勝手にしやがれ!!
1977年、『勝手にしやがれ!!』という邦題のアルバムが世に出て話題になった時、私はプログレッシブ・ロックに夢中の中学校3年生だった。
その作品は何でも「パンク」とかいう新しいタイプのロックで、そのアルバムをリリースしたバンドの名前が「セックス・ピストルズ」だという。
「そんなバンド名いいのかよッ?!」とビックリした記憶がある。
何しろこっちは14、15歳少年である。当然人前でそのバンド名を口にすることがはばかられた。
私は昔から流行を気にかけるタイプではなかったが、友だちがその話題のアルバムを買ったというので聴かせてもらった。
シンガーの歌い方がオモシロいとは思ったが、ナニについて歌っているのかなどは到底理解できず、子供の耳には総じて普通のハードロックに聞えた。
結果、そのアルバムに興味を持つことはなかった。
ところが世の中は違った。
その後、時を待たずしてツンツンのヘアスタイルをしたバンドが世の中にあふれ出し、「ロンドン・パンク」だの「ニューヨーク・ロック」だのと、フォロワーが雨後のタケノコのように現れてロック界が一気に「パンク」に狂奔しえいるのを横目で見ていた。
「セックス・ピストルズ=パンク・ムーヴメント」とはそんな風にして出会ったのだがそれっきりで、以降もパンク・ロックに関しては私は全くの門外漢であります。
それゆえその周辺のことに関しては気の利いたことを書くことが一切できません。
最後にチョット書いたけど…。
そんな中、Marshallの新しい仲間を紹介します。
セックス・ピストルズのデビュー50周年を記念し、ギタリスト「スティーヴ・ジョーンズ」に捧げた限定生産の「JCM800 2203」と「1960A」を発表したのだ!
黒、白、金のMarshallトリコロールはどこへやら、ピンクとイエローを基調にしたひと目で「アレ」とわかるスゲエ配色!
コレは目立つワァ~。
『勝手にしやがれ!!』の原題はご存知の通り『Never Mind the Bollocks』という。
「bollocks」というのは「クダらないこと」とか「バカげたこと」を意味するイギリスのキツいスラング。
以前、フランクフルトでMarshallの連中と一緒になる時、「学校で教わらないようなナマの英単語や表現を教えてくれ!」とお願いして地元の人たちが日常的に使う英語を学ぶように毎回努めていた。
するとみんなそれをオモシロがっちゃって「シゲ、コレはどうだ?」とか「アレは知ってるか?」と品のない英語をガンガン教えてくれた。メチャクチャ楽しかった。
そうした中、かなり最初の方に出て来た単語のひとつが「bollocks」だった。
意味は確認しなくてもセックス・ピストルズのデビュー・アルバムの邦題のおかげでどういうことかはだいたい理解できたのであった。
『勝手にしやがれ!!』というのはけだし名意訳だと思うのです。
キャビネットと組み合わせると壮観!
今回の発売に際し、Marshallのウェブサイトにスティーヴ・ジョーンズのインタビューが上がっている。
その中でスティーヴが「クリス・トーマス」に触れている箇所がある。
クリス・トーマスといえば、ロキシー・ミュージックの諸作やプロコル・ハルムの大名盤『Grand Hotel』、ポールの『Back to the Egg』、サディスティック・ミカ・バンドの『黒船』他を作った大プロデューサー。
もちろん『勝手にしやがれ!!』もクリスのプロデュース作品だ。
昔、ナニかの記事で読んだことがあるのだが…コレもスティーヴの話だったかも知れない…アルバム収録曲のどこかにギターの音を12回重ねたパートがあって、多重録音を繰り返す間、クリスは絶対にチューニングをさせなかったそうだ
つまり、徐々にディチューンになっていくことでギター・サウンドに厚みを増させるのが狙いだったとか。
シンプルかつ粗野な要素が魅力のパンク・ロックの開祖的なこのアルバムにはそうした緻密な作り込みがあったらしい。
やっぱり音楽の分野を問わず、名盤として世に残る作品にはアーティストだけでなく、関係スタッフの確固たる制作意図がカギとなるんだナァと思った次第。
最後に…イギリス人と付き合うようになって驚いたことのひとつに、私と同世代、あるいは少し年長の世代の皆さんのパンク・ロックに対する並みならぬ思い入れの深さがある。
冒頭に書いた通り、パンク・ロックを全く通っていない私にとってコレを知った時はかなり大きな衝撃だった。
日本ではシンプルで激しい曲想、頭ツンツン、安全ピンブスブスといったファッション面の要素が色濃く見えるパンクのムーヴメントだが、イギリスの多くの人にとってはパンク・ロックは絶対に替えが効かない「魂」とか「根性」とか「信念」そのものなのだ。
長年にわたる「英国病」や世の中に対する様々なフラストレーションを吹っとばす格好の手段がパンク・ロックだった。
そして、それこそが「ロック」が「ロック」たるゆえんであり、その雰囲気が連綿と続いているんだナァ。
日本にはそんな音楽なんてないでしょう?
実際にひとつ年下のMarshallの友達にセックス・ピストルズが出て来た時の様子を尋ねてみたことがあった。
その友達はこう言っていった。
「も~、それはスゴかったよ!最高だったよ!まさに『コレだ!』と思った」とうれしそうに語ってくれた。
日本でいちプロッグ・ロック・ファンの少年が「普通のハードロックと大差ない」と感じた音楽は地球の裏側で大変な騒ぎを起こしていた…というワケだ。
そうした背景の中でMarshallが今回の記念モデルを発売するのは至極当然のことと私は思った。
コレが言いたかった。
