【LOUD & METALLIC WEEK】RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2018 METAL MANIA <前編>~HELL FREEZES OVER
東京の街全体を舞台にした都市型音楽イベント『RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO』が去る9月22日から10月12日まで約1か月間にわたって開催された。
「RED BULL」…私は強烈な思い出があるんですよ~。
それはココ。
渋谷からいきなりロンドンのウェンブリー・アリーナに飛ぶ。
Marshallの「50周年記念コンサート」の時の話だから2012年の9月のこと。
もう6年も経ってしまって、Marshallももう50周年より60周年の方が近くなって来た。
50周年は「ゴールド・ジュビリー」、60周年は「ダイアモンド・ジュビリー」だからね。
また楽しみだ。
この時、ただでさえ時差ボケでヘロヘロでクタクタになっているところへ持って来て、前日は朝から夜10時までビッシリとリハーサルが入っていてそれにガッツリ付き合った。
ザックだの、イングヴェイだの、ケリーだののリハーサルだからして10時間以上爆音に浸かっていたのね。
もう身体ボロボロ。
そして翌日のコンサート本番。
カメラを3台を首からブラ下げて、大勢の屈強な外人のフォトグラファーの中にアジア人がたった1人混ざってプレスピットで4時間半。(みんなやさしかったけどね)
もう、「コレが自分の身体か?」というぐらい疲れ切ってしまって、終演後、さすがにスタッフの控室でヘタリこんでしまった。
その時、フト部屋の隅に目をやると、RED BULLが山積みになっているではないか。
私はその手のものを普段一切口にしないのだが、「コレって疲れが取れるヤツじゃん?」と思い、缶のサイズも小さかったので3本たて続けに飲んでみた。
3本の空き缶をひとっ所に集めておいたのだが、後から部屋に入って来たMarshallのスタッフがそれを見つけてやや驚き気味にこう訊いた。
「誰だ?コレ飲んだのは誰だ?」
それが勝手に手を付けてはいけないモノだったのかと思い、私は恐る恐る名乗り出た。
「シゲか?オマエ、3本いっぺんに飲んだのか?」
「そうだよ。あんまり疲れていたから」
「ダメだよ~!飲むのはいいけど、3本はダメ、ダメダメ!」
「え、ナニ?ナンなのッ?」
後で理由を聞いて驚いたけど、効果が絶大なので「過ぎたるは及ばざるがごとし」…ということなんだってね。
幸か不幸か、私の疲れの方が勝っていたらしく、全く何事も起こらなかったです。
渋谷に戻る。
今日はそのフェスの中のプログラムのひとつ『METAL MANIA』。
LOUDNESSをヘッドライナーに迎え4つのバンドが出演した。
会場のO-EASTのロビーにはこんな写真撮影コーナーが設置されていた。
Marshall Blogでレポートするステージは2つ。
当然ひとつはトリのLOUDNESS。
そしてもうひとつは3番手、トリ前にステージに上がったHELL FREEZES OVER。
いいね~、このドライアイス!カ~ッコいい~!
やっぱり化学薬品でモクモクと捻り出したそこら辺のスモークとはワケが違う。
昔のスモークはみんなこうだったんだよ。
この平均年齢25歳の若きメタル・チーム、Marshall Blogには早くも2度目の登場となる。
1曲目は「OVERWHELM」。
先ごろリリースされた彼らのファーストミニ・アルバム『SPEED METAL ASSAULT』のリード・チューンだ。
見てよ、この景色!
HIROTOMOくんの背後には1959のフルスタック。
RYOTOくんの「マーシャル2台積み」。
あ、私じゃないよ!
このMarshallを指して「2台積み」と表記しているライブ・レポートを目にした…きっと若いライターさんなのだろう。
「2台積み」…ある意味、新鮮な表現だナァ。でもどこをどう数えて「2台」なんだろう?
1960のことを指しているんだろうね?
それともキャビは1960が2台が合体していて、ヘッドとキャビで「2台」ということなのかな?
そんな…ピート・タウンゼンドじゃないんだから。
ひとつ確実に言えることは、残念ながらMarshall Blogをお読み頂いていないということだろう。
ま、そんなことは構わない。
でも、音楽に関係したプロのライターさんだったら例えハードなロックを専門としていなくてもMarshallの数え方ぐらいは知っておこうよ。ロックの歴史の一部を作った楽器なんだから。
我々の世代なら笑って済ますことができるけど、若い人がその文章を読んで覚えてしまったらマズイんだよね。歴史が書き換えられてしまう。
ヘルフリのみんなはこんなこと百も承知なので申し訳ないけど、せっかくの機会なので、ココでスタック・タイプ(積み上げ式)Marshallの数え方を勉強しておこう。
ムズカシイことはひとつもない。
ただヘッドとスピーカー・キャビネットの数を上から数えればOK。下から数えても答えは同じだ。
ちなみに、ギター・アンプに「Stack(スタック)」という言葉を使ったのはMarshallの創始者、ジム・マーシャルだと言われている…というより、実際にジムが私にそう言っていたので間違いないだろう。
「シゲ、スタックという言葉はね、私は最初に浸かったんじゃよ、フォッフォッフォッ」って。
ハイ、やってみましょうか?
