GENKI SESSION 2025<前編>
卯の花の 匂う垣根に
時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ
今、コレをご覧の方々は恐らくこの歌詞をご存知であろう。
国民唱歌「夏は来ぬ」。
この曲を出版したのは、現在も心斎橋他に店舗を構える大阪の老舗楽器店「三木楽器」だった。
鉄壁のこの唱歌がたった8小節で作られていることに今更ながら驚いてしまうが何しろ歌詞がいい。
作詞は「佐佐木信綱」。
「万葉集」の研究で名高く、皇室の歌会の撰者も務めていた明治から昭和の長きにかけて活躍した歌人であり国学者だった人。
作曲は小山作之助という人で「夏は来ぬ」の人気があまりにも高かったので、「ナンダナンダ、何なら歌詞もオレが書いてやろうじゃないか!」と言ったかどうかは知らないが、オリジナルの歌詞を用いて改作したが世間からは歯牙にもかけられなかったという。
「歌詞」というのはげに大切なモノということだ。
そんな夏が来てドッカリと居座り、ようやく過ぎ去っていく風情になってきた。
今年も日本のロックの夏の風物詩である「GENKI SESSION」を2本立てでレポートする。
会場はいつもの「東京キネマ倶楽部」。
今回の開宴はいつもより30分早い6時半。ドラムスが打ち出すゴキゲンなビートに乗ってステージに姿を現したGENKIさん。
まずはレイ・チャールズの「Hallelujah I Love Her so」から。「Everybody clap your hands!」
今年の「GENKI SESSION」のメンバーは…
人見元基(以下「GENKIさん」)難波弘之
さっそくのピアノ・ソロ! 日下部BURNY正則(以下「バーニー」)
松本慎二
療養中のロジャーさんに替わって(現在は活動再開中)ドラムスを担当したのは阿部薫。
以上の5人。バーニーのソロ。
バーニーはもちろんMarshall。
愛用のSTUDIOシリーズ「SV20H」とCELESTIONの「G12M-65」、通称「クリーム・バック」を搭載した2x12"スピーカー・キャビネットの「1936」のコンビネーション。「♪ハレル~ヤ~」
1曲目からお客さんと大合唱。
もうお客さんも勝手がわかっているので、いちいち説明をしなくてもビシっとキマっちゃうところがスゴい。「ヘイ!久しぶりだぜ。
ようこそ鶯谷へ。
みんなも知っていると思うけど、ドラムスのロジャーの入院治療がもうチョットかかるということで今回はドラムスをナント豪華2本立てにしてお送りします。
その前にまず入院しているロジャーにガンバレ・コールいくか?
みんなの声が届くようにね!」「じゃあ…ロジャー、ガンバれ~!」
早く戻って来いよ~!」
GENKIさんのリードでお客さんも大声で「ロジャー、ガンバレ~!」とエールを送った。そして今回第1部でドラムスを担当した阿部さんを中心にバンド・メンバーを紹介。
阿部さんはかつて「NOIZ」のメンバーだったので「ノイズの曲を結構演ろうと思って…」というGENKIさんの言葉に客席から歓声が送られた。 2曲目はバーニーが弾くリフからモントローズの「I Got the Fire」。
ストレート・アヘッドなロック・ビートに乗ってGENKIさんが猛シャウト。
この曲を歌ったサミー・へイガーの声は大変にキーが高いんですってネェ。
「ディオよりずっと高い」…ということを先日ロニー・ジェイムス・ディオ研究家から聞きました。ココでもバーニーのワイルドなソロが炸裂!
私の中の「ロック七不思議」にロニー・モントローズがどうしてトニー・ウィリアムスのグループにいたのか?…というのがある。
ま、ハービー・ハンコックのつながりだったのでしょうけど、1978年、まだ「田園コロシアム」でやっていた頃の『Live Under the Sky』にトニーのグループで出演しているんだよね。
観に行けばヨカッタ…。「『灼熱の大彗星』でした…邦題ね。
皆さんはロックとかの音楽を聴いてもう数十年…30年?経ちますか?
オレ達の方が長いかもしれない。
まだ20代前半の頃にNOIZって感じだったからね。
今演ると『速い~!』って感じの曲を作っていたんですよ。
なんでこんな曲作ったのかなぁ~。
アっという間に終わりますよ。(笑)
ウッカリしていると瞬きをしている間に終わっちゃいますから。
違う?」
曲順を勘違いしていたGENKIさん、ココで軌道修正して…いつもこのあたりで出てくるツェッペリン・ナンバー。
では、バーニーお願いします!知らぬ者などいない(今は結構いるか?)ロック史に残る名リフとGENKIさんの歌声による魅惑のアンサンブル!
