしてきた中で最高と最低のギグはどれでした?
T:最高だったのはエアロスミスのジョー・ペリーとの最初のショウだね。十分な準備もリハーサルもなしにほとんどブッツケ本番だったんだ。
メチャクチャビビったよ。ジョーは要求がすごく多くてね、いつでも期待以上の仕事をしないとマズイことになるんだ。
でも僕は仕事をうまくこなした。そして、ジョーから仕事を頼まれ、後は現在に至るってとこ。
最初は一週間分の着替えだけをバッグに詰め込んで彼の所へ行ったんだ。彼との仕事はキツイと聞いていたので長いことは持たないと思ったんだけど、結局7年間もお世話になってるよ。

最低のギグか…。実際、心底ヒドイと思ったギグはないな。今まで一緒に付き合ったやつらでヒドイと思うヤツはいたよ、でもギグはいつもうまくいった。
僕は機材のバック・アップをいつも2セット確保しておくんだ。1セットじゃダメだ。2セット必ず用意する。「準備」こそ成功のカギなんだ。そうすればより楽しく、ストレスの少ない夜が確実となるんだ。


M:お気に入りのマーシャルのヘッドは?
T:完璧ではないんだけど、ジョーが持っている1969年製のプレキシかな。もうヤケクソにいい音なんだ!そういうことから言えば、プレキシ時代のヘッドは何でも好きかな。


M:最近の仕事でマーシャルに関するおもしろい話しは何かある?
T:AC/DCのツアーでの呆れるほど大量のマーシャルだね。ツアーでは60台のヘッドを運んで歩くんだ。まったくスゴイよ!しかも、そのヘッド一台一台にストーリーがあるんだ。


M:仕事関係で最も仲のいい人物は誰?
T:僕はAC/DCやエアロスミスの音楽と一緒に育ったんだ。若い頃は彼らの音楽を通じてギターの弾き方を学んだ。それが今では毎晩彼らが最高のサウンドを出せるようにすることに責任を負っている。夢がかなったんだ。
今ではアンガス・ヤングやジョー・ペリーやスティーブン・タイラーの周りにいて彼の話しを聞くことができるんだよ!それは音楽の歴史であって、彼らの音楽がその歴史の一部になっているなんてスゴイことだ。僕は本当に恵まれていると信じている。


M:今仕事でお付き合いしているアーティストとは関係なしに、あなたのお気に入りのギタリストやバンドは誰ですか?
T:リック・ニールセンやチープ・トリックと仕事をするのは大好きだった。僕らは出身地が同じで、彼らはいつも地元のヒーローだった。スタイリッシュで最高のミュージシャンだったよ。
僕の永遠のギター・ヒーローは問答無用でランディ・ローズなんだ。僕はオジー時代のランディに三回ほど会う特権に恵まれた。本当に素晴らしかった。彼が死んだ時、私たちは道半ばにして本物の伝説を失ったんだ。


M:JCMとプレキシどっちが好き?
T:プレキシだね。


M:最近のマーシャルではどれがお好み?
T:僕はビンテージにこだわるタイプなんだ。ゴメンね、最近でもメッチャいいヘッドをいくつか出しているのはわかっているよ。でも僕が面倒をみているアーティストはアンプが壊れていない限りはアンプをイジろうともしないんだぜ。

M:手持ちの機材で何か改造しているものは?
T:AC/DCの機材に関してはウィザード・アンプのリックに訊いてもらいたい。彼はAC/DCのアンプ・テックなんだ。チョコチョコっと改造しているのは知っているんだけど彼から話しを聞くべきだよ。もし彼がOKならば…の話しだけど。
ジョー・ペリーの機材はいくつか改造を施している。彼は最近のツアーからJCM800の100Wヘッドを使い出したんだけど、もうチョットだけヘッドルームを大きくして歪みにくくしたがった。そこで僕はボストンのロイ・グッド(かつてのジョーのスタッフ)の所へ二台送ったんだ。すると彼はチョットだけパワーアップさせて、かつハイを抑えるために音をダークにした。それがジョーの希望だったからね。
それからヴードゥー・アンプのトレイス・デイヴィスにも二台送った。彼もヘッドルームを少しだけ広げて、やはりハイを削って音を暗めにする改造を加えた。トレイスはそれに高域を調整できるようにプッシュ/プル式のポットを取り付けた。必要ないんだけど。


M:あなたのセットアップに何かマーシャルの秘密兵器はある?
T:秘密兵器と言えば、70年代のSUPER BASSとSUPER LEADかな。それだけ…でもAC/DCと来た日にはそれがすべてだからね。


M:最後に、何かマーシャルがらみの特に愉快な話しってある?
T:ジョーと僕がポール・マーシャルと一緒にマーシャルの工場見学をしていたんだ。ポールがこのアンプ(訳者注:どのアンプかは原文に明記していない。多分オリジナルのJTM45のことだろう)を見せて、いかに少数しか出回っていないということを口にしたんだけど、ポールはそれらが他にどこにあるかは不確かなようすだった。するとジョーがニヤリとしながら「どこにあるか知ってるぜ…俺んとこだよ」と言ったんだ!

マーシャルの層は驚くべき厚さだよね。エアロスミスのジョー・ペリーやブラッド・ウィットフォード、AC/DCのメンバーたちは何百ものマーシャルを持っている。それには理由があるんだ。それらはサウンドを構成する巨大な要素なんだ。

M:トレース、貴重な時間をありがとう!

Marshall Offical Websiteより引用)