那由他計画~その声、雅なる狂気<前編>
那由他計画、2度目のご登場。
去る2月21日に那由他計画は4年ぶりのアルバム『UNIOMISTY(ユニオミスティ)』の発表を記念するライブを開催した。
この3枚目となるアルバムは当日に先行販売されたが、正式には一昨日発売されたばかり。
出したてのホヤホヤは2枚組の大作だ。
そこでMarshall Blogでも2本立てでこの記念のライブをレポートすることにした。
ショウはまず壮大なキーボーズの音色で始まる。
キーボーズに歌が重なってバンド・アンサンブルとなる。
するとブレイクが入り…「那由他計画で~す!」。
客席から笑い声が上がるホンワカ・スタート。
那由他計画は…
栗谷秀貴
国分巧
重本遼太郎
世良純子
月本美香
そして、計画の指揮を執る塚田円。
1曲目はアルバムのオープナー「Birth of Love -誕生-」。
2人のシンガーの伸びやかな歌声が切れ味のよいワルツのリズムに乗って響き渡る。
すると塚田さんが5/4拍子のフレーズを提示し…
秀貴くんのソロが続く。
秀貴くんはもちろんMarshall。
今回から「JVM210H」を導入したのだ!
スピーカー・キャビネットは「1960A」。
曲は再び歌のパートに戻り純子さんと美香さんが艶やかなハーモニーを聴かせて幕を下ろす。
アルバムの曲順通りに「Call to Awaken -覚醒-」が続く。
新作『UNIOMISTY』はコンセプト・アルバムで、曲を象徴する2文字ないしは3文字の漢字表記の題名が付されている。
いいね、漢字は。
このご時世に「コンセプト・アルバム」なる作品を創りあげたことに敬意を表したい。
イントロもギター・ソロもオミットされた曲がもてはやされる昨今、今の若い人はコンセプト・アルバムのコンセプトすら知らないでしょう?
この曲でもまず2人の歌声が勢いよく飛び出して…
遼太郎くんが叩き出す7/4拍子のリズムで…
塚田さんがビャ~っとオルガンのソロをブチかます!
一糸乱れぬ純子さんと美香さんのハーモニー。
ゼンゼン7/4拍子を感じさせないスムースなリズム運びがステキ。
ガッツあふれるオルガン・ソロから…
縦横無尽に弾きまくるギター・ソロへ。
そしてピアノをバックに国分さんがテクニカルなベース・ソロを繰り出した。
曲はドンドン表情を変えていき、4/4+6/4拍子(かな?)の器楽演奏のパートが展開する。
2人のシンガーがステージに戻って…
リレー形式で歌のメロディが綴られていき曲はクライマックスを迎える。
まさにツイン・ボーカルズの強み。
それにしてもいいネェ、こういう音楽は。
「ありがとうございます。
ズッと制作をしてたんですよ。
それで音楽に関係のない人と話をしたんですね。
『最近、ナニをやっているんですか?』と訊かれて、『今、CDを作っているんです』と言ったら、『エエッ?CDってまだあるんですか?』と驚かれて『ありますよ』と答えました。
発行枚数は減っているんですが、フィジカルがちゃんとあるってよくないですか?」
塚田さんが6面パネルのCDを手にして自らアルバムを紹介。
「ココにいるイカレプログレの皆さ…あ、失礼しました!
ココにいらっしゃる耳巧者の皆さんは何千枚とそばに置いておきたいのではありませんか?」
「さっきの話…『CDってまだあるんだよ。ショップがあるじゃない』と言ったら、『アレは全部中古だと思っていた』って言っていました。
家には親が持っている宇多田ヒカルのCDとかがありますけど、聴く装置がないんですって。
そういう時代なんだと思いましたけどCDを作りました。
でもボクらも時代にキャッチアップしたいと思っていまして、プログレ・バンドとして何をしたかと言いますと…電子決済をできるようにしました。
やっぱり1番のホスピタリティはそれだろうと思っておりまして…。
クレジットカードも交通系のカードもほぼ全て使えます。
西新宿で散財した後でもお買い求めいただけますので是非よろしくお願いいたします」
塚田さん、ご立派!そうこなくっちゃ!
私はガチガチのCD擁護派です。
大分前、NAMMショウに行った時にアメリカ人の口から「Physical products」という言葉が出て来てめまいがしたのを覚えている。
そして今、音楽を聴く人でCDを買う人は17%しかいないそうです。
私もSpotifyのアカウントを持ってはいるけど、Marshall Blogを書く時の参考資料として使うだけで、音楽を鑑賞する時にサブスクの類を使うことは絶対にあり得ない。
やっぱりモノがなきゃダメなのよ。
だって言うでしょ「心はかたちをもとめ、かたちは心をすゝめる」って。
コレは稲荷町の大手仏壇屋「三善堂」のキャッチコピーなんだけど、まさにその通りだと思う。
下はウチの仏壇…イヤ、CD棚。
通常のプラ・ケースで保管してると嵩が増すばかりなので14年前に薄いビニールのケースに入れ替えた。
そうでもしないと体積はコレの3倍ぐらいになってしまう。
処分したそのプラ・ケースの重量もスゴかった。
だいたいコレで5,500枚ぐらい。
他にボックスセットがゴロゴロとレコードが2,000枚チョットある。
聴いているのか?って?
