犬神サアカス團:花、地獄に咲く花<後編>~私の谷中墓地(その21)
犬神サアカス團、4月の単独公演『花、地獄に咲く花』の後半。
幣(ぬさ)を手にした凶子姉さんが歌うのは「人面庁」。
いわゆる「人面瘡」の歌。
この曲を聴くと手塚治虫の『どろろ』を思い出す。
凶子姉さんが狂ったように振り回す幣が、まるでチアリーディングのポンポンのようにリズミカルに曲を彩る。
「人面瘡」ってのは日本だけかと思っていたらこの手の話しは海外にもあるんだってね。
アメリカに「エドワード・ルーカス・ホワイト」という作家がいて、『ルクンドオ(邦題:こびとの呪い)』という小説がよく知られているらしい。
明兄さん、読んでみて!
「ハチマキってどうなの?ってズっと思ってんだけどさ、ハチマキといえば『岩下志麻』か私かでしょ?
アッハハハハ!
岩下志麻の次に私が似合うと思ってるよ。
あの『卑弥呼』って映画を観た時、やっぱハチマキはヤベェって思ったしさ。
ホラ、あるじゃん?丑の刻参りとか。
みんなハチマキやった方がいいって。ハチマキやってるバンドなんてある?
誰もやらなかったね」
「岩下志麻」が「卑弥呼」を演じていたなんて知らなかった。
それにしても岩下さんはどうしようもなくキレイだよナァ。
好みにもよるけど女優さんの中で一番の美人じゃないかとさえ思っている。
あの甘くて太い声がまたいいんだわ。
「俳優は顔より声の方が重要」とさえ言われているからね、志麻さんは完璧なの。
恐らくアレは野村芳太郎の『疑惑』で「球磨子」の弁護士役を演じるために勉強をしに来ていたんだろうと思う…私が高校生の時、東京地裁のとある裁判の傍聴席で彼女が私のすぐとなりに座ったことがあった。
いいニオイだった。
岩下さんの清張モノといえばこれまた野村芳太郎の『影の車』も好きな作品。
小津さんの『秋刀魚の味』はもちろん、中村登の『古都』や『紀の川』の文芸モノ、小林正樹の『切腹』や今井正の『婉という女』、木下恵介の『死闘の伝説』というバイオレンス作品、どれもヨカッタ。
よくテレビに出て来る「茂木健一郎」という脳科学者は『秋刀魚の味』を60回以上観ているそうだよ。
ま、私ですら3回は観ているもんね。
でもダンナの篠田正浩の作品はニガテ。
そんな中、志麻さんのおススメを1本。
またまた野村芳太郎で1967年の『女の一生』という作品。
『女の一生』といえば、号泣せずにはとても読むことができない遠藤周作の同名の連作小説があるけれど、この映画はフランスのモーパッサンの方。
かなり原作に忠実に日本版に翻案されている。
岩下さんもいいけど、「左幸子」がまたいいんだ~。
今知ったけどコレは「山田洋次」が脚色に加わっていたんだね。
だから余計いいのかも。
凶子姉さんが「岩下志麻」なんて名前を出すから予定外の脱線をしてしまったわ。
「春…ナニか新しいコトありますか?新しくやろうかナァとか、ナニか買おうかナァとか」
「犬神明です!」
「ヤッパリね、春だからやりたいことが結構あるんだよ。
その1つがヨガだね。
ズッと言っているんだけど、そろそろ本気でやろうかな…ホットヨガ。
普通のストレッチにもなるし、運動にもなるし、いつかやりたいと思っている。
身体は全然硬いです。
あとは動画編集に最近ハマってる」
最近、明さんは昔の「犬神サーカス団」時代のレアな動画を掘り起こしてSNSで公開しているからね。
まだまだ超貴重なマテリアルがあるんだってよ。
ということで明兄さんの動画編集に期待。
何しろ8mmのフィルムも残っているのだそうだ。
明兄さんの「春」が終わったところで演奏のコーナーに戻る。
曲は「太陽を待ってる」。
さあ、この辺からクライマックスに向けてジリジリと盛り上がって行くよ~!
明兄さんのドラムスをバックに…
この曲の見せ場の凶子姉さんとONOCHINの掛け合いが始まった。
リッチー・ブラックモア役のONOCHINがメロディを弾く。
その図太い音はMarshallから。
ONOCHINが使っているのは「JCM800 2203」と「1960A」、加えてエフェクト音用の「ORIGIN20」だ。
ONOCHINが弾いたメロディをイアン・ギラン役の凶子姉さんがなぞっていく。
コレで盛り上がっておいて明兄さんのドラムスがシャープなグルーヴをヒネリ出す。
明兄さんが叩いているのは愛用のNATALのアッシュのキット。
「さぁ~みんな!次は私たちと一緒に踊ろうか!
手を伸ばしたり、足をブランってやったり、背中が痛いかな?ってならないようにチョット身体を動かして!
大丈夫かな?大丈夫かな?
じゃあ行くべ!『栄光の日々』!」
ギターと掛け合いの敦くんのベースが今日もカッコいい!
