ブルースの犬たち~Tomi Isobe & Blues Dogs
昔、イギリスの人気作家、フレデリック・フォーサイスに『戦争の犬たち』という小説があった。
クリストファー・ウォーケンとトム・べレンジャーの主演で映画化もされたが観たかどうかも覚えていない…そういうのはきっと観ていないんだろうな。
でも、中学校の時にこの原作が上梓されて、タイトルがとても印象に残った。それを読んだかどうかも覚えていない…そういうのはきっと読んでないんだろうな。
『戦争の犬たち』は原題を『The Dogs of War』という。
そうだ、トム・べレンジャーで思い出したけど、『山猫は眠らない』という狙撃手を演じた映画があった。アレ、すごくおもしろかった。
第1作がヒットしてシリーズ化されたようだけど、ナンてヒドイ邦題だと思ったよね。
私はやったことがないけど、この映画について外人と話をする時、間違えても『Wildcats never sleep』などとやってはイケない。コレ、原題を単に『Sniper』という。
で、今日はその「The Dogs of War」になぞってタイトルを『ブルースの犬たち』としてみた。
主演はハワイからやってきたブルースの親分犬、Tomi Isobe。
Marshall Blogは昨年に続いて2度目の登場だ。
前回は『士農工商犬ブルーズマン』というタイトルで16公演をこなしたが、今回はナント!スケールをギンギンにアップしての全22本!
昨日は高円寺で、今日の夜は福井だって!
スゴイな~。私なんかとても務まらんね。
今頃、「ヨーロッパ軒」でパリ丼でも食べているのだろうか?
それとも国道8号線沿いの「8ばんラーメン」か?
打ち上げはやきとりの名門、「秋吉」で間違いないだろう。今回のTomiさんの来日のご用向きはコチラ。
昨年4月の来日時に金沢で録音したライブCD『HOWLING IN KANAZAWA』のレコ発ツアーなのだ。
上でチョコっと触れたように、そのツアーのちょうど真ん中となる11本目の公演である高円寺のJIROKICHIにお邪魔してきた。
Marshall ASTORIA CLASSICをツアーを通じて使用。
ドラムスはマーブロではTHE FEB等でおなじみの小野秀夫。
今回のツアーは各地でゲストが迎えられるが、前日の横浜と本公演では前回と同様に稲葉雅裕がジョインした。
稲葉さんもMarshall。
昨年はASTORIA CLASSICでステージに立って頂いた。
それで、今回はTomiさんがASTORIA CLASSICを使用しているというワケ。
稲葉さん、今回はASTORIA CUSTOM…と思うでしょう。
実は、中身はCLASSICなの。
だから今日はASTORIA CLASSIC大会なのです。
アレ?
Tomiさん、しばらく見ない間にサム・ピックになってる!
何でもジョニー・ウィンター譲りだとか…。
しかし、サム・ピックの利便性ってのはインスタグラムの面白さぐらいわからないな~。
チェット・アトキンスやドイル・ダイクスのようなフィンガー・ピッカーならわかるんだけど…。
簡単にズレちゃいそうだし、ズレないように強くしてハメると血が止まりそうだし。
でも、とりあえず他と違っていてカッコいいよね。
ん~、コレですよ。このベース。
オガンちゃんが音を出した瞬間、フワ~っとバンドの音がブ厚くなる。
オガンちゃんとか広規さんとか…このベースの魔術は一体なんなんだろうね?
前回はES-335だった稲葉さん。
今回はSGを携えてのご登場。
ASTORIAとSGの音って初めて聴いたかも?
聴いても観ても超安心な小野さんのドラミング。
小気味よく66号線をスウイング!
2曲目の「Messed Up」はTomiさんのオリジナル。
ファンキーなブルース。
Tomiさんのシャウトが実に気持ちいい!
ゼンゼン「mess」じゃなくて「spick and span」。
ギター・ソロではASTORIAがTomiさんのハートをバッチリと歌い上げちゃうよ!
