和洋折衷 -異国の宴- Vol.2~犬神サアカス團
今日と明日でレポートするイベントはMarshallが結んだ縁で実現した…ハズ。
…というのは、昨年5月にMarshallの社長が来日した時に開いたパーティで、FATE GEARのMina隊長が同席した犬神サアカス團の情次さんをお誘いしたことに端を発しているのが今日の企画…のハズ。
『和洋折衷 -異国の宴-』と題されたこのイベントには3つのバンドが出演した。
犬神サアカス團は2番目の登場。
最近作『東京2060』の冒頭の口上とともにステージに現れた4人。
円陣を組む…最近作『東京2060』リリース後のライブでのルーティン。
犬神凶子
明さんの小気味よいドラムスにセリフを乗せる。
「♪歌詞を間違えれりゃ叩かれる
ピッチが悪けりゃ叩かれる
元気に歌えばマジメにやれって叩かれる
マジメに歌えばノリが悪いって叩かれる」
ホントだよね~。
「盛り上がっていくぜ~!」
犬神サアカス團の「The Show Must Go On」がこの「ロックンロールを唄いきれ」。
『東京2060』のリード・チューン。
勘違いしている人が多いようなので言っておきますけど、有名なレオ・セイヤーの「The Show Must Go On」は「それでもショウは続くけど、負けずにガンバルぞ」という芸人魂の歌ではありませんからね。
アレは「それでもショウは続くけど、もうこれ以上できません」という敗者の歌なのよ。
「ロックンロールを唄いきれ」は歌詞と曲と演者がいい具合に組み合わさった犬神さんにしか作れないロック芸人讃歌だ。犬神情次2号
ハード・ロック・ギターのお手本のようなサウンド!
もちろんそのギター・サウンドはMarshallあっての話。
今日も愛用のJCM800 2203でゴキゲンなプレイを聴かせてくれる。
犬神ジン
今日もオープニングからテンションの高いプレイでブッチぎる!
「♪ワンツー!」
2曲目はグイと時間軸を過去に戻して「たからもの」。
この曲は昨年の『ショートプレミアム興行』以来かな?
ハードなGSみたいな雰囲気がタマらん!
「今日のお客さんは私たちのことを知らない人ばかりだと思います。
今年25周年を迎えました新人の犬神サアカス團です。
最近女の子のバンドさんからよく誘われて困っています…会場が男の人ばかりだから。
男は疲れてるのかな~…私は今日も元気イッパイがんばりたいと思います!」次も明さんのドラムスがリードしてスタートするアルバムのタイトル・チューン「東京2060」。
情次さんのギターと…
凶子さんの3人が奏でる導入部のカッコよさったらないぜ!
こうして聴いてみると、この曲も「ハードボイルドGS」って感じだな。
GSは日本のロックのルーツなんだよ。
だから犬神のロックはとても心地よい。
日本のロックがオリジナリティを見せたのはGSからなのだ。
イギリスのロックの歴史と大きく異なり、幸か不幸か英語ができない日本人が自然にたどり着いたロックへの入り口がGSだったのだ。
「他の2つのグループがお耽美かな?と思ったので、私たちもお耽美な感じの曲を持ってきました!」
ナニを演るのかと思ったら、『東京2060』から離れて『ここから何かが始まる』から「黒い花が嗤う」。
なるほどコイツァ、オタンビーだ!
え~、『ここ何』からもう4年も経っちゃったのッ?
始めてこの曲を聴いた時にはこのイントロ・リフというか、キメというか、トゥッティというか、その長さに驚いたものだった。
この曲ってマイナー・ブルースなんだよね。
「ブルース」に聞こえない犬神のブルース。
こうしたベーシックな要素をガッチリ取り込んでいるところがステキ。
ココで大盛況だった単独公演の告知をして…
「楽しい時間はアッという間です。残り4曲!」
「エエ~!」
「"後見えてるよ~!" コレ、ひとつめのバンドさんが言ってたの。いいな~、と思ってやってみました。マネしていこう!
ん~、どうしても亀有を思い出してしまう!
