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2013年5月20日 (月)

ジム・マーシャルの生涯を祝う会

Shige Blog 2012年6月15日初出

マーシャルの創設者ジム・マーシャルが去る4月5日、鬼籍に入ってしまった。
そしてお葬式とは別に、偉大なるジムの功績と人生を祝う会がMarshallの本社があるイギリスのミルトン・キーンズで開催され、私のところにも招待状が届いた。
Jim_IMG_5487
もう私はマーシャルの仕事から離れてしまっているが、「もしジムにもしものことがあって何がしかの行事を催す際には必ず連絡する」と言ってくれていた社長がその約束を果たしてくれたのだ。
もちろんその場合には私も万難を排して参席するつもりだったのだが…旅費がない!
そこで所有していたギターを9本ほど売却して航空券を購入した。Jim_IMG_5480
そして、イギリスまでひとっ飛び。Jim_IMG_8464
会場は工場にほど近い「Wilton Hall(ウィルトン・ホール)」というところ。
かつて「創立40周年記念パーティ」が開催された施設だ。
「町の公民館」風と言っては聞こえは良くないが、ジムの地元中の地元の立派なホールだ。
入り口で来客を待ちうけるJVMのフル・スタック。
Jim_IMG_5851
会場に入ると、ジムの半生をつづった『THE FATHER OF LOUD』の表紙のおなじみの写真が…。Jim_IMG_5788
ジムの足跡を記した巨大なボード。Jim_IMG_5966
冒頭に掲載した会の招待状にはこう記してあった。
「ジムとの思い出の写真をご持参ください。会場に専用のボードを用意しておきますので、そこにその写真貼ってください」と。
私もジムが2003年に最後に来日した際の写真を持って行った。Jim_IMG_5778
貼ってあるのはどれもジムに関する感慨深い写真ばかり…っと、よく知っている顔を発見!Jim_IMG_5780
…って私です!しかも2枚も貼ってある!
1枚は2009年に「Shige Award」を受賞した時のもの。
ま、こっちはまだイイかも知れないけど、もう1枚はホテルの部屋で酔っ払ってギターを弾いている時の写真じゃんか~!
恥ずかしい!
さてはピーターのシワザだな…?Img_5776 他にもジムにまつわる思い出の品がゾロリ!Jim_IMG_5782