「話題沸騰のハワイ島から来ました」
キラウェア火山のことね。
被害に遭っているのは全島の1%程度なのでご心配なく…とのこと。
「今日は知らない曲だと思ったらオリジナル曲だと思ってください!」
…とご挨拶の後は「Trouble in Mind」。
Richard M. Jonesというジャズ・ピアにストが作った8小節のブルース。「Ain't Nobody's Business」と同じ。
1924年の作品だというからもう少しで100歳になる曲。
関東大震災の翌年にアメリカのヴォードビル・シーンではこんな曲が演奏されていた。
続いてはおなじみの「Rock me Baby」。
この曲って一般的にはB.B. Kingの作とされているけど、実は作者不詳になっているらしい。こんなに有名な曲…印税はどうなってるのかしら?
次はTomiさんのオリジナル曲で「Never Gonna Let You Go」。
稲葉さんのギターがガッツリとフィーチュアされる。
ん~、出てくるフレーズがいちいち味わい深い。
今度はB.B.Kingで「Thrill is Gone」。
前回も取り上げて今回のアルバムにも収録されている。
Tomiさんの声にとてもよくマッチしていて、愛唱ぶりがヒシヒシと伝わって来る。Tomiさんの歌とともに稲葉さんと…
第1部を締めくくったのはファンキーな「Doughouse of Love」。
この曲のオガンちゃん、スゴかったな~。
ジックリ聴きたいベース。
第2部のオープナーはジョニー・ウィンターで「Stranger」。
シュワンシュワンとフェイザー・サウンドが飛び交う。
Tomiさん、コレが演りたくて1年間首を長くして待ってたんだって!
「気持ちが盛り上がりすぎて最初のところ間違えちゃった!」…言わなきゃわからないですって。
だってこの曲が収録されている『John Dawson Winter III』なんて普通の人はほとんど聴かないと思いますよ。
ボトルネックで彩を添える稲葉さん。
稲葉さんもガッツリとフェイザーをかましての登板だった。
みんな、ジョニー・ウインター好きネェ~。
次も皆さん大好きなFreddie Kingで「Sugar Sweet」。
稲葉さんが猛然と16分のカッティングをブチかます!
かなりエキサイティングなシーンだった。
またB.B.Kingを取り上げる。
「朝起きたら母ちゃんがいない」と紹介したのは「Woke up this Morning」。
コレは盛り上がるよね。
私なんか恥ずかしながら、この曲は高校の時にNazarethで知ったからね。
タイトルは同じ。違う曲なんだけど内容は同じ。早い話が「パクリ」。
Nazarethの方は「朝起きたらイヌが死んでた」、「ネコが死んでた」、「ブタがいなくなってた」ってな具合。
いいの、いいの、コレで。
どうせロックはブルースの子供だから。
でも今のロックは子供でも孫でもない。「ブルース」という祖先と血脈が途絶えちゃったから。
「次はボクの大スキな曲。聴いたらわかると思います」…とエッタ・ジェイムスの「I'd Rather Go Blind」。
いい曲だな~。
Tomiさんも情感豊かにギターの音を並べていく。
やっぱASTORIAの音の良さは筆舌しがたいね。
今回のツアーでも各地でお客さんが終演後にアンプのチェックをしていたそうだ。
Marshallなんですよ~!「空いているスペースで是非踊ってください」
ロマンチックにビリー・プレストンの「Will it Go Round in Circle」をプレイ。
前回のライブではTomiさんの半生をテーマにセットリストが組まれたのだが、その中に「Single Daddy's Blues」というオリジナル曲が含まれていた。
ま、説明しなくても意味と内容はおわかりでしょう。
コレぞブルース。
軽快なシャッフル・ブルース「I'm Coming to You Baby」。
Tomiさんのブルース・ナンバーはBbのキーが多いそうだ。
ナゼなら管楽器の連中と演奏する機会がおおかったら。
そう、ジャズのブルースではFとBbがダントツに多く、Eb、C、Abあたりが続く。
そこへいくとギターは自由だからね。ジョー・パスなんかはよくGで演ったりするし、ウェスには「D Natural Blues」なんて有名なオリジナル曲もあるよね。
いよいよクライマックスを迎えた4人の熱演が実に気持ちいい!