「Whole Lotta Love」だ。中間部の幻想的なパートはバーニーがボトルネックをハメて巧みに演出する。
そして誰もが演りたい見せどころ&弾きどころのソロ・パート!
♪ジャン、ジャン!
我々の世代のロック・ギター・バカはみんなコレで育ったのだ。
イヤ~、しかしいい音だナァ。
さすが根っからのレス・ポーラー。
25年ぐらい前、私はレス・ポール以外のギターを弾くバーニーの姿を一度も見たことがなかったぞよ。「♪Way down inside…」
つづくGENKIさんの際限のない伸びやな歌声のソロ・パートにすべての観客が耳をそばだてた。「レッド・ツェッペリンの曲でしたね。
この曲は『胸いっぱいの愛を』という邦題が付けられて最初はモノラルだったんですけどね…なんてどうでもいい話ですね。
シングル盤はモノラルだったんですよ。
ワーナーじゃないどっかから出ていて、途中でのギュインギュインギュインってなるところがないんですよ。
持ってる人はお宝ですよ。
コレは毎回言っているんですけど、『70年代ロック』って言いますが、ウチら『70代ロック』ですからね… 難波さん1人」「みんなも早くこっちへ来て!」
ココからはおなじみの「NOIZコーナー」。
GENKIさんが「ガンガンガン!」と大声で曲名を叫ぶ。飛び出してくるのは猛烈なドライブビング・リズム!
さっきのMCでGENKIさんが「瞬きをしている間に終わっちゃう」と言っていた曲がコレ。阿部さんのシャープでパワフルなドラムに…
高速の4分で重なる松本さんのベース・ラインがすこぶるカッコいい!
そして「グバ~!」っと難波さんのオルガンが全体を包み込む。
「♪ガンガンガン」と、それこそガンガンとシャウトするGENKIさんが最高!
大熱演なのだ!
でも本当にすぐ終わっちゃうの。
ん~、もっと聴きたい~!続いてはバーニーがダイナミックに「#9thコード」をストラミングしてから…
そのままソロへと突入。
タップリと弾いて曲が始まる。
このストラトキャスターもいい音だな。太い。ゴキゲンなロック・ビート・チューンは、同じくNOIZの「Hey Bro.」。
曲はうなりを上げてどこまでも突き進み…
GENKIさんのキックも飛び出した!
「イヤ~、若いバンドで…。
皆さんが聴いていて、歌詞的な部分とかネェ…。
屋根裏っぽいですよ。ライブハウスの『屋根裏』。
メジャーじゃない。
メジャーになりようがない…そんな曲ばっかりでしたよ。
でも、そんな曲ばっかじゃないんですよ。
チョット優しい曲もあったりとかね…よろしく」
私なんか「屋根裏」大好きでしたよ。
高校生だったので2階の「ロンドン」を通過する時は少しドキドキしたりして…。
あの名刺大の見開きの月間スケジュール表を1枚ぐらい取っておけばヨカッタなぁ。
左のページが「昼の部」で、右が「夜の部」だった。
大学の時に何度か出させてもらったけど、私なんかスターになった気分でしたよ。
アソコで観て特に印象に残っているバンドは銀次さんがいた頃のRCサクセション、東京おとぼけキャッツ、ウシャコダ、それになぞなぞ商会ってところかな?
当時一番お客さんが入るブッキングがRCサクセションとPANTA&HALと言っていた。
PANTA&HALは新宿ロフトで観た。
なつかしいナァ。
今はもう街が変わってしまって、新宿ロフトがどこにあったのか皆目わからないし、屋根裏が西武の裏にあったことも夢の中の出来事のようだ。続いてのNOIZ曲はバーニーのギターをバックに「樹のうた」。
ジックリ&シットリと歌うGENKIさんがまた素晴らしい。
バッキングに徹するバーニー。
そしてクリーンなサウンドも素晴らしいMarshall SV20H。情感をタップリと込めた歌声を聴き逃すまいと客席は水を打ったような静けさとなった。
そのままア・カペラで「♪いつものように」と張りのある歌声が会場に響き渡る。
そして最強のバンド・アンサンブルが加わる。
もちろん曲は「いつものように」。
こうして第1部はNOIZナンバーで締めくくられた。バーニーのソロが猛り狂い…
松本さんのスケールの大きなベース・ソロも飛び出した!
しかもタ~ップリ!
シーケンサー、オルガンとバラエティに富んだサウンドで曲をドラマチックに演出する難波さん。
猛然とドライブする阿部さん。
そして~…
〆のジャ~ンプ!
コレにて第1部終了。
この後、20分の休憩に入った。<つづく>
(一部敬称略 2025年8月27日 東京キネマ倶楽部にて撮影)