犬神レパートリーの中にあってはやや異色の一作。
前作『新宿ゴーゴー』の「マクンバの夜」では「2・3クラーベ」を聴かせてくれたけど、こういう毛色の変わったのを演るなら、今度は「火葬場ルンバ」とか「マンボ絶望」とか「詐欺師のフラメンコ~オレオレ!」とか、大胆にロック以外のリズムを取り入れてみてはいかがかしら?
「さ~、せっかくだから私たちと歌おう!」
コレはもう定番でしょう。
この曲ってドアタマを派手に「食う」でしょ?
そこがミソなんですよ。
いつも言っているけど、こういう曲を演るバンドの再興を切に願っています。
そして、最後は「最後のアイドル」…略して「最アイ」。
犬っ子さん達が手にしたポンポンで客席の最前列はまるで一気に花が咲いたようだ。
写真はないけど。
今日、犬神サアカス團は「ロックンロールを唄いきれ」と「暗黒礼賛ロックンロール」の2曲を演奏した。
「ロックンロール」という単語が入った2曲だ。
凶子さんがその「ロックンロールを唄いきれ」で「♪斜陽の音楽産業に 明日がないの知ってるさ それでもコレしか出来ることがない」と歌う。
そして、数日前に内田裕也さんが亡くなった。
「ロックンロール」という言葉って、今後はもう犬神サアカス團しか使わないのではないか…なんて考えてしまった。
ナゼかというと、いつも書いているように、「言葉」というものはそれに該当する「物」が無くなると消滅してしまうからだ。
一方では裕也さんの訃報に際して「ロック魂」という言葉がやたらと耳に入ってきたが、一体「ロック魂」ってなんだろう。
すごく不思議な言葉に聞こえるんだよね。
回転レシーブをしながら歌ったり、大きな古タイヤを腰につけてギターを弾いたり、うさぎ跳びをしながらベースを弾いたり(ジン兄さんはコレに近い)、鉄ゲタをはいてバスドラムのペダルを踏んでいるバンドというのが私のイメージかな?
まさか…。
やっぱりロックのルーツをたどればわかるように「反骨精神」ということでしょうな。
しからば、今テレビに出ているような「ありがとロック」の若いバンドさんには「ロック魂」が宿っているって言えるのかな?
彼らにはそんなの必要ないか…。
ロックがまだマイナーな時代には「ロック魂」なんて言葉はなかったように思うんだけど、いつからこんな言葉が使われるようになったんだろう…AC/DCから始まったのかな?
『ロック魂』と邦題が付けられたAC/DCの1977年の4枚目のアルバム(日本ではデビュー・アルバムだったのかな?)の原題は「Let There Be Rock」ですからね。
この使役の「let」と「There is/There are構文」を組み合わせた文章は一瞬わかりにくいけど「ロックをあらしめよ」という意味で、「Let there b light(光よあれ)」という聖書の一文の転用だ。
聖書を読んだことのない私は、フランク・ザッパのライブ盤を聴いていてコレに気が付いた。
当時の日本のレコード会社の宣伝担当の人は「ロック魂」という邦題が浮かんで「やった!」と思っただろうな~。
実はこういうことこそが日本のロック・リスナーを「本来のあるべきロックの姿」から遠ざけている遠因のひとつだと思うんですよね。
私がとにかくこの4人に「犬神魂」を継続していってもらいたいと強く希望するばかりだ。
ん?最後まで書いて気が付いた…鹿鳴館で犬神サアカス團を観たのは初めてのことだった!
「お父さん、お母さん、ヒットもないまま25周年を迎えてしまいました…。」
インディーズに返り咲いた犬神サアカス團の暗黒ロックを網羅した最新ベスト・アルバム『グレイテスト・ヒッツ -GOLD-』が6月5日にリリースされるのが待ちきれない!
25周年おめでとうございます!
犬神サアカス團の詳しい情報はコチラ⇒公式家頁
<つづく>
※今回は『私のディープ浅草』はお休みさせて頂きます。ネタは用意できているんだけど書く時間がないの!次回ゼヒ読んでやってください!
(一部敬称略 2019年2月9日 目黒鹿鳴館にて撮影)