はじめてのジョーセッション~Vintage ModernとJVM
つい先日、FEEL SO BADの山口"PON"昌人さんの還暦を記念するイベントが開催され、そこに出演した「ユキSESSION」というチームのステージのもようをレポートした。
今日は「ジョーセッション」。
フ~ム…この「ナンジャラ・セッション」っていうのはいつ、誰が始めたのかネェ?
チョット私はニガテなんだけど、「ロック史に残る名盤」の誉れ高いマイク・ブルームフィールドやアル・クーパーの『Super Session』がリリースされたのは1968年のこと。
「スーパー」ならわかるけど、そこにセッション・リーダーの名前を最初に入れたのは一体誰なんだろう?
今となっては調べる術すら思い浮かばないが、Marshall Blogとしては菅沼孝三、江川ほーじん、田川ヒロアキの「手数セッション」なんてのがとても懐かしい。ということで今日は塚本"JOE"旭による『ジョーセッション~ひとりでできるもん~』のレポート。
会場は初めてお邪魔する新宿の「MERRY-GO-ROUND」。オープニング・アクトのステージが終了し、すぐにステージに姿を現した6人。
セッション・リーダーのジョー。
ユキ
Jien Takahashi
RyO
Ollie Bernstein
Louis
ジョーくんが冒頭に絶叫したのは「♪バ~ン」。
続けてギターの2人が奏でるこの有名なリフは「Black Night」。
冒頭2曲をディープ・パープルで固めて来た。
ということは当然Marshallの出番だわね。
ユキくんもJienくんもいつもMarshallを使ってくれているんだけど、今日はどうなっているのかな?
ちょっとジョーくん、待っててね。まずユキくんのMarshall…
今日は「Vintage Modern 2466」を持って来てくれた。
写真ではわかりにくいけどオリジナルのVintage Modernは紫色だった。
このモデルのために新しく調合した濃い紫の下地に少量の黒いインクをマブした色合いのカバリングだった。
設計したのは我が親友、スティーブ・ドーソン。
地元ニューカッスルでレッド・ツェッペリンやディープ・パープルの一番いい時を見ているスティーブはMarshallサウンドの本当の魅力を知り尽くしていた。
で、彼がMarshallの第1号機の「JTM45」のサウンドを現代の使い勝手の良さで甦らせたモデルがVintage Modernだった。一方、Jienくんのこの日のMarshallは…
「JVM410HJS」と愛用のスピーカー・キャビネット「MF400B」。
JienくんのJVMはノイズ・ゲイトを搭載したジョー・サトリアーニのシグネチャーJVMだ。
サンチャゴ・アルヴァレスが設計してケリー・キングのシグネチャー「2203KK」に搭載したノイズ・ゲイトがあまりにも優秀だったのでこのモデルにも採用されたんだね。
私も仕事がらずいぶんたくさんのギタリストを目の前で見て来たけど、「ああ、ウマいナァ~」と心底感心したギタリストのひとりはジョー・サトリアーニだった。今回ユキくんからリクエストを頂戴した。
ユキくんはVintage ModernとJVMが同時期に発売されたことを知っていて、「ジョーセッション」はせっかくその2モデルが揃うライブなのだから、レポートを制作する時にはこの2つのモデルについてナニか書いて欲しい…というのだ。
デジタル機器などに目もくれず、日ごろから自力で持って歩いてMarshallを愛用してくれているユキくんの頼みとあれば断るワケにもいくまい。
…ということで、2つのモデルを発売する時のことを少し書いてみることにする。2003年のMODE FOUR、2004&2005年のハンドワイアード・シリーズに続いて投入されたVintage ModernとJVMは開発した時期が重なる親違いの双子だった。
ん?…親が違えば「アカの他人」か?ま、いいや。
それぞれ2006年末と2007年に発売されたこの2つのシリーズは2006年の冬には既に完成していて、私はフランクフルトの展示会でいち早く両方のモデルを弾かせてもらった。
今ではナンでもないが、この時はJVMの多機能ぶりに圧倒されてしまい、短い時間内の説明では正直ナニがナンだかよくわからなかった。
それよりもシンプルなVintage Modernの方に親近感が湧いたことを覚えているし、音も素晴らしく感じた。
下はその2006年の3月末のフランクフルトの展示会の時のようす。
写真の真ん中で立って話をしているのがVintage Modernを設計したスティーブ・ドーソン。
話し相手はドイツのディストリビューターの担当者。