下の写真は、ヘッドはJVM410H、それにスピーカー・キャビネットの1960A、それに1960B。
ヘッドで1、Aキャビネットで2、Bキャビネットで3。
だからコレで「3段積み」。
Aは前面に角度がついているのでAngled、Bは下に使うことが多いのでBaseという名前がついていて、それぞれ「A」、「B」と表記される。
この3段積みのスタイルを英語で「Full Stack(フル・スタック)」と呼んでいる。
昔は、ヘッドが今で言うビンテージ・タイプのものしかなくて、100W出力の1959のヘッドに、これまた今で言う1960AXと1960BXというキャビネットを組み合わせて「UNIT3」と呼んだ。
ヘッドがベース用の1992になると「UNIT22」とかね。
とにかく「2台積み」ではないことは私の家内でもよく知っている。
一方、下の写真のようにヘッドとキャビネット1台ずつのパターンを「2台積み」といいます。
ウソウソ!
Marshallに「2台積み」という言葉など断じてありません。
「2段積み」です。英語では「Half Stack(ハーフ・スタック)」。
100Wヘッドと1959の2段積みは「UNIT17」。
対して50Wヘッドである1987との2段積みは「UNIT15」だった。
あ、こんなの覚えなくでもいいですからね。試験には出ません。
モデル名に使われている数字に全く意味がなくてヤヤこしいったらありゃしない。
でもこの時使ったヘルフリのMarshallが「2台積み」ではないことはもうご理解いただけたであろう。
「2台積み」を書いたライターさんには災難だったが、イヤミっぽく詳しくやらせて頂いた。
やはり言葉は正しく使わないと。
おそらく昔のロックを聴く機会などなく、仕方のないことなのかも知れない。
でも文章を書くことを生業としている以上は歴史が育んだ言葉は正しく使って頂きたい。
「ツーマン」とかおかしな言葉が跋扈している時代だ。
こういうことを看過していると、まずますロックがおかしくなってしまう気がしてならないのだ。
後は爆音で暴れるだけ。
今の巷間の若いバンドさんたちにない「ロック」の宝物がココに詰まっている。
今日、このバンドを見るのが初めてなお客さんがほとんどだったハズ。
にもかかわらず、ものすごく盛り上がっているんですよ。
まるで昔からのファンが集まっているかのよう。
みんなこういうロックに餓えてるんだね~。
デジタル・アンプなんかではなくて、真空管がウナリを上げるMarshallでギターを鳴らすロック。
そういえば、始めた見た時の会場でもこうして盛り上がっていたっけ。
初登場なのにも大盛り上がり…曲は知らなくてもビビビと伝わるのだ。
そう!
このバンドが作る曲は、若い割にサビのメロディが「アレ」じゃないんですよ。
だから「ロック感」に満ち溢れている。
よく「メロディアスなんとか」っていう言葉を使うでしょう?
「メロディアス」というのは、旋律が歌謡曲っぽいという意味ではありませんからね。
優れた魅力的な旋律のことを「メロディアス」という。MCを挟んで「BURN YOUR LIFE」。
前回見た時にはオープナーを務めていたこの曲。
つまりインパクトが最大級ということだ。
そしてこのアクション!
今日の会場は広いので心おきなく暴れろ!
さらに「END THE BREATH OF THE NIGHT」と、大熱演が続く。
「サンキュー!
どうだい?最高かい?
オレたちのファンになっちゃったか?」
この自信がまたいいじゃないの。コレぐらいでなきゃ!
お客さん間違いなく全員年上だぜ。
「あと1曲になっちまった!力尽きるまでたのしんでくれよ!」
最後は「HELLRAISER」。
ね、どう見てもお客さんが初めてこのバンドに接している光景には見えないでしょ?
演奏した曲はすべて先ごろリリースされたミニ・アルバム『SPEED METAL ASSAULT』から。
HELL FREEZES OVERのエネルギーでガラガラと崩れ落ちる1960のジャケットが目印だ!
演奏が終了してプレスピットから出る時、「コレ、いいネェ!」なんて声が客席から聞こえて来た。
そのお客さんだけでなく、もう会場全体の雰囲気がHELL FREEZES OVERの登場を歓迎しているようだった。
うれしかったね。
近頃この他にも本来のロック・テイストを持った骨のある音楽を演る若いチームが出て来ていてね。
最近の若いバンドは他と同じことをやることに一生懸命になってるでしょ?
タオルを回したり、「ホイッ、ホイッ」ってお客さんに叫ばしたり、歌い方がミスチルとソックリだったり、歌詞が「ありがとう」と「ごめんね」と「がんばろう」だったり…。
そういう時代にソロソロお別れをする時が来たのではないか?と淡い期待を持ってはいるけど、現実はそうではないことも知っている。
若いお客さんがいないんだよ。
コレじゃダメなの。
次の世代への伝承ができず、いずれ絶滅してしまう。
エンタテインメントの主役はステージの上の人たちではなくて、客席にいる人たちだからね。
ナントカこの手の音楽に若い人たちを取り込む方策はないものか…。
アニメの主題歌にガンガン採用してもらうというのはどうだろう。無理か…。
とにかく、まずは続けなければなるまい。
がんばれHELL FREEZES OVER、地獄が凍りつくまで!
HELL FREEZES OVERの詳しい情報はコチラ⇒Official website
<【LOUD & METALLIC WEEK】最終回につづく>