お客さんは凶子姉さんと一緒に大きく手をフリフリ。
歌メロをウマい具合に取り込んだギター・ソロもバッチリだ!
凶子姉さんの指導でみんなで身体を動かして楽しいね!
ONOCHINが弾く「アメリカ国歌」。
そして凶子姉さんがタンバリンを手にすればそれはもう「ビバ!アメリカ」。
明にいさんと…
敦くんのシャープなロック・グループに乗って…
「♪ABC、LSD、CIA、USA」
凶子姉さんは「私の病気はアメリカ」、「あなたの病気もアメリカ」と歌うけど、今やアメリカの方がよっぽど重篤な病気に罹ってしまった感じですナァ。
まさかこの期に及んで「絶対君主の国家」が誕生しようとは!どうなるアメリカ!
「どうもありがとう。
みんな踊ったから疲れたでしょ…チョット座ってみるか。
こんなに座って観るのに慣れると他のライブには行かれないって。
ウチしか来れなくなる日が来るって。
HEAVEN’S DOORさんにお願いしてイスを買ってもらったんだよ。
スゴイよ」
「HEAVEN’S さんには昔からお世話になってるんだよね。
いつも無理をきいてもらって色んなことをやらせてもらいました。
そして椅子まで買ってくれた。
ところでキョンピはどうですか?今学期からやりたいこと」
「一昨年30周年の時にコノ衣装にして、そのまま去年も着ていたのね。
ナンかわからないけど気に入っちゃったから。
だから今年はチョット衣装を新しくしたいなぁ~とは思ってます。
兄さんたちの衣装はチョットまだわかんないけど…このままかもしんないね。
でも今のは悪くない。キラキラだもん。
顔がメッチャ光ってる。大事なことだ。
ということで今年は衣装を新しくしようかなぁ~と思ってますので楽しみにしててください」
さて今日の単独公演もクライマックス。
となると出てるは当然客席との「ロックンロール」の掛け合い大会。
明兄さんのドラムスに合わせて…
「ロックンロール!」
「暗黒礼賛ロックンロール!」
「やっぱりコレが出て来ないと!」的に出て来た定番中の定番。
ONOCHINが台に上がっていつもながらのシャープなソロを展開。
凶子姉さんと敦くんがそのすぐ後ろで盛り立てる。
コレもこの曲ならでは光景。
「さぁ~、次はコレだ!『自殺の唄』いくぜぇ~」
「♪死ね!死ね!死んじまえ!」
「♪死ね!死ね!死んじまえ!」
「♪死ね!死ね!死んじまえ!」
縁起でもないこのドライビング・ナンバーはいつも大ウケだ!
そして本編の最後を締めくくったのは珍しい…「犬神天国~ロックンロールファイヤー」。
狂ったように頭を大きく振るお客さんを血気溢れるパフォーマンスで応えた4人!
そしてすぐさまアンコール。
もちろんアンコールはコレから。
コレがなくてはアンコールが始まらない…
「カワイイ音頭」!
「アンコールありがとうございます。
お知らせがあります。
次のワンマンは6月日20日、ココ三軒茶屋HEAVEN’S DOORです。
タイトルは『無知なヤツラのユートピア』…『理想郷』と書いてユートピア。
コレがわかる人は昭和だね。
私たちは楽しくやっています。
これからもみななさんと一緒に楽しく演っていきたいと思います!」
アンコールでは「花嫁」と「命みぢかし恋せよ人類」を熱演。
今日もいいライブだった!
メンバーがそれぞれ台に上がってお客さんにお別れのご挨拶。
いつも賑やかな犬神サアカス團の物販。
ビデオ類やこれまで見たことがないアイテムが増強されて…
今回も大盛況だった!
次回はコレね。
犬神サアカス團の詳しい情報はコチラ⇒犬神サアカス團公式ウェブサイト
<おしまい>
☆☆☆私の谷中墓地(その21)☆☆☆
続いては「乙6号」のエリア。
ブラっとお墓を見て歩いていると、どんな人かは全く知らなくてもお墓の規模と名字を見ればだいたいその墓の主のステイタスが想像できる。
そして試しにインターネットにその墓の主の名前を入れてみると、案の定大半がウィキペディアに出ているような人ばかりだ。
例えばコチラの「綾小路」さん。
そしてこの墓石の立派さ…もう絶対にいい家柄にキマってるじゃん?
このお墓の主は「綾小路有良(ありかず)」さん。
で、調べてみると…アタリ!