第2部を締めくくったのはTomiさんのオリジナル・バラードの「You my Lady」。
ジックリとシットリと歌い込んで本編の幕を降ろした。
アンコールもジョニー・ウインター・ネタ。
「Bonnie Maronie」を痛快にカッ飛ばした!
MCでTomiさんが「La Bamba」や「Come on Let's Go」や「Donna」で有名な「リッチー・ヴァレンスの…」と紹介した。
確かにリッチー・ヴァレンスも演奏していたが、作曲はLarry Williamsという人。
この人は「Bad Boy」や「Slow Down」、「Dizzy, Miss Lizzy」等のロックンロールのスタンダードを残した人。
ビートルズ好きならピンと来ることでしょう。
そう、ジョン・レノンがファンだったんだって。だからビートルズはこれらの曲をレパートリーにしていたんだね。
スペイン語がまったくできない私が全編言語で歌えるということで「La Bamba」で脱線すると、元々この曲はメキシコの民謡で、それをヴァレンスが手を加えてヒット曲に仕立て上げた。
「La Bamba」はアメリカではじめてヒットしたスペイン語の曲なのだそうだ。
「自分だけのサウンドを作りたい!」と、この辺りを描いたシーンが印象的だったルー・ダイアモンド・フィリップス主演の伝記映画『ラ★バンバ(La Bamba)』は存外におもしろかった。
「Sleepwalk」が効果的に使われていたのはこの映画だったっけ?
ブレイクし出した途端にヴァレンスは飛行機事故で他界。18歳だった。バディ・ホリーもそうだけど、まったく気の毒なことだ。
しかし何が驚くって、この風貌で18歳だからね。
イヤ~、何しろ4つの個性が真っ向からブツかり合ったこの日のギグ。
ひとりでも多くの人に観てもらいたいと思って、突貫で今日の記事を書き上げた。
今晩の福井を含めて北陸や西筋の公演と、東京ではTomiさんのソロ・ライブが残っているからね。
お近くの会場で魂の歌と演奏にドップリと浸かってくだされ!
蛇足の脱線。
上に書いたようにホント、皆さんジョニー・ウインターお好きですよね~。
私はどうも苦手で…ジョニー・ウインターとニール・ヤングはどうも受け付けない。
でもね、昔は聴いていたこともありましてね。
それが、さっき出てきた『John Dawson Winter III』というアルバム。
中学生の時に2つ年上のイトコが好きで私も一時よく聴いた。
だからリハーサルの時に稲葉さんが「Golden Olden Days Of Rock & Roll」のイントロを弾いたときはなつかしくて涙が出たよ。
そういえば『俺は天才ギタリスト』という邦題もいい加減ヒドイな。『ザ・ギタリスト・パ』よりはまだマシか?
ファースト・アルバムなんかも高校に入りたてぐらいの時に買って、アレでWillie Dixonの名前を覚えた。
でもね、あの名盤とされる『Johnny Winter And Live』とか『Captured Live』をさかのぼって聴いてみるに、どうにもキツくて…。
『Nothin' But the Blues』には手を出さずして撤退した。
同じライブ・アルバムでもエドガーと組んだ『Together』は大好きで、長野でハコバンをやっていた時にこのアルバムに収録されている「ロックンロール・メドレー」を演ったこともあった。
私の思い出なんざどうでもいいんだけど、つい懐かしくて書いちゃいました。
(一部敬称略 2018年5月31日 高円寺JIROKICHIにて撮影)