私がタクシーのトランクにスーツケースを置き忘れてしまった時、警察まで一緒に行ってくれて英語⇔ドイツ語の通訳をしてくれた恩人。この時、ブースのスタジオでデモ演奏をしてくれたギタリストの1人は、今日これからジョーくんが歌うホワイトスネイクのギタリスト、故バーニー・マースデンだった。
控室にいる時はアイスクリームばっかり食べていた。
何年か一緒になっているうちにとても気安くなり、「シゲ、ちょっとこのアイス持っていてくれる?」なんてやったものだった。
ホワイトスネイクのギタリストのアイスクリームを預かったことがある日本人は多分私だけであろう。
バーニー、スゴイよ。
ブルースなんかを演らせたらそこら辺の日本人は誰も敵わんだろうね。
やっぱり本場の人が現地で出すギターの音はナンというか…「音の骨格」が違うんよ。下は発売に合わせて作られた英語版のブロシュア2種。
スゴく良質な紙で作られていて、手にすると力の入れ具合が即座にわかろうというシロモノだ。こんなマルチ・ステッカーも制作していた。
ジムをフィーチュアしたポスターも作った。
不幸にしてこの撮影の数日前にジムは倒れてしまった。
ところが予定に穴を開けてはマズかろうと、持ち前の不屈の精神で復活してジムは撮影に臨んだ。
そしてこのポスターが出来上がった。2006年10月25日、世界中のディストリビューターを招待し、Marshallの本社にてVintage ModernとJVMの発表会が開催された。
この日は確か雨が降っていたナァ。
コチラはJVM一家。コチラはVintage Modern。
この時デモンストレーターにひとりとして、当時イギリスで話題になっていた「The Answer」というバンドが登場し、「ポール・マホン」というギタリストがVintage Modernを弾いて見せたのだが、残念ながらノドの不調を理由にシンガーが姿を見せず、インストゥルメンタルでのデモンストレーションとなってしまった。
このThe Answerというバンドは、「コーマック・ニーソン」というシンガーがウリのバンドだったのでとても残念だった。
それからしばらくして来日し、私は挨拶を兼ねて渋谷のクアトロにショウを観に行ったが、それはそれは素晴らしいステージだった。
The Answerはブリティッシュ・ロックの伝統を踏まえた本当にいいバンドだった。
今もやっているのかな?そして商品ごとのデモンストレーションではNWOBHMの雄「グリム・リーパー」の創設者の1人である「ニック・ボウコット」が実演を交えてJVMの機能を説明した。
この頃、ニックはアメリカのMarshallに勤めていたのだ。
多彩なJVMのサウンドを聴かせるために、彼は搭載されたMIDIの機能を利用して、予めJVMのチャンネルの情報を組み込んだバッキング・トラックに合わせ、ロックの古今の人気曲のリフを31曲、まったくフットスイッチにもコントロール・パネルにも触れずに音色を次々と替えて演奏して見せた。
コレは本当にオモシロかった。
JVMは真空管のアンプしか出せないサウンドをまったく犠牲にすることなく、ギタリストにとって有益な考えうるすべての機能を搭載したギター・アンプということをニックはこの演奏を通して教えてくれた。一方のVintage Modernのデモンストレーションを担当したのはダグ・アルドリッチだった。
バッキング・トラックに合わせて、あるいは無伴奏でトコトン弾きまくってくれた。下はこの時に会場のロビーで撮った写真。
この数日前、成田空港で免税のタバコを買おうとしたが時間がなくて買うことができなかった。
それまでも何度もイギリスには行っていたがタバコを買ったことは一度もなかった。
だから簡単に「イギリスに行って何かしら買えばいいや」…と思ったのだが行ってビックリ!
ひと箱1,500円もしたのだ。
道理で私が行く時にマーシャルの連中が「タバコを買って来てくれ」と頼むワケだわ。
結局、1,500円も出すのはどう考えてもバカバカしいてので丸々喫煙ごとヤメちゃった。
私は決してヘヴィ・スモーカーではなかったが、イザ止めてみると目の裏チカチカ、指先ジンジンでもうツラいのなんのって!
みんなで行ったインド料理店でその様子を見たダグが「おいシゲ、身体の調子でも悪いのか?大丈夫か?」と気遣ってくれた。
時のMarshallの副社長が、私が禁断症状に陥っていることを伝えるとダグは「ナ~ンダ、そんなことか!」と自分のタバコを差し出してくれた。
だから「ガマンしている!」って言ってんだよ!
結果…ダグの誘惑に目もくれず禁煙成功。以来19年、現在に至っている。
身体もステージもノン・スモークが一番だ!さてジョーくん、お待たせ!
今日のMarshallがわかったところで聴く「Black Night」は一層味わい深い!…そうでもないか?客席のほとんどは若者。
世代を超えて客席が盛り上がる!