綾小路家16代目の当主にして雅楽家。子爵。
綾小路さんのところは代々「郢曲(えいきょく)」の師範を務めているようた。
郢曲というのは、平安から鎌倉時代にかけての歌モノの宮廷音楽のこと。
「伊福部昭」さんが「鬢多々良(びんたたら)」という郢曲を作っているというので聴いてみると…雅楽のインストだった。
なかなかいいもんですよ。
下の方が綾小路有良さん。
侍従に任ぜられ孝明天皇や明治天皇に仕え、1886年から「歌会始」で「披講」の発声を担当した。
「披講」というのは、「♪ちは~や~ふる~~ かみよ~もきかず~」みたいに節をつけて歌を詠む係のこと。
有良さんは3オクターヴの声域を持っていたそうです。
しかし、千年以上も続いている歴史があるだけあって雅楽の世界もスゴイね。
仕組みやしきたりがゼンゼンわかりません。
続いては敷地内に碑が立っている立派なお墓。
コレは「重野安繹(しげのやすつぐ)」という江戸末期から明治初期に活躍した薩摩藩出身の漢学者、歴史家で「実証主義」を提唱した日本歴史学研究の泰斗。
墓石にあるように日本で最初の文学博士。
何でも同僚の金を使い込み、奄美大島に流されたというからエライんだか悪いんだかわからん。
その流刑先の奄美大島で西郷隆盛と出会ってセゴドンに漢詩の指導をしたという。
撰文は貴族院議員で従五位勲二等の文学博士「小牧昌業(こまきまさなり)」
篆額は京都帝国大学教授で同じく文学博士の「内藤虎次郎」先生。
柴又の「寅さん」と同じ名前だけどエライ違いだ。
「信欣三」という俳優のお墓。
「信(しん)」さんというのはご本名。「信金蔵」さんとおっしゃる。
おジイさんは尾張藩士で幕末には幕府軍に参加して箱館戦争を戦ったという。
私は古い映画が好きでここ数年は1950~1960年代の作品に夢中になっているが、このシリーズを書き始めるころまでは、正直「信欣三」というお名前は全く意識していなかった。
つまりお墓でこの俳優さんを知ったのだが、知らないウチにこれまで信さんが出演している映画をナント数多く観ていることか!
「エ~、アレにも出ていたの?コレにも出ていたの?」の連続。
この方が信欣三さん。
一方、下は「殿山泰司」のエッセイ。
まぁ、全編フザけているとしか思えない文章で読みにくいことこの上ないが、昔の映画界のことがたくさん記してあってとてもオモシロい。
私は役者のしての泰ちゃんが好きなのです。
で、この本に信さんのことが書いてある。
信さんの実家は銀座5丁目か6丁目にあった「函館屋」という食料品店で、日本で最初にアイスクリームを販売した店なのだそうだ。
そういう泰ちゃんの実家も銀座5丁目にあった有名なおでん屋「お多幸」だからね(現在は日本橋で営業中)。
銀座地区ということで2人は有名な「泰明小学校」のOB。
信さんの方が先輩で肝臓がんで亡くなった大酒飲みの泰ちゃんより飲んだらしい。
「チョット待てよ!日本で最初のアイスクリームは横浜の元町じゃね~のかよ?」と思われる向きもあるかも知れない。
下は元町にある「アイスクリーム発祥の地」のオブジェ。
コレね、確かに日本で最初のアイスクリームを作って横浜の馬車道で販売したのが「町田房造」という人だった。
ところが、一般市民向けにアイスクリームを売り出して日本で最初の専門店となったのが信さんの実家の「函館屋」なのだそうだ。
上に書いたように信さんのおジイさんは五稜郭で新政府軍と戦った人。
その時、幕府を支持していたフランスの軍人からアイスクリームの製法を教わったそうです。
少しだけ信さんの出演作を紹介しておくと…例えば1957年の小津さんの『東京暮色』。
コレは小津作品の中で最も陰鬱な内容で、私も2度ほど観たがあまり好きではない。
ネコちゃん(有馬稲子)ファンの私としては、この役どころがチトつらいのだ。
でも「明治大学」の校歌がフルコーラスで歌われるシーンがあるのはうれしい。
コレは最近観たんだけど同じく1957年の『青空娘』。
若尾文子の映画も一体どれだけ観たかわからないが、若い頃は本当に可愛いかった。
ハッキリ言って、もうどうしていいのかがわからないぐらいカワイイ。
役どころも多彩で、しかもその演技のどれもが素晴らしいときてる。
1954年、山本薩男の『太陽のない街』。
コレは「共同印刷」の労働争議をモデルにした社会派の作品。
信さんはそうした社会派や文芸系のシリアスな映画への出演が多かった。
とにかく立派なフィルモグラフィだ。
ココも立派な墓所で…
東京都が説明版を取り付けている。
幕末から明治にかけての公卿「大原重徳(おおはらしげとみ)」のお墓。
知ってる?
東京都がワザワザ説明板を取り付けるほどスゴイ人なのか?…って思うでしょ?
この人が重徳。
簡単に言って幕末にギンギンに攘夷を唱えて、「一橋慶喜」を将軍に、福井藩主の「松平春嶽」を政治総裁職という要職につけることを実現させた立役者というワケ。
説明板を取り付けた方がよいビッグな人が谷中には他にゴロゴロしていると思うんだけどナァ。
きっと私の理解が浅すぎるんでしょう。
墓所の奥にある碑には「閑院宮載仁親王(かんいんのみやことひとしんのう)」の撰文が彫り込まれている。
<つづく>
(一部敬称略 2026年4月26日 三軒茶屋HEAVEN'S DOORにて撮影)