Jim_IMG_5781
エリザベス女王から下賜された『The Queen Award』の賞状や…Jim_IMG_5784
「Dr.Jim Marshall」の「博士号」の授与証書などが誇らしげに展示されていた。Jim_IMG_5785
ステージの両サイドにはジムの遺影が飾られ、中央のスクリーンにはジムの思い出の映像や出席できなかった関係者からのビデオ・メッセージが上映された。Jim_IMG_5794
会場は200名を超す招待客でイッパイ。
東洋人は私ひとりだけで、目立つ目立つ!
もちろん出席者はジムにゆかりのある人ばかり。Jim_IMG_5792
とてもうれしかったのは、招待客の中に何とケン・ブラン氏がいらっしゃって、アメリカの友人に紹介してもらって一緒に写真を撮らせてもらった。
ご高齢のため足をお悪くされているが、実にカクシャクとされていて、しかも物腰の柔らかいとても素敵なおじいちゃんだった。
「この人がJTM45を設計したのか…」と感無量で握手をしてもらった。Img_5796 ひとしきりバーでイッパイやりながら旧知の仲間とジムの思い出を語り合った後、決められた場所に着席。
私はカナダのピーターの隣りで、「ピーターでしょ?あの写真を貼ったのはッ?! 恥ずかしいじゃんか!」と問いただすと「キヒヒヒヒ!」とイタズラっ子のように笑っていた。Jim_IMG_5791
そして、会が始まった。
トップに挨拶をしたのはマーシャル社社長のジョナサン・エラリー氏。
私をこの会に招待してくれた人。
Jim_IMG_5805
続いて壇上に上ったのはこの日の司会を務めたドラマーのニコ・マクブレイン。Jim_IMG_5810
ジムのドラム仲間であり、最良の友でもあったニコ。
ジムの思い出を切々と語ったのち、司会の大役を着実にこなしていた。
彼の軽妙洒脱ぶりは定評のあるところだ。
Jim_IMG_5807
続いて挨拶をしたのはこの方…誰かににてるでしょう?
そう、ジムの実弟のアル・マーシャル氏だ。
兄弟しか知り得ない昔の話しを面白おかしくしてくれた。
Jim_IMG_5822
こうしてジムの友人や、お世話になった人、仕事仲間たちが順々に登壇し弔辞とスピーチを捧げた。
THE WHOのピート・タウンゼンドからはビデオ・レターが寄せられた。
ご存知の通りピートはマーシャルを使わないが、彼なくしては絶対にマーシャルはあり得なかった。
メッセージでピートは実に淡々と思い出を語った後、「じゃあな、ジム!」と締めくくった。
ピートらしいカッコいいメッセージだった。
様々な業界からの来賓のスピーチが続く。Img_5869 さて、ここからは世界中から駆けつけたディストリビューターたちの中から、スピーチをした私の仲良したちを紹介しておく。
アメリカからミッチ・コルビー氏。
彼も今はMarshallから離れてしまったが、ディストリビューターとしては世界でも最も長くジムとお付き合いをしたのではなかろうか?
自身もアンプのコレクターで、優れたジャズ・ギタリストでもある。
「はじめて見たマーシャルの壁はニューヨークで見たクリームだった!」という話しが印象的だった。
スゲエな~。
確か横尾忠則のニューヨークでクリームを見ているハズ。
「あまりにも音が大きくて気分が悪くなった」と何かの本に書いてあった。
それ、Marshallです。
Jim_IMG_5840
おお~、さすがミッチ!
ジムの十八番のコルクのトリックだ!ちゃんと仕込んで来たんだ?!
と思ったら…「私にはできません!」
そういえば、私が楽器店の皆さんをMarshallにお連れしてジムといっしょに食事をした時、まだジムはまったく元気で、みんなの前でこの手品を見せてくれたっけ。
アノ時は本当に楽しかった。
ところで、その「手品」というのは至極シンプルなもので、左右の手の人差し指と親指ではさんだコルクを交差させて、チチンプイプイと呪文を唱えるとアラ不思議!
交差しているので離すことのできないハズの両手が離れてしまうというもの。
私は何回も目にしたが、「おお~!ワンモア、ワンモア!」という歓声に応え、「フォッフォッフォッ…」とドヤ顔で何回もやって見せてくれるジムがいつもチャーミングだった。Jim_IMG_5853
おとなりアイルランドからレスリー・ケイン氏。
いつも私によくしてくれる大の仲良し。
Jim_IMG_5892
レスリーもベテランだけにジムとのお別れは相当辛いものであったハズだ。
会議の時には強情な論客のレスリーもこのスピーチ後半では涙ぐんでしまい、見てるこっちもホロっときてしまった。
Jim_IMG_5893
ピーターの出番!
この人があの写真を貼っつけたのよ!
会議で集まった時、いつもホテルの彼の部屋に集合して、ラム酒を飲みながら遅くまでギターの腕比べをしたものだった。
え、どっちがウマかったかって?
彼、彼!
熱心なマーシャル・ブログの熱心な読者の方なら覚えていると信じているが、一度登場してもらったことがあった。
彼は過去にプロのバンドでデビューしており、そのマボロシの音源について私がマーシャル・ブログで一筆奮ったのだ。