うれしいね。「『JOE SESSION』です。よろしく~!
今日は最高なクラシック・ロックをお届けしまぁ~す!」
そう、「ジョーセッション」はジョーくんが選んだ「ロックが最もロックだった時代のロック」を若い人たちに知らしめる啓蒙イベントなのだ。
よくやったジョーくん!ココで「オン〇〇」と担当楽器を交えてジョーくんがメンバーを紹介。
ユキくんの番では「オン・ギター」ではなく「オン・ストラトキャスター!」とやった。するとユキくん…
「なんか『オン・ストラトキャスター』っていうのもチョット恥ずかしいですね。
色んな感じで怒られそうな気がする」
じゃ私が怒りましょう。
「マーシャル」はどこへ行ったッ?!
次回からは「オン・ストラトキャスター&マーシャル…ユキ!」にして頂きましょう。今度はレインボーの「Long Live Rock 'n' Roll」。
コレもノリノリのわかりやすいハード・ロック・チューン。
こうして若い人たちが演奏して、若いお客さんが楽しんでくれればロックも少しはLong Liveするってものだ。続いてもレインボーで「Spotlight Kid」。
ジョーくんの汗ダクの熱唱が続く。若きシュレッダーを両脇に抱えてギンギンにクラシック・ロックするジョーくん!
RyOくんのキーボードのソロもバッチリとフィーチュア!
「♪デンジャッ、デンジャッ」
続けてもレインボーの「Kill the King」。 今月この曲がMarshall Blogに登場するのは先週に続いてコレが2回目。
前回は「ユキSESSION」だった。オリーの重量感溢れる低音と…
Louisちゃんのシャープなドラミングのコンビネーションがゴキゲンなドライブ感を生み出した。
「初の『ジョーセッション』…2、3か月前、ユキさんに『ユキSESSION』に誘って頂いて『セッションというモノは楽しいな、うらやましいな』と思ってオレも主催してみることにしたんダァ!
だからオレはすごく楽しい!みんなも楽しいかッ?」
客席から盛大な「イエ~!」の反応。次にジョーくんが取り上げたクラシック・ロックはホワイトスネイク。
さっき出したヤツね。
何でもデビッド・カヴァーデイルがジョーくんの一番好きなシンガーなのだそうだ。曲は定番の「Crying in the Rain」。
ハードでヘヴィでドラマチックなロッカ・バラード。ギター2人のアンサンブルがビシっとキマった!
スゴく気安くて感じのいい人ですよ、カヴァーデイルさん。
一度も会ったことがないのにサンプラザの楽屋の通路で、いきなり後ろからガバっと私の方に手を回して「ヘイ、ブラザー!」って。
誰かと思って顔を見たら、その人がディープ・パープルMKIIIのシンガー「デヴィッド・カヴァーデイル」だったのでアタシャ死ぬほど驚いたわ。
その時のコンサートのようすはコチラ⇒WHITESNAKE Live in Japanジョーくん、こうして見るとデビッドにソックリだな…ウソこけ!
「ココで、ココで、ココで、オレの大親友を呼んじゃおうかな?
オン・ボーカルズ、アキト!」←こういうパート名を表す時、正しい英語では必ず「vocal」に「s」を付けて「vocals」と表現します。「今日は珍しいアキトくんのハードロックが聴けますよ!と皆さんに触れ込んでおきました」
「不安でしかたねぇ。不安でしかたねぇぞ!
今日もギリギリまで練習してきた!」ブレイズブリンガーの2人が歌ったのはコレもホワイトスネイクの「Still of the Night」。
ジャズには「In the Still of the Night」っていうスタンダード曲があるよ。「不安」などオクビにも出さないアキトくんの堂々たる歌いっぷり!
ベテラン・クラシック・ロッカーのジョーくんも安定のシャウトっぷりでエキサイティングなツイン・ボーカルズのパフォーマンスとなった。
「ハァ~ハァ~…アキトもちゃんとハードロックしてたよな?
ヨカッタね!」
「ハモれた、ハモれた!」 「ボクは普段『ブレイズブリンガー』というバンドでボーカルをしていまして、その相方がアキトなんでございます。
そんなブレイズブリンガーに曲を提供をしてくれたJien Takahashiがいますので、今日はその曲をジックリと披露して終わりたいと思います!」最後に演奏したのはそのブレイズブリンガーのキラー・チューン「菫色の肖像」。
ステージ上の全員が持てるエネルギーをすべて出し切り、どこまでもパワフルにショウの最後を飾って見せてくれた!
こうしてジョーくんの「はじめてのセッション」は華々しく幕を下ろしたのであった。