イヤイヤ、大半は買った時に1回か2回聴くだけですよ。
それではあまりにもモッタイなかろう…ということで「荒行」と称して持っているCDをすべて聴いてみることにした。
4年以上かかって今ようやく終ろうとしているんだけど大変な苦行だった。
やっぱり聴きたい音楽を聴きたい時に聴かないとダメ…ということがよ~くわかった。
さて、塚田さんのピアノからスタートする3曲目は「Beyond Boundaries -境界-」。
美香さんの独唱。
そして合いの手を入れるスタイルで純子さんの歌が加わる。
キタキタキタキタ~!
スケールの大きなバンド・アンサンブルをバックにグングンと曲のスケールが広がっていく。
秀貴くんがアコースティック・ギターをストラミング。
塚田さんによると、レコーディングを進めて行くとどうしても色んなことをしてみたくなるそうで、今回そのひとつがアコースティック・ギターの導入だったそうだ。
ココに塚田さんはパン・フルートみたいな音色のフレーズを重ねた。
PFMみたいでカッコいい!
歌の2人はカスタネットを手にして…
メンバーは素手でパルマを刻む。
塚田さんもとても楽しそうにリズムに乗って両手を合わせていた。
そしてシンセサイザーのソロをバッチリとキメた。
メロトロン、ピアノ、パン・フルート…塚田さんが1曲のウチで使用する音色のバラエティ加減がスゴイ!
クライマックスに向けて当意即妙に気持ちのよいグルーヴを叩き出していく遼太郎くん。
ダイナミックに音程を上下させて曲を盛り上げていく国分さんのベース・ラインも聞き逃せない!
ゴリンゴリンのヘヴィなリズムに合わせて女性の歌声を乗せる曲調に一瞬Magmaを想起した。
こんなサウンドを作っているバンドが今他にあるか?っていうんだよ。
こうして12分にわたって息をつく間のまったくない大曲が締めくくられた。
やっぱりいいわ、こういう音楽は。
私は中学生の頃からこの手の音楽が大好きだったのです。
「今回出した作品に参加してくれた素晴らしいゲストの方々をチョット紹介します。
現れる曲順にいきます。
まずはギターで参加してくれた『美狂乱』の須磨邦雄さん。
『いつも通りに弾いてください』って言ったら本当にいつも通り弾いてくれて、メッチャ予想通りだったのでうれしくなりました。
今演った曲でwaraさんというピアノの上手い人。
さっきちょっとマネして弾いてみたけど全然違いますね…もっとカッコいい」
「それからデレク・シュリニアンというドリーム・シアターにいた人。
彼がXで『キーボード・ソロ弾くよ』とつぶやいてたので連絡してみたら『いい曲だね。やってもいいよ!』って。
その時はデモを送ったんですが、それでもう弾いてくれて『そんな感じでいだろう?』とか言って。
『録音が始まったらお願いしていいですか?』って言ったら『Sounds great!』と返事をしてくれたんですね。
それから3ヶ月くらい経ったある日、正式な音源を送ったところ『今から弾くよ』って言ってすぐ音源が返ってきたんですよ。
それが本当にすごく良くて…『出来ない時もあるけどまた演ろうよ』ってやりとりをしました。
そんな感じです…だからみなさんも気軽に連絡してみたら?
一応、曲は聴いてやるかやらないかを判断しているそうです。
だから今回ボクらはヨカッタですね」
「その次に『The Beloved』という曲ではフェイ・ターンという人にテルミンをお願いして、『世界で1番フワフワヒューンって感じで演ってください』て言ったの。
そしたら本当にフワフワヒューンってやってくれてこれもヨカッタです。
それと『Arrival』という曲は作っている時からヴァイオリンにしたいなと思っていて藤本美樹さんに頼んだんですが、コレがメッチャ男気溢れる、正面からブツかってくるような演奏でボクもそれに応えなきゃなと思ってメチャクチャ歪ませておきました。
すごい攻撃的なソロになっていますのでゼヒ聴いてください。
そして『Superconsciousness』、『超美意識』という曲では最初から盛大にフルートを入れたいと思って今井研二さんにお願いしたら演ってくれたんですね。
『攻撃的な感じでボーカルに絡むようなの演ってくれよ』って言ったら本当にその通りになった。
コレもよかった。
今日はそれをマネしてみますけど、すっごい難しくて全然ちゃんと弾けない。
そうしてボクの難しいパートを全部外注したら意外と早く作業が終わってヨカッタと思っています」
塚田さん自らアルバムの聴きどころを解説した後は…
フィードバック音から秀貴くんがリフを奏でる「Return to Nature -回帰-」。
4/4+5/4拍子のバンド・アンサンブルから…
美香さんが情感豊かに演ずる独唱のパーツに移るとリズムが4/4/+6/4拍子に変わる。
塚田さんの傍らに立つ純子さんと向かい合ってデュエット。
二胡のような音色の塚田さんのソロが続く。
リズム隊のユッタリとしたグルーヴの中に…
得も言われぬ緊張感が存分に感じ取れる。
そして美香さんの激唱が会場の隅々にまで行きわたった。
那由他計画の詳しい情報はコチラ⇒Official X
<つづく>
(一部敬称略 2026年2月21日 吉祥寺シルバーエレファントにて撮影)