彼はその記事を大層気に入ってプリントアウトして額に入れ、自宅の壁に飾ってくれていた。
よく自分でアレンジしたビートルズ・ナンバーを弾いて聞かせてくれた。
Jim_IMG_5899
ピーターのジムとの付き合いはミッチほどは長くはないがかなりの古株。
ジムを心から信奉していた。
それだけに彼のショックも大きいかったろう。
スピーチもとても真摯なものだった…あんな写真のイタズラしたくせに!Jim_IMG_5900
スティーヴ・ウッド氏。
ジムのchauffeur(ショウファー)、すなわりお抱えドライバーだった人。
イヤ、家族といっていいだろう。
この立派な体躯を活かしてジムを車イスごとヒョイと抱えて車に乗せることができた。
とても献身的に世話をし、ジムから絶大な信頼を得ていた。Jim_IMG_5906
よくマーシャルへ行くと迎えに来てくれたり、送って来てくれたりで、車中私と冗談を言い合っては大笑いするのが常で私も彼と会うのを楽しみにしていた。
そんな旧知の中なので、一体どんなスピーチをするのかと思っていたら意外にも淡々とジムの思い出を語った。
Jim_IMG_5904
ところが、話しているうちにあまりにも色々な思い出がよみがえってきたのだろう。
感極まってオンオンと大声を出して泣いてしまったのだ。
スピーチ後、ニコと抱擁し合うスティーヴ。
見ているこっちもグっと来た。
会場は割れんばかりの拍手!この日のクライマックスだった。
やっぱりとてもやさしい男だったんだな、スティーヴは!
Jim_IMG_5913
マーシャル社からインターナショナル・デモンストレーター兼ニュー・プロダクト・コーディネーターのクリス・ジョージが登壇した。
彼もフランクフルトMESSEのレポートなどでブログに登場しているので顔を覚えていらっしゃる方も多いだろう。
Jim_IMG_5917
彼は今、9月にロンドンのウェンブリー・アリーナ(ウェンブリー・スタジアムのとなり)で開催される50周年記念コンサートの仕込みに取り組んでいる。
また新しく始まる50年に向けて意気揚々とした若々しいスピーチが印象的であった。Jim_IMG_5920
さらにマーシャル社からマーケティング&アーティスト担当のニック・ボウコットが登壇。
彼は元グリム・リーパーのギタリストでジムとの付き合いも深く長い。Jim_IMG_5921
ジムを出来る限りの爆音で送り出そうと、参席者全員に手を叩き足を鳴らすよう求めた。
ドド~っとモノすごい音が会場を揺るがした。
ユーモアあふれるニックらしいスピーチであった。
Jim_IMG_5925
他にジムのドラム教室の生徒であり、ジムの店の最初の従業員だった方や、ジャズ歌手のデイム・クレオ・レーン!(仲良しだったそう…知らなかった!)といった方々もスピーチを披露。Img_5837 また、ジムはマーシャルだけでその名を世に知らしめたワケではなく、OBEの勲位が示す通り、病院やスポーツ団体など多方面にわたってたくさんの寄付をした篤志家としても高名であった。
一方では、ジムが世界的なギター・アンプを作っている会社の創業者であることを知らない人も多かったらしい。
そうしてお世話になった方々からの心温まる言葉も寄せられ、ジムの生前の偉業がさらに浮き彫りにされた会となった。Img_5927関係者のスピーチがすべて終わり、宴もたけなわ。Img_5930ステージにはジャズのコンボが登場し、ジムの愛唱曲を演奏した。Img_5954演奏にはクリスも参加して、会の最後を華やかに締めくくった。Img_5952 下は参列者に配られた会のしおりとジムの歌が収録されたオーディオCD『Reflection of a Man』。こうしてジムの声が参列者の元に半永久的に留まることとなった。Jim_IMG_8480
そのしおりの内側。ボロボロのキャビネットに刻まれたジムの言葉は「私の辞書には世界で最高のものは音楽だ…と書いてある。音楽にかなうヤツはいない」…その通りだ。Jim_IMG_8491
後先になったが、会の冒頭に上映されたフィルムにはツェッペリンの「Whole Lottta Love」に乗せてジミ・ヘンドリックス、リッチー・ブラックモア、ピート・タウンゼンド、The Who、スパイナル・タップ、ゲイリー・ムーアが登場した。そしてフィルムの最後に出た文字は「To Be Continued」…。

そう、音楽がある限りマーシャルは不滅なのだ…。
もう一度言おう…ありがとう、そして、さよならジム!
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そして、またマーシャルの新しい50年が始まった!
Jim_IMG_6078
 この時のイギリス滞在のレポートをShige Blogに掲載しました。併せてお楽しみください!

Shige Blog はコチラ⇒イギリス紀行2012
 
200 (敬称略 2012年5月27日イギリス、ミルトンキーンズ、ウィルトン・ホールにて撮影)